2. 珍しくイメージした曲があるドキュメンタリー・ファンタジー
音楽が好きすぎるため、実は反対に、お話を書く時はあまり音楽を聞かないようにしています。
なぜなら、書くのをやめて音楽を聴いてしまうのと、歌詞や楽曲の世界観に引っ張られてしまう可能性があるから。
そんな私ですが、ごく稀に、作品と音楽が結びつくことがあります。その一例が、こちらです。
「アオイのすべて 〜第四十一代司教に係る司教記録本」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888774935
本作は、“クアドラート”という街の新聞記者・エミリアが、教会の、若くて風変わりな司教・アオイへの密着取材を通して、秘められた街の歴史、アオイの人生を辿る……というお話です。
教会なので、賛美歌やパイプオルガンなど、音楽に関する話題も出てきますが、私が本作を書いている時に意識していた曲は、それらとは全く関係ありません。
【音楽】Daughter / No Care
Daughterは、イギリスの女性ボーカルバンドで、孤独感を題材にしたアンビエント寄りな音楽が特徴の3人組です。
彼らにしては珍しい、速いテンポの曲ですが、一言目はこう。(私の訳なので、違ってたらごめんなさい)
「私が知ってるのは、脚をばたばたさせるやり方だけ。だから、誰もダンスに誘わない」
根っこにあるテーマは他の曲と変わらず、そこはかとなくぼんやりしていて、だけどはっきりそこにある孤独。曲のスピード感は「疾走感」より「焦燥感」という気がしてきます。
ミュージックビデオも、モノクロと赤の色使いや、狭い廊下や室内での演奏など、どこか閉塞感があって、心がざわざわするんですよね。
私は、この曲をずっと、主人公が取材するアオイが話す時の雰囲気としてイメージしていました。アオイは、歴代最年少で司教になり、街の市政に関わっています。独特な方法や価値観でクアドラートの街を導くので、周りの人からも一目置かれる存在です。
しかし、主人公は次第に、アオイは単なる天真爛漫な人間ではなく、万華鏡のように様々な側面を持っていることに気づきます。アオイの過去を知ることは、街の歴史の真実そのものだからです。
そんな深刻さを背負いながら、飄々と生きるアオイの姿をイメージした時に、この曲が浮かんできました。
すらすらと話し、色んなことを考えている、何をするかわからない自由奔放なアオイ。でも、その横顔に浮かぶほんの一瞬の孤独が、この曲の雰囲気と重なったのです。
この曲は、サビでこう歌います。
「気にかけない、気にかけない。この世界で。
気にかけない、気にかけない。この世界で。
私は気にしない。もう、気にしない。
私は気にしない、もう、気にしない」
こんな孤独が、他にあるんだろうか。そんな風に、思ってしまいました。
もちろん、他にも好きなフレーズは色々あるのですが、キリがないのでこの辺りで。
確か、お話を書いているどこかの段階で、気づきたらこの曲とアオイが重なるようになりました。最初からそうしようと思ったわけではありません。不思議なものです。
こんな風に、自分の作品を通して好きな音楽の話をするのは初めてでしたが、とても楽しかったです。またなにかタイミングがあったら、音楽についてつらつらと書き留めておきたいと思います。
※本項は、自主企画からタイトルを更新しました。
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