第26話 休み明けの報告とランチデート
休み明けの火の曜日、朝食を済ませたら、すぐにギルドに向かいました。
ドノバンさんに週末に起きた一連の出来事と、魔の森での実戦を利用した救出作戦の話をしておくためです。
ギルドは緊急時以外、安息の曜日は休業です。
休み明けの今朝は、依頼が貼られた掲示板前は、いつも以上に混雑していました。
髭面のおっさんや筋骨隆々の男性などが、肩肘をぶつけ合いながら依頼を吟味する中に、今朝もリドネル達の姿が見え隠れしています。
うん、あれも一種の鍛練なのかもね、見ているだけなら楽しそうにも見えるし。
人混みから外れた壁際には、猫耳天使のミューエルさん、居なくても良い犬っころのギリク、そしてイケメン僕っ娘のマノンが居ます。
うっ……マノンがちょっと首を傾げながら、小さく僕に手を振ってます。
もう、お持ち帰りしちゃって良いですよね? 駄目なの? ねぇ駄目なの?
「おはようございます、ミューエルさん、ギリクさん、マノン」
「おほよう、ケント」
「ふん……」
「おはよう、ケント、身体の具合はどう?」
ふん……って、それでも挨拶のつもりなのかね、この犬っころは。
それに較べてマノンは体調まで気遣ってくれるなんて、やっぱりお持ち帰りしても良いですよね? 駄目なの? 何で駄目なの?
「ケント、どこか具合悪かったの? まさかギリクの……」
「ふん、ありゃー稽古の中での事だからな、俺は謝らねぇぞ」
「いえ、ちょっと疲れが溜まって貧血気味だっただけです。あの一件とは関係ありませんし、いずれ倍返しさせていただきますから、謝っていただく必要もありません」
「チビ助……いい度胸してんじゃねぇか……」
「僕、これからドノバンさんに用があるんですが、一緒に行きますか?」
「このぉ、行く訳ねぇだろう……」
見下ろすように睨み付けてくるギリクの視線を下から睨み返しました。
「もう、朝から喧嘩しないの、ギリクもケントも、めっ、だぞ!」
ひゃっは――っ、週明け早々ミューエルさんに、めっされちゃいましたぁ!
「ふん、喧嘩なんかじゃねぇよ。身の程を知らないチビ助を躾けてやってるだけだ」
「躾けてるつもりで、ガブっとやられないと良いですけどね」
「手前ぇ……」
「何ですか……?」
「もう……ほらギリク、依頼を見に行くよ。マノン、ケントは任せたからね」
「ひゃ、ひゃい……わ、分かりました」
あぁ……猫耳天使のミューエルさんは、ギリクを引っ張って掲示板の方へと行ってしまいました。
うーん……薄桃色の尻尾がゆらゆら揺れてますね。
それ、モフっちゃ駄目ですかね? 一日中頬擦りしちゃ駄目ですかね?
「ケント……どこ見てんの?」
「うひっ、い、いや、ミューエルさんとギリクさんは、どんな仕事するのかなぁ……って思ってね」
「二人は採集の仕事だと思うよ」
「採集って薬草とかの?」
「うん、ミューエルさんは薬師志望だから」
「あっ、そう言えば、そう言ってた……」
「ケントはミューエルさんの胸ばっかり見てて、ちゃんと話を聞いてなかったんじゃないの?」
「そ、そんな事はないよ……ちょっと忘れてただけだよ」
そうです、尻尾だってガン見してますよーだ。
「本当かなぁ……そう言えば、ドノバンさんに用事って?」
「あぁ、そうだった、急がないと……」
今日は週初めなので、初心者講習がある日です。
ドノバンさんは講師をしなきゃいけないはずですから、急がないといけませんね。
カウンターに行くと、丁度裏からドノバンさんが出て来たところでした。
「おはようございます、ドノバンさん」
「おう、ケントか、おはよう。今日は講習があるから稽古は出来ないぞ」
「はい、お忙しいところ申し訳ないのですが、『例の件』でちょっと……」
