第299話 和解と協力

 ランズヘルトの東端の港町ジョベートに戻り、領主の別館を訪ねました。

 領主アルナート・エーデリッヒの息子バジャルディさんは、クラーケンの検分から戻っていました。

 ジョベートの街を一望出来るリビングで、バディさんにクラーケン討伐の様子を語って聞かせる予定です。


「ようこそ、ケントさん。何度も足を運んでもらって恐縮です」

「いえ、こちらの都合ですから、気になさらないで下さい」

「それに、うちの姪っ子も助けていただいたようで、申し訳ありません」

「いえいえ、結果的には囮に使ったみたいな形になってしまいましたし、そちらも気にしないで下さい」

「そうですか、ですが示しが付きませんので……」


 バディさんが部屋の隅に控えていた執事さんに頷くと、隣室へのドアが開かれて二人の人物が入ってきました。

 一人はバディさんの姪っ子ディアナ、もう一人はその右腕セイドルフです。


 ディアナは眉を吊り上げて、セイドルフは観察するような瞳で僕を見詰めています。

 さすがはBランクとあって、ギリクよりも凄みを感じます。

 まぁ、ドノバンさんとかに較べると雑魚ですけどね。


「ディアナ、ケントさんにお礼を申し上げなさい」


 ディアナは、バディさんの言葉を聞いても黙ったままです。


「ディアナ!」

「あぁ、バディさん、結構です。気持ちのこもっていない御礼とか要りませんから」


 声を荒げたバディさんを止めると、セイドルフが軽く右手を挙げて発言を求めて来ました。


「よろしいでしょうか?」


 セイドルフは、バディさんが頷いたのを確かめてから、僕に向かって頭を下げました。


「俺達の命を救ってくれて感謝します。あのままだったら、間違いなく全滅していたでしょう」

「セイドルフ! こんな手柄を掠め取っていった奴に頭を下げるの?」

「ディアナさん、俺だってメチャクチャ悔しいですよ。でも、自分の力量を正しく評価できなければ、冒険者としては成長出来ないし、いずれ命を落とすことになる」

「だって、こいつは私達が苦労してお膳立てしたのに、何の断わりもなく横から攫っていったのよ!」

「ディアナさん、俺達にはクラーケンを倒す手段は残っていなかった。ナイフも、剣も、戦斧も、弩弓すら刺さらない。俺達は、誰一人として傷一つも付けられなかった。彼が助けてくれなければ、全員が食われていたでしょう」


 セイドルフは、言葉通りに悔しげな表情を浮かべていますが、それでも冷静に物事を判断できているようです。

 セイドルフの言葉を聞いて、バディさんが尋ねてきました。


「ケントさん、弩弓すら刺さらなかったというのは本当ですか?」

「はい、おそらくですが、クラーケンは属性魔術を身に纏っているのだと思います」


 これまでに討伐した、グリフォンやギガースを例に出して説明しました。


「なるほど、大型の魔物になると、そのように魔術による防御をするのですね。でも、それでは討伐のしようがありませんね」

「いえ、相手の防御を上回るような威力の攻撃ならば通りますし、隷属の腕輪を基にしたボーラとか鎖を巻き付ければ、攻撃が通るようにはなります。ただ、クラーケンの場合、本体が海の中に隠れている状態なので、巻き付けるのは困難ですね」


