第154話 アーブルの戦略

 委員長、マノン、ベアトリーチェと満ち足りた時間を過ごし、下宿に戻ってメイサちゃんを寝かし付けたら、僕の休日も終わりです。

 それでは、出掛けるとしますかね……向かった先は、王都アルダロスにあるアーブル・カルヴァインの屋敷です。


 リーゼンブルグの貴族は、領地の屋敷の他に王都にも屋敷を構えています。

 貴族の領主が滞在する為でもありますし、領主が不在の時には、家督を相続する者や家宰が滞在して、王家との折衝を行っています。


 国に納める税額や、街道や橋などの整備に掛かる費用や人員の負担、有事に際しての兵の割り当てなど、日常的な問題から有事の問題まで、王家との関係を保ち、王都での情報収集の拠点として活用されているそうです。


 王都での屋敷の規模は貴族の力関係を示すものであり、長年リーゼンブルグの金属資源の殆どを担ってきたカルヴァイン家の屋敷は敷地も広く、建物も豪華な造りとなっています。


 バステンによれば、そのカルヴァイン家の屋敷には、昨日、今日と多くの来客があったそうです。


「やはり、第二王子と第三王子が揃って死去したという重大な知らせが届いた事で、王都に残っていた者達は、かなり動揺しているようで、元第二王子派の貴族が七家、一代貴族からも十家以上から使者が訪れました」


 アーブル・カルヴァインは、グライスナー侯爵と並んで、第二王子派の中心的な役割を果たして来ました。

 それだけに、グライスナー侯爵が王都に居ない状況下で、最も発言力を持つアーブルが、どういった行動に出るのかを見極めようとしているらしいです。


 基本的に、一代貴族に対しては家宰が対応を行っていたようですが、貴族の領主や子息に対しては、アーブル本人が面会していたそうです。


「それで、アーブルはどう動くつもりなのかな?」

『面会を求めてきた貴族に対しては、沈痛な面持ちを作りながら、今は協力して事態の収拾に当たるべきだといった無難な答えをしておりました』

「でも、それって本心ではないんだよね?」

『はい、昨日、王家に到着した早馬の知らせが、どんな内容か聞いた時には大荒れでした』


 バステンが隠し撮りしておいてくれた映像を見ると、情報を伝えに来た密偵が震え上がるほどに激昂し、部屋に置かれていた高そうな壺を叩き割って、第二王子や取巻きに派遣したライザスを口汚く罵っていました。