「ふむ……付いて来い」
「はい」
マノンにはちょっと待っていてもらって、ドノバンさんと一緒に二階の応接室へと向かいました。
「どうした、何かあったか?」
「はい、実は……」
船山の件を話すと、ドノバンさんの顔が憤怒に彩られました。
「ふざけた真似をしやがるな……」
「はい……」
固く握り締められたドノバンさんの拳は、一撃で人の命を奪う凶器にしか見えません。
続けて、カミラの目的が砂漠化による耕作地の減少を補う魔の森の開拓のようだと伝えると、ドノバンさんは苦悩の表情を浮かべました。
ヴォルザードへの侵略が目的でなければ、手出しが出来ない葛藤の表れでしょう。
なので、魔の森での実戦を利用した救出作戦の話をしました。
「なるほどな、むこうから出て来る所を利用するか……悪くないぞ」
ドノバンさんの顔に、不敵な笑みが戻りました。
「それで、そいつは何時行われる?」
「それはまだ分からないのですが、もしかすると見せしめの意味で案外早く行われるかもしれません」
「そうか、ならば受け入れの準備が必要だな」
「はい、森を抜けて来ますので、守備隊の方にも連絡をしておいた方が良いですよね?」
「そうだな、そいつは俺の方でやっておいてやる。ところで、隷属の腕輪は確実に外せるんだろうな?」
「はい、外した腕輪に魔物の血を塗って捨てておこうと思ってます」
「ほぅ、いいぞ、出来れば着替えも準備しておいて、着ていた服は破いて血塗れにして捨てておけ」
「あっ、そうですね、そうします」
着替えは、下宿に残されているものを全部影収納へと移しておきましょう。
女性用の服もあったので、何とかなるはずです。
「よし、作戦の日取りが決まったら知らせろ。受け入れは、お前の時と同様で大丈夫だな?」
「はい、結構です。よろしくお願いします」
ドノバンさんと別れて一階へと戻ると、朝の喧騒はすっかり終わっていて、ポツンとマノンだけが手持ち無沙汰な様子で立っています。
しょんぼりしていた表情が、僕の姿を見た途端にパーっと明るくなりました。
もう良いよね? これって僕の勘違いじゃないよね? でも待てよ、恋愛感情ではなくて、単なる友情という可能性も……どっちだ? 分かんないよぉ。
「お、お待たせ、マノン」
「ドノバンさんとの話は済んだの?」
「うん、体調管理が出来ていないって怒られちゃった……」
「本当だよ、ケントは無茶しすぎ。今朝だってギリクさんに突っ掛かって行くし」
「だって、あのくらい言っておかないと、稽古の時に本気でやってくれないじゃん」
「僕らの世代で、そんな事を言うのはケントだけだよ」
「そうなの?」
「そうだよ、ギリクさんはもう一人でダンジョンに潜れる実力があるんだよ」
「そうなんだ……じゃあギリクさんに勝てるようになれば、ダンジョンにも潜れるのかな?」
そう言うと、マノンが正面からジーっと僕を見詰めてきました。
えっ、ちょっとマノンちゃん、近くない? ま、まさかチューする気なの?
「ケントは、本気でギリクさんに勝とうと思ってるの?」
「うん、当面の目標かな」
「えっ? 当面の目標って……まさかもっと強くなる気なの?」
「だって、ギリクさんがヴォルザードで一番強い訳じゃないよね」
「それはそうだけど……普通、そんな風に考えないよ」
「どうして? マノンは女の子だから考えないんだろうけど、男だったら挑戦する方が普通だと思うけどなぁ」
でも良く考えたら、日本に居た頃の僕だったら、ギリクに勝とうなんて思わなかっただろうね。
ギリクよりも弱い船山にだって、逆らおうとも勝とうとも思わなかったもの。
あれ? もしかして凶悪スケルトンの影響で好戦的になってるのかな?