 グリフォンやギガースでの戦いで使った隷属のボーラや、反則技とも言える槍ゴーレムの話も少し聞かせました。


「グリフォンやギガースですか……エーデリッヒに現れても不思議じゃないんですよね?」

「確率的には低いでしょうけど、可能性はゼロではないですね」

「それよりも、うちとしては残りのクラーケンです。最低でもあと二頭は居るらしいですから……そいつらを何とかして、交易を再開させないといけません」


 エーデリッヒとフェアリンゲンにとって、交易が止まっている状況は死活問題です。

 だからこそ、これほどまでに高額の報酬を設定しているのでしょう。


「ケントさん、残りのクラーケンは、どのようにして討伐するおつもりですか?」

「そうですね。丸太を組んで筏を作って、囮に使おうかと思っています」

「上手くいきますか?」

「さぁ、それはやってみない事には何とも……」

「俺達が囮を務めましょうか?」


 自ら囮役を買って出たのは、セイドルフです。


「でも、危険ですよ。僕は影の空間から討伐を行うので、危険は全くと言って良いほどありませんが、実際にクラーケンと対峙してみて危険さは分かってますよね」

「確かに危険だが、今のままでは交易も勿論だが、外洋での漁も出来ない状態だ。湾の中と海岸近くの漁は行っているが、それだけでは漁師は生活していけない」


 正直に言って、セイドルフの申し出は大変にありがたいものです。

 今朝の鳥山を見つけた時のように、クラーケンが潜んでいそうな海域を見つける腕前は僕にはありません。


「どうでしょう、ケントさん。使ってやっていただけませんか?」

「でしたらば、セイドルフさん達にも指名依頼を出していただけませんか?」

「分かりました。指名依頼を受諾できるのはBランク以上に限られます。セイドルフ、お前が代表して受けて、他の者を雇い入れる形になるが構わないか?」

「結構です。街のために貢献できるなら、どんな形であろうと構いません」


 禁止されているのに船を出してクラーケンに挑むなんて、身の程知らずの馬鹿野郎かと思いましたが、実際のセイドルフ達は、街を思いすぎて勇み足を踏んでいたようです。

 どんな形であろうと街のために貢献したい……セイドルフの言葉を聞いて。ディアナはハッとした表情を浮かべました。


「叔父上、申し訳ありませんでした。ケント・コクブ、これまでの数々の無礼について謝罪いたします。それと、命を救っていただいた事に感謝いたします」

「ディアナ……ケントさん、お許しいただけますか?」

「勿論です。我々が立ち向かう相手はクラーケンであって、いがみ合う必要なんてありませんから」

「そう言っていただけると助かります。では、討伐の方法について、もう少し話をつめましょう」


 エーデリッヒとしては、一日でも早く交易を再開したいので、明日から早速討伐作戦を行う事になりました。

 今日と同じようにセイドルフ達が船を出してクラーケンを探し、見つけたら僕が倒すという手順になります。


「それにしても、どこから見守っていたんだ? 海の上だぞ」

「僕らは、影の中に潜んでいられます。失礼ながら皆さんの動きは、眷族に見張ってもらっていました。毒矢やロープの先に樽を結び付けた銛を使う作戦も、全部把握していました」

