テコナの鬼

立川マナ

プロローグ

 死んだ――と思った。

 でも、目を覚ませば、そこは見知らぬ洞窟の中で、見たことない格好をした少女がいた。

 漫画とか映画で見たようなくノ一みたいな黒装束。年はきっと俺と同じ。十六かそこら。もしくは、少し下か。白磁のような滑らかな肌に、三つ編みに結った黒々とした長い髪。淡いロウソクの灯火の中、大きな瞳が揺れる光を放って俺を見つめていた。


「よく来てくれた」


 彼女は俺の姿をその瞳に映しこむや、ホッとしたような、嬉しそうな、そんな穏やかな笑みを浮かべ、洞窟の中に朗々と響き渡る声で高らかに言った。


「今日から、私がお前のあるじだ」


 これが、彼女――テコナと、俺の出会いだった。

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