「でもさぁ、ケントってハズレ判定だったんだよね?」
「えっ、あー……うん、そうだよ、なんで?」
「ギリクさんは、騎士タイプで身体強化の割合が高いんだよ」
「ふーん……そうなんだ」
「そうなんだって、まだ安定性に欠けるみたいだけど、瞬間的には5倍ぐらいの身体強化が出来るって噂だよ」
「あー……なるほどねぇ」
確かラインハルトから聞いたのは、強化の割合と持続時間が重要だったような。
5倍っていうと、一番上ぐらいだったよね。
「言い難いけど、ケントが勝つのは難しいと思うよ」
「うーん……そうかぁ。でも、まだ始めたばかりだし、この前は一本取れたし」
「うん、あれは格好良かった! いくら油断してたと言ってもギリクさん相手に凄いよ」
「そ、そう? でも、その後はやられちゃったし……」
いやぁ、格好良いなんて女の子に言われたの、生まれて初めてかも、ちょっと照れくさいけど、もっと言っても良いんだよマノンちゃん。
僕は、褒められて伸びるタイプだからね。
「でも、ケントは凄いよ。どんどん強くなるし、ギリクさんにも平気で向かって行くし、僕なんか恐くて足が震えちゃってたよ」
「あぁ、あれは僕にやられて頭に血が上ってた感じだったものね、ドノバンさんに怒られてたしぃ、むふふふ……」
「そう言えば、ケントはドノバンさんとも平気で話してるよね」
「えっ? だって、ドノバンさんは厳しいけど、親切じゃない」
「そうなんだけどさ……やっぱり迫力が……ね」
「まぁ、それも慣れなんじゃない?」
ラインハルトの暴れっぷりをちょいちょい見ているせいでしょうかね、だんだん免疫が出来てきてる感じなんですよね。
「あれ、そう言えば、マノンって騎士タイプなの? 術士タイプなの?」
「僕は術士タイプだよ。だから戦闘講習を終えられるか、ちょっと不安なんだ」
風の曜日と土の曜日の講習の内容は知らないんだけど、また三人抜きが突破の条件だとしたら、確かに結構大変だよね。
まして、女の子のマノンだと、体力的にも厳しい気がするよ。
そう言えば、戦闘講習には女性はあんまり出ていなかった気がする。
「ねぇ、マノン、やっぱり女の子で冒険者を目指すのは珍しいの?」
「うーん……他の街だと、そんなに珍しくはないみたいだけど、ヴォルザードでは珍しいかも」
「それは、やっぱり魔の森が近いから?」
「うん、他の街の森にも魔物は居るけど、強力な魔物に出会う事は少ないみたい。それと較べて、ヴォルザードは近くの森でもオーガが出るからね」
「あれ? そう言えば、オーガとロックオーガは違うんだよね?」
「ケント……最初の講習で習ったじゃない、忘れちゃったの?」
「えっ、あっ……あぁ、そ、そうだね、うん、習った、習った、そうだった」
「ケント、覚えてないんでしょう……」
「そ、そんな事ないよ、オーガとロックオーガは違うんだって習ったもんね、ちゃんと覚えてるよ」
違うよね? 名前が違うんだか別物なんだよね、確かそうだよね。
「ロックオーガはオーガの上位種だと考えられていて、魔石を取り込んで行くうちに変化する……って、やっぱり覚えてなかったでしょ?」
「うっ……ごめんなさい、忘れてました」
「もう、しょうがないなぁ、ケントは。学校でも少し習ったでしょ?」
いえいえ、マノンちゃん、僕らの世界にはオーガもロックオーガも、ゴブリンすら居ないからね……って言えないんだよなぁ。
「僕らの住んでた所は魔物が少ないから、学校でも殆ど習わなかったんだよ」
「そうなんだ。ねぇ、ケントが住んでた国って、どんな国なの?」
「えっ? ぼ、僕が住んでた国?」
「うん、僕はヴォルザードから出た事無いから、他の国の話とか興味あるんだ」
「うーん……僕の国かぁ」
日本の話をそのままでは出来ないよね。
魔法は無いけど、飛行機が空を飛んで、新幹線で遠くまで行けて、インターネットで星の裏側とも話が出来る……なんて言っても信じられないだろうな。
「僕が住んでたのは、海に囲まれた島国だったんだ」
「へぇ……島なんだ、どんな島なの?」
「えっと、島って言ってもかなり大きな島で、火山が沢山集まって出来た島なんだ」
「火山って、あれだよね、噴火するんだよね? 学校で習ったよ」
「うん、何十年に一度とか、何百年に一度ぐらいの割合だけどね」
「そうなの? いつも噴火してるんじゃないんだ……」
「そうだよ。だって噴火すると、火山灰とか溶岩とかで、場合によっては大きな被害が出たりするんだよ」
「そうなんだ……火山かぁ……見てみたいなぁ……」
「見せてあげたいけど、どうやって帰れば良いのかも分からないんだけどね」
「えっ? お金を貯めれば帰れるんじゃないの?」
「うん、舟で漂流した感じなんで、どうやって帰って良いのやら……」
「ふ、ふーん、そうなんだ、ケント、帰れないんだ……」
あれ? 僕が帰れないというのに、何だかマノンが嬉しそうに見えるのは気のせい?
