switch or light 魔法ギルドのマスターが魔法を使えないなけど何か問題ある?
星崎慶
第1話 lie or true part1 魔法が使えぬマスターとその日常
レンガでできた細長い道を歩いていた。
暗い道を電灯と民家から漏れる光が明るく照らす...
そんな道を中睦まじく歩くカップルやがやがやとした若者集団が私の前を過ぎ去っていく中、今日も僕は一人この道を歩いていた。
寂ししくはないのかって?
よく、言われるよ...?
一人でこんな明るい道を歩いていたら周りを見て少し寂しい気持ちには誰だってなるさ。
でも、自分にとってこの道を歩き終えた先にある場所はこんな道より明るくて、温もりにあふれているから少しの辛抱に過ぎなかった。
僕は、とある事務所で物書きとして働いている。
一言で言うと、シナリオライターって職種なのかな?
そんな事をしている。
あと、とある街の魔法ギルドでマスターをしている...とは言っても魔法は苦手でほとんど使えない...まあ、これには色々事情があったのだけれども。
そんなところで、今は、そのシナリオライターの仕事を終え仲間達の事務所に帰るところだったのだが....
でも、今日はそんなに早くは帰れなさそうだった。
道行く人を掻き分けて、道の向こう側から、女性が一人歩いてきた。
物語と人の活気で色づく港街、シンシルバニア、日の昇っている時間は穏やかな町並みに市場、そして港からこの町にやってくる商人達で街は賑やかだ。
でも、日が暮れて、月明かりがこの町を照らし始めると、街の雰囲気は少し変わる..
いや、大分かな...?
街の北東部にある繁華街、このエリアには、飲み屋、そしてちょっと荒くれ者達も住んでいたりする..名をウィルスター街。
お昼の間は普通の商店街だ、市場や、郵便局、普通のエリアだろ?
でも、夜になると街の至る所にある蝋燭に火が付きこのエリアは昼とは大きく様相を変える。
歩いてきた女性がやってきた方角はウィルスター街の方角だった...
一体何故、あんな方向からやってきたのだろうか?
「どなたか、ミルスファミリーは何処にあるか、ご存じの方はいらっしゃいませんか?どなたたか....」
人混みで女性が押しつぶされそうになり、声がかき消える...
ミルスファミリー、この町で顔役とも言えるギルドだ。
この町はギルドを中心に動いている。
港に船を入港させるのも、市場で食品を売るのも、全部ギルドが中心で動かしている。
いわば、ンシルバニアの街を動かしているギルド、それがミルスファミリーだ。
僕はそんなミルスファミリーの一人で、そしてマスター、人に物語を書いて、読んでもらうシナリオライターもしている...それが、僕、フィッツマンだ。
はて、そんなところで、彼女はミルスファミリーになんの用なのだろうか?
僕は青いシンシルバニアの透き通った海の色と同じリボンの付いたキャペリン子と白色のワンピースを来た、小柄でどこかすぐに気を許してしまいそうな、青色の瞳をした女性、キャルシア・スコーザスに声をかけた。
「失礼、私もギルド、ミルスファミリーの一員のキャサルフィッツマンと申します。我らのギルドをお探しと?なにかございましたか?」
声をかけられたキャルシアスは急で少し驚いた様子だが、自身を助けてくれる人だと分かったからか、それでも急を要する事態には変わらず、彼女はやっぱり焦ったように口を滑らせた。
「あなたが、ミルスファミリーのフィッツマンさん..?よかった..あなたに用があったの..」
そう言った途端、彼女は気を失うようにバタリと道に倒れそうになったが、フィッツマンが支えなんとか事をなきを得た。
本当に参った...仕事は散々文句を言われるし、急に女の人が自分を訪ねてきて、見つけた途端に倒れる...ついてないな..
フィッツマンはキャルシアを抱えながら、ギルドに帰った。
愛しのギルドハウス、仲間達が待つギルド、僕の住んでいる愛しのマイホー ム..だったが、今日は一つ厄介ごとも一緒にご帰宅だ。
街の端にそびえ立つ巨大な木造建築の城のような建物、それがミルクスファミリーのギルドハウスだ。
200人を超えるギルド員がいて、待ちでは顔役、争いごとの仲裁もする。
そんな大ギルドのマスターが僕だ。
毎度厄介ごとを持ち込むのも僕なんだけど...
今回はどうやって仲間達に説明すれば良いか...正直今からギルドのドアを開けるの怖い..
ドアを開けてギルドハウス内に入ると目の前には腰に手を当て、相当ご立腹に見えるギルドの次席マスター、美しいダイアモンドのような青色の腰まである髪にすらっとした背の高い女性、目もグリーン、耳は隠れているが、少しとがったエルフの女性..ウィルムグルが腰に手を当て、今か今かとマスターの帰りを待っていた。
普段はその美しさからギルド内では女王だとか、女神様なんて呼ばれている彼女だけれど、今日は相当ご立腹のせいか、普段の女神様らしさは皆無だ..
「マスタ-、今日も帰りが遅いようで?たしか、今日は街の外れにある山の主人、ゴルウェル様の家で一筆書いてくる、たしかそれだけのはずでしたが、何故このような時間に?あと、その抱えなさっている、女性は..どうなさいましたか?お人好しもほどほどにしてください?」
この言い逃れできないような感じ、本当に今日はついていない。
「これは...だね、正直ぼくにも分からない。」
ウィルムグルは少しあきれながら続けた。
「まあ、でも、気を失っているようですし、困っている人を放っておくわけにもいきませんしね、客間で休ませておきましょうか。」
「無事分かってくれたみたいで安心したよ。」
フィッツマンはそっと胸をなで下ろしたが...