「バステン、このアーブルと一緒に映っている男は?」

『その男は、ネストルというアーブルの懐刀で、どうもバルシャニアの出身のようです』


 ネストルは、明るい緑色の長い髪を首筋あたりで束ねていて、髭は綺麗に剃っています。

 アーブルが感情を剥き出しにして喚き散らしているのに、眉一つ動かさず、醒めた表情をしている様子から冷徹な印象を受けます。


 アーブルの怒りが収まるまでは一言も口を挟まず、冷静さを取り戻したと見れば、メイドを呼んで部屋の片付けを指示しました。

 そして、ソファーにぐったりと座り込んだアーブルと差し向いに腰を下ろしても、まるで瞑想をしているかのように目を閉じています。


「バルシャニアは動くか?」


 アーブルが声を掛けると、ようやく目を開いて、答えを返しました。


「確率的には半々というところですが、恐らくは動かないかと……」

「なぜ、そう思う?」

「バルシャニアの皇帝コンスタンは、一見すると粗雑に見えますが、実際には緻密な性格で、状況を良く判断して動きます」

「では、その判断の基準となる情報を、奴らは手に入れているというのか?」

「当然でございましょう。一国の命運を左右すると言っても過言ではない状況です」


 実際には、僕がとっくに知らせているのですが、このネストルという男の言う通り、コンスタンならば、偵察を放っていてもおかしくはないでしょう。

 と言う事は、僕が色々と画策しなくてもバルシャニアは攻めて来なかったって事ですよね。


 それじゃあ、セラフィマに結婚を迫られる必要も無かったって事じゃないですか。

 思わず頭を抱えて悶絶したら、心境がダダ漏れになっているのか、ラインハルトとバステンがクスクスと笑っていました。


「もう、笑い事じゃないんだからね」

『ケント様、続きを……』

「分かったよ。それにしても綺麗に撮れてるけど、どこから撮ってるの?」

『これは、絵画の額縁の影から撮影しております。壁の向こうは屋外で、しかも二階の部屋ですから、誰かが潜んでいるなどと疑いもしていませんでした』

「なるほど、隣に部屋がある壁なら覗かれている可能性もあるけど、二階の外壁じゃ疑わないか」


 物理的には人が隠れるスペースは無いけど、影の空間に潜った僕らには関係ないんだよね。

 バステンに促されて、一旦停止しておいた隠し撮りの映像を再生しました。


「これほどまでに手を掛けて、何も報われんのか?」

「とんでもございません。既にベルンスト、クリストフの両王子は、あの世に旅立たれたではありませんか」

「ふん、アルフォンスやディートヘルムを道連れにしておらんではないか」

「ならば、送り届けて差し上げれば宜しいのではありませんか? 元より身体の丈夫でないお二人が、悲報に触れて体調を崩し、あえなく……なんて事も無いとは言い切れませぬ」

「ふん、また俺に手を煩わせと言うのだな?」

「いいえ、アーブル様がお手を煩わせる事などございません。ただ、誰か若い者がアーブル様のご意思を曲解し、暴走してしまう可能性ならありますな」

「計算高い奴め……」


 アーブルは、給仕に酒を用意するように命じ、支度が整うまでの間、黙然と考えに沈んでいました。

 アーブルは数品の料理とともに運ばれて来た大振りなジョッキに満たされた酒をグッと喉に流し込むと、唸り声のごとき溜息を洩らした後で誰にともなく呟きました。


「ふん……思惑通りではないが、悪くもないか……」


 ネストルは、アーブルの呟きには答えを返さず、目線による勧めに従ってジョッキの酒を口にしました。

 アーブルは、自分の考えに沈んでいるようで、ネストルには目もくれずに料理を口にしては酒を胃袋へと流し込み続けています。


 ネストルもまた、余計な言葉を掛ける事は無く、時折酒を口にする以外は目を閉じて、こちらも考えを纏めている様でした。

 テーブルに並べられた料理が、半分ほどまで減った頃、ようやくアーブルがネストルに向かって話し始めました。


「第一王子派と第二王子派で潰し合いをしていれば、双方の兵が失われる事態になっていた。国力の損耗を考えれば、今回の事態はむしろ歓迎すべきなのか?」

「起こってしまった事態は、むしろ喜ぶべき状況と考えて対処すべきです。嘆いたところで時間が戻る訳でもありません」

「ふん、確かにその通りだ。馬鹿王子二人は始末できた。残りの二人も……まぁ、何とかなるだろう。問題は、派閥を牛耳っている爺どもが健在な事だな」

「左様です。特に第一王子派のドレヴィス、ラングハイン、サルエールの三家は、アーブル様の覇道を妨げる存在となりましょう」


 ネストルの言葉を聞いて、一旦は表情を緩めたアーブルは、頬杖を突いて不満げな表情を浮かべました。


「カミラとの縁談も、バルシャニアを後ろ盾として力で捻じ伏せた状況ならば簡単に進められるだろうが、今の状況では喪に服するなどと理由を付け、先延ばしにされるのがオチだろう」