「じゃあ、ケントはずっとヴォルザードに居るんだよね?」
「うーん……どうかなぁ、ランズヘルトの他の街にも行ってみたいなぁ」
「そ、そうなんだ……」
あれ? なんだかマノンがしょんぼりしているような、あぁ、そうか誘ってもらいたいのかな?
「その時は、マノンも一緒に行く?」
「えっ? えぇぇぇぇぇ……ぼ、僕と?」
「うん、でも、何時になるのか分からないし、行けるかも分からないけどね」
「むぅ……」
あれ? 誘ってみたけど、なんだか反応が変な気がするけど、なぜ?
「そんな事言って、本当はミューエルさんと行きたいんじゃないの?」
「ミューエルさん? ミューエルさんだと、ギリクさんが一緒に付いてきそうだしなぁ……」
「そんなの、ギリクさんを倒さないと無理に決まってるじゃない」
「まぁ、荷物持ちに連れていっても良いけどね」
「えぇぇぇぇぇ……本気でそんな事を考えてるんじゃないよね?」
「まぁ、ミューエルさんを誘うとしたらの話だよ、まだ働き始めたばかりで貯金も無いのに他の街に行くとか無理だし」
「そ、そうだよね、今すぐなんて無理だよね」
「うん、まだまだやらなきゃいけない事が沢山あるから、当分ヴォルザードを離れるつもりは無いよ」
「そ、そう……そうだよね。そんなに急にはねぇ……僕だって心の準備が……」
「ん? 何か言った、マノン?」
「う、ううん、何でもないよ、こっちの話……うん、何でもない」
同級生のみんなは、たぶん今すぐにでも日本に帰りたいって言うだろうけど、正直あんまり帰りたくないんだよね。
日本に帰ってポンコツ扱いされるぐらいなら、こっちでチートな能力を生かして暮らした方が楽しそうだものね。
みんなを助けて、日本に帰して、僕はヴォルザードに残っちゃおうかなぁ。
下宿は何年ぐらい居られるものなんだろう、魔石とか沢山あるから家とか買えちゃうかな。
税金はどのぐらい掛かるんだろう、そもそも家っていくらするんだ?
「ケント……ケント、ケント!」
「うひゃあ! な、何、何、マノン」
「もう、また話を聞いてなかったでしょう。今日の仕事はどうするの?」
「あっ……話し込んでて忘れてた」
「もうお昼になっちゃうよ」
「ぐはっ……今日も休みになっちゃった……ごめんね、マノン」
「いや、僕も話に夢中になってたから、ケントだけのせいじゃないし」
「お詫びにお昼をご馳走するよ、どこか美味しいお店知らない?」
「えっ、そんなの悪いよ、自分の分は自分で払うよ」
「大丈夫、大丈夫、ちょっと臨時収入もあったし……」
「そうなの? じゃあ、近くにあるパスタ屋さんはどう?」
「うん、そこにしようか」
フレッドがロックオーガの魔石を大量ゲットしてきてくれたんで、売ってはいないけど懐は暖かいんですよ。
ロックオーガの魔石だと、安く見積もっても2万ヘルト以上はするそうです。
魔石1個で、下宿代が半年分以上払えちゃうんですよ。
それが200個以上もあるので、ぶっちゃけ働く必要とか全然無いんですよね。
ただ、この魔石は同級生達がヴォルザードに来た時に、当座の生活資金として使うつもりでいます。
これだけあれば暫くは大丈夫だけど、ヴォルザードでの滞在が長引きそうな時には、何か対策を考える必要がありそうです。
マノンのお奨めのパスタ屋さんは、ギルドから魔の森の方向へ少し進んだ場所にありました。
お昼時には行列が出来るほどの人気だそうですが、まだ少し時間が早いので、待たずに座れました。
あれ? 女の子と二人でランチなんて、ちょっとデートっぽくないですか?