「まいったな。Sランクとはこれほどなのか……」


 眷族が監視していた事を明かすと、セイドルフは呆れたように言いましたが、他のSランク冒険者には会った事が無いから、どれほどか分からないんですよね。

 そう言えば、一つ気になっていた事があるので確認しておきましょう。


「バディさん、クラーケンの死骸はどう処分するつもりですか?」

「沖に運んで捨ててしまうつもりだが、マズいかね?」

「大型の魔物の死骸にはマナが多く含まれているようで、不用意に捨てると他の魔物を引き寄せる可能性があります」


 ヒュドラを討伐した場所に、大量の魔物が集まって、しかも活性化していた話をすると、バディさんは処理方法を考え始めたようです。


「沖に捨てるとしても、一度に大量では無い方が良さそうだし、陸の近くは避けないと駄目だな」

「そうですね。ギガースを討伐した場所でもマーマンが頻繁に現れたりしたそうなので、少し対策を考えられた方が良いでしょうね」


 クラーケンの死骸の処理は、焼却を含めて再度検討するそうです。

 それと、明日からの討伐作戦では、体の一部だけジョベートの魚市場に送還することにしました。

 言ってみれば、ゴミの処理を考えると共に、ごみが発生しないように対策を施す訳です。



 リビングの窓が茜に染まり始めたので、そろそろヴォルザードに帰るとバディさんに告げると、バケツ一杯の貝類色々と大振りのエビをお土産にくれました。

 おぉ、今夜は海鮮メニューが堪能できそうですね。


 ヴォルザードに戻ってみると、まだ空は明るく夕暮れ時には間があります。

 やっぱり国の東の端から西の端ですから、日の入りの時間には差がありますね。


「ただいま戻りました。アマンダさん、お土産です」

「おかえり、おぉ、こりゃ凄いエビだね。貝も色々あるね」

「見せて、見せて、うわっ、おっきい……」


 アマンダさんも、メイサちゃんも、エビのサイズに驚いています。

 ヴォルザードでもザリガニを料理に使ったりしますけど、ロブスターのようなサイズは居ませんからね。


「ケント、これはどうやって食べるんだい?」

「とりあえず、今日はボイルして素材の味を確かめてみましょう」

「そうだね。こっちの肉厚の貝はソテーにしてみるかい」

「はい、夕食が楽しみです」


 まだ夕食までには時間がありそうなので、クラウスさんにクラーケンの一件を報告しておきましょう。

 ギルドの執務室を覗くと、クラウスさんは領主の会合で留守にしていた間に溜まった書類と格闘していました。

 一旦廊下に出て、ドアをノックすると、案の定不機嫌そうな声が返ってきました。


「誰だ!」

「ケントです」

「おぅ、開いてるぞ、入って来い」


 クラウスさんが、一転して上機嫌な声になったのは、僕が相手ならば仕事の手を止めても、ベアトリーチェに怒られないで済むからでしょう。


「失礼します」

「おぅ、何かあったのか、ケント」

「はい、例のクラーケンの件で……」

「そうか、そっちで話を聞く。リーチェ、お茶を淹れてくれ」

「はいはい、ケント様、お疲れ様です」


 クラウスさんは、首を回しながらソファーにどっかりと腰を下ろしました。

 ボキボキ、バキバキ、かなり凝ってるみたいですね。


「それで、ケント。クラーケンがどうしたって?」

「はい、その前に、だいぶお疲れみたいですから、ちょっと治癒魔術を掛けましょう」


 クラウスさんの後ろに回り、肩を揉み解しながら治癒魔術を掛けます。


「おぉ、気が利くじゃねぇか……うぉぁ、効くなぁ、一発で肩の凝りが解れたぜ」

「会合に行ってる間に、だいぶ書類が溜まっていたみたいですね」

「あぁ、これでも片付けた方なんだぜ」


 そう言ったクラウスさんの机の上には、まだ分厚い書類の束が残っています。

 頑張って片付けないと、明日も追加の書類が来るんでしょうね。


「あー……楽になった、さぁ、ケント、クラーケンの件を話してくれ」

「はい、えっと……領主のアルナートさんから見ると孫にあたる、ディアナという女性が中心になって、ジョベートの冒険者を纏めていまして……」


 ディアナやセイドルフ達をフレッドが偵察するようになった経緯から、知らせを受けてジョベートに向かい、クラーケンを討伐するまでを話しました。


「なるほど、体の良い囮に使ったって訳だな?」

「はい、結果的にはそんな感じです」

「その手の連中は、痛い目を見ないと分からないだろうし、死人を出さずに対応したんだ、それで良いぞ」


 何人かは負傷していますし、船にも損傷が出ていますが、クラーケンに襲われた事を考えれば、その程度で済んで良かったと思うレベルです。


「それで、残りのクラーケンは、どうやって討伐するんだ?」

「はい、そのセイドルフという冒険者が、囮役を務めてくれる事になっています」

「ほぅ、そいつは自分から申し出たのか?」

「はい、クラーケンが居座っているせいで、交易だけでなく湾の外での漁も出来ない状態で、漁師の暮らしも苦しくなっているらしいです」

「なるほどな。下らないプライドよりも、実益を優先したって事か。そいつは、なかなか見所がありそうだな」

「そのディアナという女性が、かなりのじゃじゃ馬ですので、上手く乗りこなしているように見えましたよ」

「領主の家系に生まれると、周囲の人間からは一般の者とは違う扱いをされるからな。時折、跳ねっ返りが育つ事がある。ましてや、アルナートの爺の孫だ、じゃじゃ馬でも不思議じゃねぇな」