「難しく考えず、力ずくでモノにされたらいかがです?」

「あの、じゃじゃ馬をか?」

「悍馬を乗りこなすのも、王の資質でございます」


 カミラを力ずくでモノにしようなどと考えたら、船山を右手一本で吊り上げ、投げ捨てた力で握り潰されちゃいそうです。

 ですが、アーブルもゴツイ身体つきをしていますし、身体強化を使えるのならば、カミラの方が組み敷かれてもおかしくありません。


「ふん、気の強い女を屈服させるのも嫌いではない。ましてや国一つが手元に転がり込んで来るならば、言う事は無い……だが、今はまだ潮目ではないな」

「では、周りを先に固めるのですね」

「こんな知らせが来たのだ、こちらから呼び付けなくとも奴が顔を出すだろう」


 その後、二人は他愛も無い話を交わしただけで、ジョッキの酒が無くなると、ネストルは引き上げて行きました。


「ねえバステン、この『奴』っていうのは誰の事?」

『それは、次の動画に記録してあります』


 アーブルとネストルの動画が終わると、また別の部屋で撮影された映像が続きました。

 先程の部屋とは違い、書斎のような部屋でアーブルが一人座っています。

 やがてドアがノックされ、外から声が掛けられました。


「アーブル様、ご案内いたしました」


 アーブルは、立ち上がって自らドアを開け、無言で客人を招き入れると、案内した者に廊下を見張るように命じました。

 客人は、まるで魔法使いのようなローブを身に纏い、フードを深く下ろしています。


「さぁ、どうぞ……」


 アーブルに促され、ようやくフードを外したのは神経質そうな初老の男でした。

 フードを外した後も、落ち着き無く部屋のあちこちに視線を向けています。


「ここは、この屋敷の一番奥にある私の書斎です。壁も厚くしてありますから、外には声は漏れません」

「どういう事だ、アーブル。話が違うではないか」

「それに関しては、私も戸惑っている所です」

「アルフォンスが生きているだけでなく、それぞれの派閥の主だった者達も、誰一人死んでおらん。どうするつもりだ?」

「どうするも何も、私も今日知らせを聞いたばかりで、すぐに手は打てませんよ」

「だが、このままでは……」」

「まぁ、立ち話も何です。どうぞ、お掛け下さい」


 ローブの男は、椅子に座る事すら忘れていたようです。


「バステン、このローブの男は?」

『フロレンツ・タールベルグ。リーゼンブルグの宰相です』

「こいつが……」


 カミラの救援要請や、バルシャニアからの親書を握り潰していた張本人という訳です。


「って、宰相がアーブルと通じていたって事?」

『それは、続きを御覧になって下されば、お分かりいただけるかと……』


 宰相フロレンツは、アーブルがお茶の支度をしている間、文字通り頭を抱えていました。

 対するアーブルは、ネストルとの打ち合わせで、これからの展開も考え終えたせいか、落ち着いているように見えます。


「どうぞ……」

「うむ……」


 フロレンツは、お茶を一口、二口と飲むことで、ようやく落ち着きを取り戻してきたようです。


「それで……どうするのだ、アーブル」

「カミラ様との縁談を進めていただきたい」

「なっ……馬鹿を言うな。仮にも王子が二人も死んでおるのだぞ。第二王妃テレンシア様は半狂乱の状態で、王城の中は大騒ぎだ。こんな状況で縁談など進められる訳がなかろう」

「死ぬのは二人だけとは限りませんよ」

「なんだと……貴様、アルフォンス様かディートヘルム様を亡き者としようというのか」


 フロレンツは、お茶が零れるほどの勢いでカップを置いて詰め寄りましたが、アーブルは顔色一つ変えていません。


「最初から、そのつもりでしたし、貴方も同意したではありませんか」

「馬鹿を申すな、それは内戦の最中ならば……という話だ。今の状況で更に王子が死亡すれば、必ずや疑念を持たれる事になるぞ」

「いくら疑念を抱かれようとも、私達が手を下したという証拠が無い限り、疑念は疑念のままですよ」

「だが、そんな状況下で、カミラ様との縁談を進めれば、重鎮共が黙っておらんぞ」

「騒ぎ立てる前に、王からの内示を得てしまえば良いだけです」

「だが、王がすんなりと……」

「そこを何とかするのが、宰相殿の才覚というものではありませんか」

「そのように簡単に言うが……」


 アーブルは、それまで顔に貼り付けていた作り笑いを消しさると、低くドスの利いた声で呼び掛けました。


「宰相殿」

「な、なんだ……」


 手下達を締め付ける時のような厳しい表情になったアーブルに対して、フロレンツは精一杯の虚勢を張ってみせますが、ギロリと睨まれただけで小刻みに震えています。


「我々は、リーゼンブルグという国を丸ごと手に入れるための密談をしておるのです。何のリスクも背負わずに、そんな大きな獲物を手に出来るなどと思わないほうが宜しいですぞ」

