元最強格闘家が転生して鬼に成った件

ラッシュガーデン

序章 眠れる獅子

 89の年で私は死んだ。心地良さを感じる天国とも地獄ともよく分からない場所で、私は魂としてプカプカ漂っている。ただ自分が死んだことは記憶している。


 何もすることがないので、己の人生について振り返っている。


 生きていた頃の職業は格闘家だった。格闘家としての私は、技術で戦うことを得意としていた。技術的には私は、一つを極めるタイプではなく、古武術から護身術まで代表的なものは一通りした。年を取っても筋トレと技の鍛錬たんれんは欠かせなかった。その成果か、年齢より若く見られ大きな怪我は無かった。


…ブゥオーン…ブオーン…ボーン…ホーン…

魂に直接、波長をチューニングされる感覚に合う。


(?)『…聞こえますか?』


 魂に響いて来るように、澄んだ"音"が聞こえる。…まぁ、私は死んだのだから大体のことは察しがつく。"音"の主は、現世(死者が現世もおかしいが)で言うところの神か天使か。


『えぇ。聞こえますよ。』


『はじめまして。私は、"低位ていい天界人てんかいじん"です。名前はありません。』


『…なるほど。(私は神だ。なんて名乗らないか。そもそも、実は神や天使の区分は存在し無いのか?)』


『我々天界人は、貴方様を"お待ち"しておりました。貴方様が生前での記憶の整理がつき次第、現状のご説明をするよう仰せつかっております。』


 やけに丁寧だな。そして私を知っている。私がまるで、死んだ人間の中では特別かのようだ。

 今まで放ったらかしにしてたのは記憶整理か。確かに整理つく前にはなしかけられてたら、こんがらがっていただろう。周りの環境もあって、気分は悪くない。


『お願いします。』 


『まず、ここは死後、魂の次の行き場を決めるの狭間です。』


これから"天界"に行くか、"地界"に行くか決まる訳だ。


生人界せいにんかいでは、死後の世界を天国と地獄の2つにしか区分されていません。しかし、細かく区分すると沢山の次元の階層が存在します。大きく分けて天界・生人界・地界となる、ということです。』


『確かに初めて知りますね。そんな話は聞いたことがない。それが私にどう関係が?』


『ご理解が早くて助かります。ここからが重要です。…』続く

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