第698話 最高の夏
カミラの輿入れの日が迫ってきて、いよいよ僕も年貢の納め時です。
いや、もう四人のお嫁さんと同居している時点で、とっくに年貢は納めてしまっている訳なんですが、ちょっと言ってみたかっただけです。
カミラがヴォルザードに来るタイミングで、結婚披露パーティーをするつもりでいたのですが、地球に小惑星が接近したり、先日の嵐でラストックの街が無くなってしまったりして、予定が延び延びになっていました。
ようやく満を持してという感じの開催ですが、招待客は当事者の両親に限定するつもりです。
と言っても、僕の母さん、マノンの父さんは他界していますし、カミラも父親は他界し、母親とはアーブル・カルヴァインの件で疎遠になったままです。
唯香の両親には来てもらう予定ですし、ベアトリーチェの両親クラウスさんとマリアンヌさんにも勿論出席してもらいます。
そして、セラフィマの両親コンスタンさんとリサヴェータさんにも出席してもらう予定です。
唯香の両親、セラフィマの両親は、僕が送還術で屋敷まで送迎するつもりです。
でないと、世界を超えたり、二つの国を横切ったりして参加するのは大変ですからね。
しかも、セラフィマの両親は一国の皇帝と皇妃様ですから、本来は簡単に国を空ける訳にはいきません。
参加してもらえるのは、何か起こった時にはコボルト隊によって連絡が届き、僕が瞬時に送り届けられるからです。
そして、カミラの身内としてディートヘルムにも参加してもらう予定でいます。
実現すれば、非公式ではありますが、バルシャニアの皇帝とリーゼンブルグの王太子の初めての会談となります。
しかも、そこにヴォルザードの領主夫妻も加わるのですから、国際会議といっても過言ではないでしょう。
となれば、僕も気合いを入れて準備を進めないと……と思ったのですが、パーティーの準備はセラフィマが中心となってお嫁さん達が進めています。
僕がやる事といえば、父さんに予定を連絡することぐらいなんですが……それすら唯香に代わられてしまいました。
唯香いわく、僕ではちゃんと予定が伝わっているか不安だそうです。
まぁ、確かに父さんと連絡を取り合うのは嫌……という訳ではないけど、なんとなく苦手で、ついつい短文のメールで済ませてしまっています。
結局、唯香が父さんと連絡を取り合って、僕は指定の時間に指定の場所まで迎えに行く形です。
五人の花嫁をもらう花婿のはずなんですが、なんとなく子供のお使いという感じですね。
パーティーには、アマンダさんとメイサちゃんにも出席してもらう予定です。
何と言っても二人は、ヴォルザードに来てから家族同然に接してもらいましたからね。
他の誰かを呼ばなくても、二人を呼ばない訳にはいきません。
当日の料理は、世界中から食材を調達する予定でいます。
海産物はジョベートまでルジェクに仕入れに行ってもらいます。
当然、美緒ちゃんが一緒に行くことになるのでしょうが……まぁ大丈夫でしょう。
肉は奮発して、A5ランクの和牛を手配する予定です。
とろける味わいに驚いてもらいましょう。
お酒も、日本から取り寄せる予定です……というか、唯香の父、唯生さんが張り切っているようです。
ヴォルザードに来る度にクラウスさんとデレンデレンになるまで飲んでますからね。
今度は日本の美味い酒も紹介するんだ……と言ってるそうです。
コンスタンさんも酒は強そうですから、あの三人で相当飲むんじゃないですかね。
まぁ、皆さん恐妻家という感じですから、程々にしておかないと後が怖いですよ。
結婚披露パーティーというと定番の出し物とかがありますが、今回は特別に行わないそうです。
花嫁からの感謝状とかやれば、クラウスさんのボロ泣きとか見られそうな気もしますけど、お前なんかには嫁にやらん……とか言われると面倒だから止めておきましょう。
ちなみに、両親への手紙は各自が書いて手渡すそうです。
ということで、当日の送迎役と服装の確認をしたら、僕の打ち合わせは終わってしまいましたとさ。
「健人、メイサちゃんと遊んであげたら?」
「えっ、僕は必要ないの?」
「うーん……というか、健人に聞いても任せるよ……しか言わないじゃん」
「まぁ、確かに僕は拘らないし、みんなが納得する形にしてもらいたいからね」
「だから、当日にちゃんと振舞ってくれればいいよ」
「でも、一応決まったことは教えておいてね。当日オロオロして邪魔になると不味いからさ」
「分かった、ちゃんと知らせるよ」
という訳で、メイサちゃんをお持て成ししようと思ったら、すでにプールにいるそうなので、海パンに着替えてプールサイドまで影移動しました。