 そう言うクラウスさんの娘、ベアトリーチェは結構やんちゃでしたけど。


「ケント様、何か私にご不満でも……?」

「いやいやいや、リーチェがお淑やかで良かったって思っただけだよ」

「まぁ、ケント様、お淑やかなんて照れてしまいますわ」


 僕の隣に座ったベアトリーチェが、そっと頭を預けてきます。

 テーブルの向こうで、クラウスさんがニヤニヤと意味深な笑みを浮かべています。

 言われなくても分かっています、僕も尻に敷かれますよ。


「それにしても、送還術でアッサリと片付けちまうとは思っていなかったな」

「僕も、こんなに上手くいくとは思っていませんでした」

「その調子ならば、クラーケンは簡単に片付くな?」

「何か、他に仕事があるんですか?」

「いや、現状では無いんだが、イロスーン大森林の工事が本格化する。工事の規模が大きいし、魔物が増えた原因も特定出来ていない。金、人、資材を突っ込んで始める大きな工事だ、不測の事態が起こって工程が止まるような事態は避けたい」

「つまり、いつでも動けるように身体を空けておけってことですね?」

「そうだ、察しが早くて助かるぜ。出来るか?」


 イロスーン大森林の対策は、マールブルグとバッケンハイムだけの問題には留まりません。

 だとすれば、僕の答えは決まっています。


「ランズヘルトの未来のためにも、やるしか無いですよね」

「頼むぜ、婿殿」

「はい、お義父さんも、もう一頑張りお願いしますね」

「はっ? いや、今日はもう切り上げて一杯……」

「明日も書類は増えますし、肩凝りもバッチリ治療しましたから」

「ケント、お前、やけにサービスが良いと思ったら……」

「いやぁ、領主の仕事は大変ですね。本当に尊敬します」

「こいつ、覚えとけよ……」


 歯軋りしそうな表情を浮かべつつも、クラウスさんは執務机に戻りました。


「そうだ、リーチェを夕食に連れ出したいんですけど、良いですか?」

「あぁ、構わねぇぞ。俺は一人寂しく仕事するから、お前らはイチャイチャして来い」

「じゃあ、行こうか、リーチェ」

「はい、ケント様」


 クラウスさんの許可も得たので、ベアトリーチェと一緒に執務室を出ます。

 まぁ、ベアトリーチェが居たらクラウスさんも仕事を切り上げられないでしょうし、僕らが執務室を出て暫くすれば、酒場で一杯やり始めるんじゃないですかね。


「ケント様、急に夕食なんて、何かあったのですか?」

「うん、ジョベートで大きなエビとか貝をお土産にもらったんで、今日の夕食に調理してもらう事になってるんだ」

「まぁ、私達も御相伴に預かれるのですね」

「うん、唯香とマノンを誘いに行こう」

「はい」


 ベアトリーチェと一緒にギルドの一階に下りると、夕方に賑わいが戻りつつあるように感じました。


「ケント様のおかげで、マールブルグとの鉱石の取引が再開されたので、護衛の仕事が元に戻りつつあるようです」

「マールブルグの景気が息を吹き返せば、ヴォルザードの景気も上向くものね」


 マールブルグからヴォルザードへの鉱石の輸出も解禁になりましたし、イロスーン大森林から東側への輸出は、ヴォルザード経由で行う事になりました。

 つまり、影の空間を使った輸送の量が、これまでよりも飛躍的に増える訳で、眷族のみんなに頑張ってもらう事になります。


「うーん……ちょっと、みんなへの負担が大きくなり過ぎてる気もするし、眷族を増やした方が良いのかなぁ……」

「ケント様の負担は、大丈夫ですか?」

「うん、僕は大丈夫だけど、あとどの位増やせるかは、ちょっと分からないかな」


 コボルト隊を増強したら良いのか、いっそオーガのような強力な魔物を眷族に加えた方が良いのか、あとでラインハルト達とも相談してみましょう。