「き、貴様、私に指図するつもりか?」

「宰相殿……よく考えられよ。アルフォンス様とベルンスト様ならば、天秤に掛けても釣り合いが取れていました。ですが、アルフォンス様とカミラ様を両天秤に掛けるような事が可能だと思うのですか?」

「それは……」

「派閥の者達までは分かりませぬが、一代貴族の連中は、雪崩をうってカミラ様の陣営に加わるでしょう」


 高性能なカメラは、フロレンツの頬を伝う汗の滴まで映しています。


「もしカミラ様が実権を握れば、これまでの救援要請を握り潰していた者は、どうなりますかな?」

「き、貴様、わ、私を脅すつもり……」

「脅す? この先に待ち受けている未来を思い出させてさしあげているだけですよ。それとも、宰相殿には違う未来が見えるのですか?」


 フロレンツは、黙り込んだままで小さく首を横に振りました。

 例え、カミラが実権を握らなくても、アルフォンスが王位継承者となれば、自分の懐刀であるトービルを宰相に据えるのは目に見えています。

 フロレンツは、アーブルよりも遥かに破滅に近付いているという訳です。


「き、貴様が実権を握れば、宰相の座を約束するのだな?」

「私が次の国王になれないならば、宰相の座どころか処刑台に上がらされますぞ」

「分かった……王に縁談の件を奏上する」

「それが宜しいですな」

「だが、あの王だ、すんなり進むとは思うな」

「そこは、宰相殿の手腕の見せどころですな。ご自身の未来が掛かっている事をお忘れなきように……」


 フロレンツは苦虫を噛み潰したように顔を顰めた後で、キッパリと言い放ちました。


「アーブル……残りの王子も始末しろ。そうすれば、嫌でも縁談は進む」

「承知しました。宰相殿も気取られませぬように……」

「誰に物を言っている。ワシが何年王宮を牛耳って来たと思う」

「これは失礼しました。では、吉報をお待ちしております」


 席を立ったフロレンツは、再びローブのフードを深くかぶると、アーブルが開けたドアを潜って姿を消しました。


「屋敷まで護衛しろ。他家に悟られるな」


 アーブルは手下にフロレンツの護衛を命じると、書斎に戻り、ドッカリと腰を下ろしました。


「ふん、世話の焼ける爺めが……働かないなら、お前も消してやるからな……」


 アーブルは、冷めた茶には手をつけず、戸棚から酒瓶を取り出すと、小さなグラスに注ぎ、一息に飲み干しました。

 一人で考えを巡らせていたアーブルですが、酒をもう一杯飲み干すと、フラリと立って書斎を出て行き、そこで映像は終わっていました。


「ディートヘルムが毒殺されないように、カミラに食事を用意させて、コボルト隊の誰かが届けるようにしておいて。アルフォンスは、別に守ってやる義理も無いけど、警告の手紙だけは届けてやって」

『ケント様、この映像はいかがいたしますか?』

「タブレットの方にもコピーしたし、後でカミラとグライスナー侯爵には知らせるよ」


 バステンの話では、アーブルはラストック行きを一旦取り止めて、王都に留まる決断をしたようです。


 王都近くには、有事の際に各貴族が兵を呼び寄せるためのスペースがあるそうで、アーブルの兵も、そこに留まるようです。

 そうした状況を、ラインハルトは憂慮していました。


『ケント様、王城にも近衛騎士が詰めておりますが、この状況は、アーブルが王城の喉元に刃を突きつけているようなものですぞ』

「でも、いくら貴族の兵だとしても、城の中にまで勝手に入れないんでしょ?」

『勿論、本来ならばそうなっておりますが、宰相が手引きをするようであれば、すんなり兵を入れて城を落す……などという状況も考えられない訳ではありませぬ』

「アーブルが叛乱を起こして、城を乗っ取ったとして、自前の兵士だけで守りきれるものかな?」

『それは寄せ手の数にもよりますが、門を閉じて立て籠もれば、簡単には攻め落せませんぞ』


 ラインハルトの言う通り、王城はアルダロスの街並みさえも防衛に組み込み、外から大軍では攻め難く、内からは少ない兵でも守りやすい堅牢な造りとなっています。


「でも、篭城しても、援軍が来なければ、いずれは開城するしかないんじゃない?」

『まぁ、その通りではありますが、王城を落としての叛乱ともなると、共闘しようとする者が出ないとも限りませぬぞ。今の領地や税率、王家からの扱いに不満を抱く者は、いっそアーブルに付いて一旗上げようなどと考える可能性もあります』

