絵本

第1話

[30歳の女]

ある女がいました。

その女はとても真面目でした。

勉強も仕事も他の人よりも頑張っていました。

30年間一生懸命生きてきました。

しかしある日、女は気づきました。

この人生に意味はあるのかと。

小さい頃から女は楽しそうに遊びまわる他の友達のことを尻目に勉強してきました。

他の友達がルールを破って楽しんでいるのを尻目に、きちんと規律に従って行動していました。

周りが恋愛のことで泣いたり笑ったりしているのを尻目に一人で本を読んでいました。

女がそうしていたのは、それが正しいと思っていたからでした。

正しいことをしていれば、いつか幸せになれると思っていました。

でもそれは間違っていたと女は気づいてしまいました。

そこで、今までやれなかったことを今からでもやろう。少しでも自分が楽しいと思えることをしようと考えました。

しかしできませんでした。

女は遊び方を知りませんでした。

女はルールの破り方を知りませんでした。

女は恋愛の仕方を知りませんでした。

そして女は知っていました。

30歳になって、仕事もせずに遊びまわり、規律も守らず、恋愛に溺れることのリスクを。

女は今日も仕事にでました。

そしてまた生きるためだけの人生に戻っていくのでした。