おぉ、これがランチデートというやつでしょうか? ちょっとリア充しちゃってる?
「いらっしゃいませ! あぁ、マノン」
「こんにちは、メヌエット、また来ちゃった」
「カウンターで良い……あら?」
「きょ、今日は友達が一緒なんだ……」
「へぇ……珍しいわね」
緑がかった髪をポニーテールにしたパスタ屋の店員さんは、マノンの友達のようです。
「へぇ、君がケントかぁ、ふーん……」
「ど、どうも……」
何でしょうね、マノンに付いた悪い虫だと思われちゃってますかね?
何だかジト目で値踏みされちゃってますよ。
「ね、ねぇ、メヌエット、どこに座れば良いかな?」
「あぁ、そうね、こっちの席にどうぞ」
何だかマノンの顔が真っ赤なんですけど、僕と友達と思われるのが恥かしいのでしょうかねぇ。
メニューを見せてもらったけど良く分からなかったので、マノンにお奨めを聞きました。
「どれが、マノンのお奨め?」
「えっとね……この『塩漬け肉とクリームの生パスタ』が美味しいよ」
「じゃあ、僕はそれで」
「ぼ、僕も一緒で……」
「ありがとうございます、塩クリーム生、2人前でーす!」
メヌエットは、何やらマノンに言いたげな表情でしたが、他のお客さんも入り始めて、ゆっくり話をしている時間は無さそうです。
それでも、時々こちらに向かって、ニマニマとした視線を投げ掛けてきました。
その度にマノンが真っ赤になって……イケメンじゃなくてごめんなさい。
僕みたいなポンコツが、彼氏かもと思われるだけでも嫌だろうね。
「お待たせしました、『塩漬け肉とクリームの生パスタ』です、ご・ゆっ・く・り……」
物凄く美味しそうな匂いなんですが、ごゆっくりのイントネーションが気になりますねぇ、関係を誤解されていないと良いのですが。
あれ? 誤解された方が良いのかな? どっちだろう? うーん……パスタが冷めないうちにいただきますか。
こちらの世界では、大きな音を立てなければ、パスタなどを啜るのはOKのようです。
マノンは、少し幅広なパスタを器用にフォークで巻き取ると、桜色の小さな口元へと運び、チョロっとはみ出た分をチュルっと啜りました。
うん、ヤバいくらいの可愛らしさで、マノンの食事風景をおかずに、ご飯3杯はいけそうです。
「ケント、どうしたの? 口に合わなかった?」
「えっ、ううん、そんな事ないよ、美味しいよ」
慌てて食べてみてビックリ、何だか癖になりそうな味です。
塩漬け肉はスモークしてあるらしく、ふわっと燻製の香りがして、それが濃厚なクリームソースと良く合っていますね。
クリームのコクは香辛料が上手く調和していて、濃厚な味わいを邪魔せず、それでいてスッキリとした後味に仕上がっています
生パスタは少し幅広で、絶妙な茹で加減がプリっとした腰を生み出していました。
幅広パスタにソースをたっぷりと絡め、塩漬け肉と一緒に食べると、あぁ……この妙なるハーモニーが堪りません。
「むぐむぐ……ごちそうさまでした」
「えぇぇ……ケント、ちゃんと味わって食べてる?」
「えっ、勿論だよ。凄く美味しかったよ」
「そ、そう……それなら良いんだけど、ちょっと待っててね」
「あぁ、急がなくても良いよ、ゆっくり食べて」
「ケント、お替り頼む?」
「ううん、そろそろ混み始めたから、また今度にするよ」
「あっ、本当だ、僕もちょっと急ごうっと……」
うん、一生懸命に食べているマノンは、小動物チックで可愛いですねぇ、見ているとホッコリしますよ。
マノンを観察する姿をメヌエットに見られて、ニヤニヤされちゃいました。
どんな関係だと思われちゃってるんでしょうかね。
お店を出る時、何やらメヌエットがマノンに耳打ちして、2人でキャイキャイしてました。
うん、やっぱり女の子同士って良いですねぇ。
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