アマヤドリコトリ

砂上楼閣

第1話

バケツをひっくり返したみたい、なんて表現がぴったりな雨。


昼過ぎまではあんなに晴れていたのに、急に降ってきた。


生憎傘は持ってなくて、慌てて雨宿りできる場所に。


停留所の屋根に、雨粒が叩き付けられる音が響く。


縁から滴れる雨粒は、まるでカーテンみたい。


雨が止むまでは、まだまだかかりそうだ。


服はもちろん鞄まで濡れてしまった。


中身は無事だけど着替えはない。


季節柄寒くはないけれど…。


濡れた服が気持ち悪い。


本当についてない。


どうしようか。


…チュン


ん?


…チュン


足元を見る。


小さな雀がいた。


どうやら先客らしい。


この子も雨宿り中かな?


落ち着かなく動き回ってる。


停留所の椅子の下で、うろうろ。


たまにこっちを見てはすぐにぷいっ。


その様子は可愛らしくて見てて飽きない。


さっきまでの不快な気持ちはどこかにいった。


ほんの数メートル、雨垂れのカーテンの部屋の中。


周りはずっとザァザァうるさいままだけれど。


時たまチュンチュン鳴く声が、心地いい。


何回かバスがやってきては出発する。


いつの間にか、雨も止んでいた。


もうカーテンもなくなった。


不意に雀が飛び立った。


思わず手を伸ばす。


当然届かない。


…チュン


一声鳴いて…。


そのまま飛んで行く。


不意に当りが明るくなる。


雨が止んで、雲が流れていく。


雲の切れ間から光が差し込んでる。


エンジェルラダーだったかな。


日本語だと天使のはしご。


雀は真っ直ぐ光の中。


最後まで見送る。


さようなら。


チュン

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