「でも、まだ、ギルドを放っておいてこんな遅い時間まで何していたか、後で聞かせてもらいますね!!」
許してもらえたわけではなかった..ウィルムグルには今まで帰ってくるまでそこら辺散歩していたなんて言えない...
キャルシアを客間に運んで3時間、彼女が目を覚ますまでかかった時間だ。
日付も超える時間、彼女ははっと目を覚ますと、看病していたウィルムグルにこう言い放った...
「キャスタニエさまを、どうぁキャスタニエ様を助けてください...」
「キャスタニエ様..?キャスタニエは隣町のギルド、エルブンガルドのギルドマスターの?私はミルスファミリーのギルド次席マスターのウィルムグル...あなた、エルブンガルドのギルドのメンバーなの?何があったの落ち着いて...」
目を覚ました直後に大声を出したせいか、咳き込んでいたキャルシアはウィルムグルドに背中をさすられて、少し落ち着いて話始めた。
「はい、私は隣街、ヘイムズガルドのギルド次席補佐官をしてます、キャルシアスコールズ、皆からキャルと呼ばれております。」
「そう、キャルね、よろしくキャル。それで、何があったの?」
「昨晩のことです、私はいつもの様にエルブンガルドのギルドハウスにいました。」
そう、私はこの日もいつもの様にギルドで仲間達と楽しく一日を終えることができる、そう信じていたのです。
エルブンガルド、シンシルバニアの街の隣にある街、リガモスクにあるギルドだ。
リガモスクの街の中央には軍施設があって、戦争一歩手前にまで瀕している隣国に接している街のためか常に防衛戦を張って、街の雰囲気は切迫していた、だが、それもエルブンガルドのギルドが発足するまでの話。
私たちのギルド、エルブンガルドはまだ発足して間もない、ギルドだったけれど、常に真冬のような寒さで穀物も育たないリガモスクにとっては希望の光になれていた。
というのも、私たちのマスター、キャスタニエ・グレイムヒルはこの国に名をとどろかせた大魔法使い、7スターズの一人で、その中でもランク一位の魔術師だった。
そんな大魔法使いは、リガモスクを大きく発展させた。
日の差し込まないリガモスクの街全体にまず、日を差し込ませる魔法をかけた。
おかげで凍り付いていた大地は熱を持ち、雪は解け、再び鮮やかな花々が咲き誇る、花の都に変貌を遂げさせた。
軍の基地があって、住民の緊張感はあまり変わらないけれど、それでも、街の外観は昔より、美しく、茜色に輝く、夕焼けだって見えるギルド塔も建って、リガモスクはエルブンガルドの、というより、キャスタニエのおかげで国内でも屈指の発展を遂げた街になったのだった。
そんな街で私たちのギルドは活動してきた。
でも、昨日の夜、いつもの様に、ギルド塔で夕焼けをみた後の事だった。
街が急に燃えだしたのだ...
何の前触れもなく、リガモスクの街は炎に包まれ、多くの建物が塵になった。
軍も、ギルドの仲間達も炎に包まれ、花の都リガモスクは、暗闇の夜空、命の火花を散らすように燃え尽きた。
一晩燃え続き、炎も静まり朝になり、生存者を探したが、私以外見つけることは出来なかった。
すると、かつてギルドハウスのあった場所に、ギルドの目印になっていたギルド塔ももう焼け落ちて、かつての姿は塵の果てに消え果てていたけれど、キャスタニエ様が、背の高い黒いスーツを着た男と二人で立っていた...
「キャスタニエ・グレイムヒル、リガモスク放火の罪、殺人罪、そしてスパイ容疑で逮捕状が出ている。ご同行願えますかな?」
キャスタニエ様が連れて行かれる...そもそも、この街のために全てを捧げてきたあの方がこの街を燃やした?
そんなこと信じられなかったし、ありえない、そう思った...そう信じたかった。
すると私に気がついたのか、キャスタニエ様は念話でこう言いました。
「キャル、隣町のミルスファミリーへ行きなさい、そこにフィッツマンという男がいる。彼なら、この町に何が起こったのか解明できるかもしれん。」
そう言い残して、キャスタニエ様はどこかへ連れて行かれた。
瓦礫に埋め尽くされたリガモスクの街は気がつくと多くの黒服が辺りをうろついてた。きっとキャスタニエ様を連れて行った人達と同じだろうと思い、夜になるまで瓦礫の下に隠れたりしてなんとかやり過ごしました。
「なるほど、そうやってようやくこの町に辿りついた訳ね。」
リガモスクの街はペンシルバニアの隣にあるとはいっても、大きな山脈を挟んでいるし、隣国のスパイが潜んでいるとも言われる森も通らなければならない、きっと一人で心細い中、この少女はこの待ちまで必死になってきたのだろう。
「それで、マスター、女性の話をドア越しから盗み聞きですか?本当にタチが悪いですよ?」
「おっと、怖い怖い、さっきとは違って今度ほ本当に串刺しにされてしまいそうだね..」
「さっきも本気ですよ?それで、この件、マスターはどうお考えで?」
フィッツマンは口元に人差し指を当てて、こちらをむいて、少し静かにするように彼女達に促し、ギルドハウスの客間を見上げ少しうなだれてから、もう一人部屋に人を入れた。
「ジェラルド、魔法使ってくれる?」
「イエス、マスター。」
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