answer 【春斗】

【今屋上にいるから来て欲しい】


朝になってLINEが来て私はゆっくりと階段を上っていく。


一段一段上る度に運動してもないのに胸が苦しくなっていった。


ドクン、ドクン。


自分の鼓動がこんなに大きく感じるのは初めての事だった。


ドアの前に着き立ち止まって少ししゃがんで自分を落ち着かせる。


ドアの向こうには春斗がいるんだ。


ただそれだけなのに、私にとって昨日と今日は別物の世界になった。


-ガチャ。


ドアを開けるとともにふわっと心地良い風が吹き眩しい光に照らされた。


『よぉ。』


よ、よぉって・・・爽やかな笑顔で私を出迎える春斗はいつもと変わりないように見えた。


『・・・おはよう。』


振り絞っても小さい声しか出ない私。


『そんな神妙な顔するなよ!世界が終わるわけじゃあるまいし!』


『そ、そう・・・だよね。』


『・・・冬斗にも告白された?』


『!?え、なんで知って』


『まあ、いろいろとな・・・そう出るだろうなとは思ってたから今更驚かないけど。』


『・・・・・。』


『答えは・・・決まった?』


『・・・うん。あ、あの・・・わ、私なんかでよければ・・・。』


いっぱいいっぱいになりすぎて後半にかけてもごもごと小声になってしまった。


春斗、今の聞こえたかな・・・。


と心配した瞬間、私は昨日と同じ香りに包まれていた。


『よっしゃー!!!』


抱きしめると同時に無邪気でかっこいい笑顔を見せる春斗。


私は顔を真っ赤にしてそこから動く事が出来なかった。相変わらず心臓の音がドクン、ドクンと身体中に響いている。


『・・・あれ、なんか緊張してる?』


いや、そりゃそうでしょ!と見上げた瞬間春斗とバチっと目が合った。綺麗な瞳と共に春斗も心なしか顔が赤い。


『安心しろ、俺だってそんなに余裕ないし。昨日だって全然寝れなかった。』


春斗に昨日抱きしめられた時世界が変わった。春斗といると自分がお姉ちゃんだからしっかりしないと小さい頃は思っていた。それなのに昨日抱きしめられた瞬間、ドキドキしたのと同時に春斗に包容力を感じた。


もう自分の知っていた泣き虫春斗はそこにはいなくて、かっこよくて頼れる姿に成長した春斗がいたんだ。


・・・ちょっとませすぎた感はあるけど。


『ピアスとろうか?』


『え?』


不意にピアスに視線がいった私に春斗は続けた。


『どうでもいいよ。髪だって黒く戻してもいいし、匂い嫌いだったら香水変えてもいいし。俺は沢山モテたいからこういう姿になった訳じゃなくてお前に好かれたいからこうなっちゃったの。だから・・・変えてほしいところとかあったら何でも言えよな。』


サラッととんでもない事を言う春斗。


でもそれが様になってしまう春斗。


『べ、別に変えてほしいところなんてないよ。い、今のままで十分・・・』


『十分・・・何?』


『・・・・・。』


恥ずかしくて固まっている私の頬に春斗は優しくキスをした。


『本当は今日にでも押し倒しちゃいたいくらいだけど俺も男だ、我慢するよ。ここまでくるのに何年もかかったんだから大丈夫、また今日から新しいスタートだと思う事にする!』


これから先も春斗の発言や行動にはドキドキされっぱなしかもしれないけどきっと楽しい日々が待っていると思う。


屋上で雲一つない青空を見つめながら私達は子供の頃ぶりに手を繋いだ。

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