第16.5話 贈与者会合

 中央都市、ギルド地下――円卓。


「今日の議題は西の有限回廊の踏破者についてだ」


「ついに出たか。長かったな」


「うちのクランにはいらないな~。うちはイケメン限定だし~」


「ファーファ、それをこれから話し合うのよ」


「はいはーい」


「では、これから新たな踏破者への交渉権についての話し合いを始める。まずは西の回廊を管理するギルドからの査定だ」


「一人目はアイヴァンキス・クラリス・ネイル。性別は女、種族は獣人」


「面白いスキルを持っているな。《大物喰らい》――いわゆるアンナチュラルな能力だ」


「理に反する能力……使用者自身に反動は無いのかしら?」


「無くは無いだろう。問題は使い熟せているのかどうかだ」


「使い熟せているから回廊を踏破できたんじゃねぇか? まぁ、うちのクランみてぇな団体戦には向かねぇスキルだが」


「まぁ、各々考えはあるだろうが――素行は悪くない。直情的ではあるようだが、それはチームの仲間が傷付けられたり馬鹿にされた時だけのようだ」


「仲間想いなのは良いことだ」


「では、次にいこう」


「二人目はエルダー・ヨミリル。性別は女、種族はシルキー」


「こっちの能力も珍しいわね。《空白の目録》――成長するスキル自体は偶にあるけれど、ここまで育てることに重きを置いたものはほぼ無いわ」


「たしかドンのところにも同じようなスキルの奴が一人いただろ。そいつはどうなんだ?」


「……努力はしている」


「なははっ! つまり、使えないってことねぇ~」


「一人目に対して、こちらは真面目で勤勉。スキルとの相性もあるのでしょうが、モンスターなどの知識量も多いようです」


「いいねぇ。そういう奴は一人でも多いほうがいい。どうせ死んじまうしな」


「お前のところはワンマンにさせ過ぎるからだ。もっとチームワークを磨け」


「お? なんだぁ? 雑魚クランが何か言ってらぁ」


「……クラン戦でもやるか? まず間違いなくお前のクランじゃあうちには勝てないぞ」


「やめろ、二人とも。そもそもクラン戦は私達が主導で行うことじゃない」


「では、最後だ」


「三人目はフドー・クロード。性別は男。種族は人間でドリフター」


「見た目は悪くないんだけどねぇ……スキルがなぁ……」


「ドリフターなのに倉庫系で、しかも限定的となるとあまり興味をそそられないな」


「まぁ、珍しいタイプなのは確かだが……このドリフター、出現したのがダンジョン内というのは確かな情報か?」


「それは間違いないんじゃない? 回廊踏破前の冒険者登録に記録は無いし、その点についてはギルドを信用していい」


「ってことはダンジョン内放浪者か。前例が無かっただけで、これでダンジョン内にもドリフターが転移してくるって証明になったな」


「問題は――倉庫系スキルのドリフターが、どうやって最も難易度の高い有限回廊を踏破できたのか、ね」


「そりゃあやっぱ、他の二人が有能だったんじゃねぇの?」


「しかし、報告書によるとドリフターの功績が大きいようだぞ?」


「とはいえ、ドリフターはなぁ……」


「そうなんだよ。ドリフターって人種は何故か自分を過信して突き進む奴らばかりで……手前勝手に死んでいくからなぁ」


「今、使い物になってるドリフターって十人に満たないだろ?」


「うちにもいるよ~。イケメンだけ~」


「お前んとこはほとんど役立たずだろが」


「不細工に何を言われてもノーダメ~」


「実際、生存率で言えばドリフターの六割は最初の無限回廊への挑戦で命を落とす。能力から考えても、このドリフターに価値は感じられないな」


「では、総合的に判断しよう。チームバランスは?」


「良くは無い。能力的に見ても攻撃特化なのは明らかだろう」


「そういうのは間に合ってんだがな……よく三人で踏破できたものだ」


「運にも恵まれたってことでしょう」


「……他に言うことが無いのなら決を採ろう。この三人への交渉権が欲しい者は?」


「〝…………〟」


「こちらの意見は纏まったとして――おい、ジョニー。お前はどう思う?」


「んんっ? おおっと、すまんねぇ……話がつまらな過ぎて眠っちまってたようだぁ」


「珍しく会合に顔を出したかと思えばこれだ。まず、せめて酒を仕舞え」


「そりゃあ、無理な話だ。酒は俺にとっての空気だからなぁ」


「酔っていることは構わん。だが、会合にいる以上は参加しろ」


「はいはい、っと――ん~……はっは! 中々に面白い三人組だな。獣人、シルキー、ドリフター……へえ、俺が担当してやってもいいぞぉ?」


「冒険者を一人も抱えていないあんたんとこが、この新人を? どういう風の吹き回しよ」


「ただの気紛れだなぁ……直接会って、ダメと判断すりゃあ適当に放り投げるが、使えそうなら俺が交渉権を頂こう」


「……いいだろう。異論のある者はいるか? ……よし。では、この三人についてはジョニーに任せる。では、次の議題に入るとしよう」

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