 守備隊の診療所へ行くと、唯香とマノンも一日の仕事を終えたところでした。


「唯香、マノン、夕食を一緒に食べよう」

「本当? 嬉しい!」

「ケント忙しいから、なかなか一緒に居られないもんね」

「ゴメンね、いつもバタバタしてて。今日はジョベートからお土産に貰ってきたエビと貝を、アマンダさんの店で料理してもらうんだ」

「エビって、伊勢海老みたいな感じ?」

「ハサミがあるから、ロブスターの方が近いね」


 三人と一緒に下宿に戻り、アマンダさんに料理の追加をお願いしました。


「ただいま戻りました。アマンダさん、唯香とマノンとリーチェの分も夕食をお願いしても良いですか?」

「お帰り、お安い御用だよ。時間になるまで二階で待っておいで」

「分かりました」

「健人、私ちょっとお店を手伝うよ」

「僕も手伝う」

「私もお手伝いしますわ」


 あれっ? 僕としてはクラウスさんが言うように、みんなとイチャイチャして過ごそうと思ってたんですが……。

 三人は、さっさと手を洗うと、お店の手伝いを始めちゃいました。


「ケントは、邪魔だから二階に行ってて!」

「はい、分かりました……」


 僕だけメイサちゃんに店から追い出され、二階の自分の部屋でポツーン……なんて事にはなりませんよ。

 すかさずマルト達が影から出て来て、スリスリ、モフモフしはじめました。

 マルト達をモフっていると、影の空間から不満気な空気を感じます。


「サヘル、おいで」

「はい、主様」


 サヘルは影の空間から出て来たものの、マルト達のように僕に甘え慣れていないので、どうして良いのか分からないようです。

 すると、僕の隣にいたマルトが場所を空け、ここに座れとベッドをポフポフと叩きました。

 恐る恐る隣に座ったサヘルに、腿を叩いて膝枕するように伝えました。


 膝枕したサヘルをそっと撫でてやると、ツルツル、スベスベで、モフモフとは趣が違うものの良い感じです。

 サヘルも気持ち良いのか、クークーと小さく喉を鳴らしています。

 マルト達も、サヘルにスリスリして、スキンシップしています。

 暫くすると、パタパタと階段を駆け上ってくる音が聞えて、部屋のドアが開けられました。


「ケント、夕ご飯……何それ?」

「サヘルは、新しい眷族で、サンド・リザードマンだよ」

「主様、こちらは……?」

「メイサちゃんは、僕がお世話になっているアマンダさんの娘さん、家族同然の存在だからね」

「そうですか、サヘルです。よろしくお願いします」

「メ、メイサです……サンド・リザードマンなんて初めて見た」


 それだ! 初めて見るならば、サンド・リザードマンはこんな体型の生き物なのだと押し通してしまいましょう。


「丁度良いから、他のみんなにも紹介しよう」

「はい、主様。よろしくお願いします」


 ベッドの上で丸くなったマルト達を残して、メイサちゃん、サヘルと一緒に階段を下りました。

 みんな急に現れたサヘルに、驚いていますね。


「えっと、突然ですが、新しい眷族を紹介します。サンド・リザードマンのサヘルです。サヘル、こちらが下宿の主アマンダさん、唯香、マノン、ベアトリーチェは、僕のお嫁さんになる人だよ」

「初めまして、サヘルです。サンド・リザードマンですが、この体型は主様の……」

「あぁー、さぁ冷めないうちに夕食にしようか」


 はい、夕食の前に正座ですね……でも本当に悪気はなかったんです。

 信じて下さい、マノンちゃん。

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