「なるほど……でも、僕らが王城まで守ってやる義理も無いし、そんな状況になったとしても、僕らは出入り自由だから後から考えない? 叛乱起こして立て篭もってるアーブル一味を、僕らで一掃するとか楽しそうじゃない?」

『ぶははは、なるほど、確かにその通りですな。われらが王城を落す……良いですな。ぶははは……』


 バステンに引き続きアーブルの監視を頼んで、ヴォルザードに戻ろうかと思っていたらフレッドが報告に現れました。


『ケント様、第一王子派にも早馬が到着……今後の動きを巡って紛糾してる……』

「第一王子派の今後の動きとなると……進むか、戻るか?」

『そう、多くの者は、バルシャニアに備えて戻りたい……一部の者は、この際に第二王子派を切り崩して、領地拡大を目論んでいる……』


 第一王子派の中には、砂漠化によって深刻な影響を受けている貴族も居て、そうした者達は、今回の決戦で勝利し、肥沃な領地を手に入れようと画策していたそうです。

 言ってみれば、一攫千金の大博打に打って出た途端、賭けは無くなりましたと言われてしまったようなものです。


『出兵には費用が掛かる……手ぶらでは帰れない……』

「でも、元々は極大発生への備えとしての出兵だよね。領地拡大なんて話はどこから出て来たんだろう?」

『おそらく、トービルが焚き付けた……でないと困窮した貴族は動かない……』

「なるほど、肥沃な土地というニンジンをぶら下げて、戦に参加させたって事か」

『その通り……アテが外れた連中が、トービルを責めてる……』

「でもさぁ、戦うつもりの無い相手に一方的に攻めかかったら、ただの侵略行為だよね?」

『混乱に乗じれば……何とか出来ると思ってるらしい……』

「重鎮の三家はどうなの?」

『ドレヴィス公爵、ラングハイン伯爵は帰領を主張……サルエール伯爵は、進軍を主張……』

「サルエール伯爵って……」

『貧乏揺すり……』

「あぁ、あの気の短そうな人か」


 第一王子派がラウフを出発する時に、ずっと貧乏揺すりを続けていた小柄で野生的な貴族の姿を思い出しました。


『どうやら、投資に失敗しているらしい……』

「あぁ、なるほどねぇ……資金的に相当困窮しているって事だ」

『手ぶらで終わると……領地の多くを一代貴族の者に差し押さえられるみたい……』

「話し合いは、いつぐらいまで続きそうかな?」

『明日か、明後日には……』

「進軍するとしても、ラストックまで進むのには日数が掛かるよね。とりあえず結論が出るまで待って、進軍して来るようなら知らせて」

『了解……』


 ベルンストとクリストフが居なくなれば、内戦の心配は無くなると思っていましたが、貴族の思惑が解消されない限りは、完全な平和は来ないようです。


「あぁ……やっぱり貴族とか王族とか面倒だよね」

『ぶははは、ケント様が全員従えてしまえば簡単ですぞ』

「いやいや、こんな面倒事とか、さっさと終わらせて、僕はのんびり生きていくからね」

『ケント様、ゴタゴタが片付けば、バルシャニアの皇女様の輿入れとなりますぞ』

「うっ、そうなんだよなぁ……あぁ、家とか準備しなきゃいけないし、いつになったらのんびり出来るの?」

『ぶははは、四人も五人も嫁を手にするのですから、面倒事は片付けてもらわねばなりませんぞ』


 一難去ったらまた一難な状況は、これからも続きそうです。

 と言うか、委員長の両親への挨拶とかも済んでないよねぇ……あぁ、気が重いよぉ……。

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