朝六時に私はとんかつ料理を作った
隅田 天美
料理の素人がエッセー漫画などに出てきた料理を再現してみた その3
コロナである。
正式名称、新型コロナウィルス。
このウィルスのせいで世の中は大混乱である。
私も仕事でも
仕事は在宅勤務をやるようになり(not テレワーク)(一週間のうち二日だけだが)私事は仕事以上に大混乱になった。
まず、今年のお墓参りツアー(自分の好きな作家の墓参り)の予定、というか出来るかどうかが分からなくなった。(泊まろうとしていたホテルはコロナの影響で潰れた)
師匠(原幌平晴氏)に会えないのも痛い。(今回は知り合いにも会えるというビックチャンスもあったのに)
愚痴を聞いてくれる心優しきトレーナー(でも、笑顔で地獄のメニューを課す。名言『隅田さんが辛くっても俺たちが辛くなければいい』)がいるジムも休館。
友人とカラオケに行こうにもカラオケも閉館中。
ならば、ご飯を食べようにも色々なところが時間短縮やテイクアウトだけだったりする。
会社などからは「不要不急の外出はするな」と言われ、ネットを見ればストレスが溜まる。
イライラする。
小説のアイディアどころか将来を悲観しまくって泣くことすらあった。
ある日。
会社から帰宅するため最寄り駅にいた。
金曜日である。
家に帰ってからのあれこれを考えている間に、何か私の中で張ってきた糸が切れた。
気が付けば、別の駅に隣接している某大型家電量販店のおもちゃ売り場で趣味のガンプラを眺めていた。
『へぇ、鉄血系が安くなっているなぁ』
以前から欲しかったガンプラを買い、駅に戻る。
駅構内に飲食店があるのだが半分以上の店にシャッターなどが降りていた。
その中でやっていたチェーン系のとんかつ屋さんに足が向いた。
「とんかつだけのテイクアウト出来ますか?」
「はい、できますよ」
「じゃあ、かつ二枚お願いします」
――あれ? 何言っているんだ?
混乱する私がいる。
家に帰るまで揚げたてのとんかつの匂いに包まれる私。
帰宅し、荷物を整理したのは午後六時半。
とんかつの入っている箱をビニール袋から出して開ける。
大量の千切りキャベツの上に揚げてたてのかつが二枚あった。
私はそのうちの一枚を皿に出してソースを全体的にかけて冷蔵庫に入れた。
以前、というか、ときどき、池波正太郎のエッセーで井上さんという悪友と冬に旅に出たときに宿でかつが出されて、それをソースでびしゃびしゃにしてそのままにして翌朝に食べていたという話がある。
なんでもソースが煮凝りのようになって美味いのだとか。
しかし、現在、季節は春。
外には出せない。
なので冷蔵庫に入れた。
私は夕食にキャベツを食べ、残りのかつも冷蔵庫に入れた。
翌朝。
冷蔵庫からソースに染まったかつを出しご飯と共に食べる。
最初に思ったのは、「これってサンドイッチのかつの味だ」
ソース味の衣と肉の味。
残念ながら、肝心の煮凝りのようになる脂身がかなり少なかったもの問題だろう。
でも、ソースとご飯の組み合わせは個人的には鉄板だと思っている。
実際、我が家の卵焼きの味はソースである。
それから二十四時間後。
眠気眼で作ったのは『大阪 愛のたたき売り』(胡桃ちの)の「簡易ドミカツ丼」(仮)である。
まずは作品紹介。
『大阪 愛のたたき売り』は胡桃ちの(作中では蓑田雛子)の家族(主に双子の子供)が成長する様子が描かれている。
連載当初は0歳児だった双子の兄弟も今は二十歳を超えた。
その中で雛子が結婚前にアルバイト先で出された卵とじのかつ丼に衝撃を受ける。
彼女の家ではソースとケチャップを煮立たせたものをかつに乗せて「わーい、かつ丼」
のちにテレビで「ドミカツ丼」が紹介され、それが自分が食べていたかつ丼だったことを知り驚く。
フライパンにソースとケチャップを煮立たせ、その間にトースターで温めたかつを丼ご飯の上に盛りタレ(タレ?)を乗せる。
食べてみる。
この瞬間、美味いとか不味いなどではなく「チープだ」と思った。
駄菓子のかつの味と言えばわかりやすいか。
より酸味が強くなり、肉よりタレが凄く主張する。
全てを食べ終え、真っ先に私がしたこと。
それは我が家の常備薬である胃薬を飲んだこと。
ええ、間隔をあけて二日間連続朝から、かつは胃に負担をかけた。
若いうちなら平気かも知れないが……
効果はてきめんだった。
「ありがとう、いい薬です」
というキャッチコピーは伊達ではない。
というわけで質問。
今回、本当に料理していないけど良かったのだろうか?
朝六時に私はとんかつ料理を作った 隅田 天美 @sumida-amami
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