「ぶはっ……なにごと?」
闇の盾を出してプールサイドに踏み出した途端、思いっきり水飛沫を浴びせられました。
顔を拭って視線を上げると、ビーチボールを巡ってコボルト隊とゼータ達が大はしゃぎしています。
ゼータ達がジャンプして鼻先でビーチボールをトスして、そのまま巨体が水に落下するから水飛沫が上がるのも当然だよね。
ちなみに、メイサちゃんや美緒ちゃんが下敷きになったりしないように配慮はしているようです。
メイサちゃんと美緒ちゃんも、ボールに飛び付いたりしながらキャーキャー声を上げて盛り上がっています。
「あっ、ケントーッ!」
僕の姿を見つけると、メイサちゃんはいつものように駆け寄ってきて、ギューっと抱き付いてきました。
さっきリビングに来た時には、なんだか余所余所しい感じでしたが、ようやく調子が上がって来たみたいですね。
「ケントも一緒に遊ぼう!」
「はいはい、分かりました……」
ていうか、抱き付いてきたメイサちゃんの感触が、フニュンってしてるんですけど、フニュンって……。
よく見ると、水着の胸元が美緒ちゃんに比べると明らかに膨らんでいます。
僕がアマンダさんのところに下宿していた頃は、ツルペタの幼児体型だったのに、いつの間に育ったんでしょう。
あの、ドーン、ドーン、ドーンな体型のアマンダさんの娘だから、成長したっておかしくはないんですけど、なんだか調子狂っちゃいますね。
いやいや、何を考えてるんだ、メイサちゃんだよ、メイサちゃん。
別にドキドキなんてしないんだからね。
「あれっ、ルジェクは……ラインハルトと特訓中か。フィーデリアは?」
「厨房のお手伝いだって」
「そっか、せっかくメイサちゃんが遊びに来てるんだから、今日ぐらい休めばいいのに」
「フィーデリアとは学校が始まれば顔を会わせるし、それよりもケントが……」
「なるほど、それでは思いっきり遊びますかねぇ。そぉれ!」
両手で水を掬って、思いっきりメイサちゃんに浴びせました。
「やー……やったわね、ケントのクセにぃ!」
「そーれ、そーれ、そーれ……」
「わっ、ちょっ、待って……きぃぃぃぃ、ケントのくせに生意気ぃ!」
問答無用で水を浴びせ続けると、やっぱりいつものメイサちゃんでした。
昼ご飯は、特訓を終えたルジェクと厨房の手伝いを終えてフィーデリアも加わって、プールサイドでサンドイッチを食べました。
食後は、プールサイドに置いたサマーベッドで暫しのお昼寝。
直射日光に晒されないように、闇の盾で日除けを作っておきました。
なんの防御もせずに寝込んだら、片面だけ真っ赤に日焼けしちゃいますからね。
まぁ、あんまり酷い日焼けは治癒魔術で回復させるから、大丈夫っていうなら大丈夫なんですけどね。
というか、ルジェクは美緒ちゃんに膝枕されるけど、死んだように眠ってます。
よっぽどラインハルトにしごかれたんでしょうかね。
『ぶははは、ケント様がヴォルザードにいらした頃に比べれば、まだ半分もやらせておりませんぞ』
僕の心情を察したのか、ラインハルトが念話で話し掛けてきましたけど、やっぱり楽しそうですねぇ。
『まぁ、ルジェクは虚弱体質だったから、僕と比べるのは無理でしょう』
『そうですな。ですが、やる気は十分ですから、これから強くなる余地はありますぞ』
『うん、本人がやる気ならば、存分にしごいてやって』
『了解ですぞ、一流の使い手となるように鍛えてみせましょう』
おぉルジェク、死んでしまわないか心配だけど、ギリギリ生きていれば僕が復活させてあげるから頑張るんだよ。
昼寝の後は、ルジェクとフィーデリア、それに唯香、マノン、ベアトリーチェ、セラフィマも加わって、プールで過ごしました。
そういえば、ちょっと前までルジェクは美緒ちゃんに振り回されている感じでしたが、プールではしゃいでいる様子を見ると体力がついてきてるのが分かります。
ヒョロっとしていた手足にも筋肉がついてきていますね。
それにしても、メイサちゃんたちと一緒にはしゃいでいる唯香とベアトリーチェは、たゆんたゆんですねぇ。
うん、うん、こぼれ出ないかちょっと心配ですけど、良き眺めです。
うっ、マノンとセラフィマの水着姿も素敵ですからね。
そんな冷ややかな視線を向けないでぇ……いや、暑さが和らぐから良いのかな。
自宅のプールで、可愛いお嫁さんたちに囲まれて過ごす。
うん、今年の夏は最高です。
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