第1話 新学期、想像していた現実

「お兄ちゃん!!お・き・ろ!!りか姉ちゃんもおきて!!なんで2人とも新学期なのにはやく起きれないの?!」


「んー?あ、おはよななこ。てか、まだ7時だぞ。いつもより15分もはやいじゃん。」


「だから!新学期だって言ってんの!」


「新学期だからって騒ぐなよー。やっぱななこはまだまだ子供だな。今日から中3になるのにそんな事で騒ぐなんて。」


「はーホントうっざい!死ねくそアニキ!」


「そんな短気で、子供っぽいから胸も育たないんだよー。ほら見てこいよ、りか姉を。りか姉のはあんなに育ってるんだぞ。姉妹なんだから、もっと育つ素質はあると思うんだけどな。短気で子供っぽいところを直したら、りか姉のようになれると俺は思うけどなー。」


「まじで死ね!!!!」


ななこはまだ寝っ転がっている俺のお腹を蹴っ飛ばした。


「りか姉ちゃんもはやく起きてきてねー。」


ななこは痛みで悶絶している俺を無視して俺の部屋を出ていった。


俺の部屋とりか姉の部屋は薄い壁を挟んで隣に並んでいる。大きい声を出したら、隣のりか姉の部屋まで声が届くようになっている。ななこはリビングのソファが気に入っているらしく、自分の部屋は必要ないと言って、リビングを占領している。親は父はずっと単身赴任で、正月程度しか帰ってこない。母親はヨーロッパの有名企業の社長をしていて、日本に帰ってくることはほぼほぼない。母親が日本に帰ってきたのは5年前のことで、それ以来あっていない。親の収入がかなり高いため、一軒家で3人兄弟でなに不自由なく暮らしている。


俺は高2、りか姉は高3、ななこは中3で、俺とりか姉は同じ私立高校に通っている。家事は飯作りをななこ、洗濯と掃除を俺、りか姉はほぼ何も家事をしない。そういう家族構成になっている。


俺は朝飯を食べ、学校に行く準備をし、りか姉と一緒に学校に向かった。


「うわぁーやっぱ玄関のとこ人溜まってんなー。」

新学期の始まりといえばクラス替えがみんなの楽しみだろう。俺は人混みの中、背伸びをし、玄関に貼られたクラスの名簿が書かれた紙を覗き込む。

2年3組 担任 石上

1 相川 斗真

11  川端 龍平

12  北川 颯太

13  北村 美乃里

「俺は2年3組の12番か。」


俺はそう呟くと、横にいた女子がいきなり


「みんなー!!颯太くん2年3組だってー!!!」


と叫び出した。すると、3組の名簿が書かれた紙を見ようと、2年生全員が3組の名簿の紙の前に集まった。いや、全員ではない。あの女ただ1人だけは集まっていなかった。


「おっしゃー!!颯太と一緒なクラスだぜ!!」


「キャー!!私颯太くんと同じクラスだ!!」


「うわぁーいいなー!私1組だよ。最悪。颯太くんのいないクラスなんて人生の終わりだよ。」


俺はそんな声を聞きながら、影を潜めて校内に入ろうとするが、


「ねーねー!颯太くん!」


う、マジかよ。見つかっちまったよ。この一言でさっきまで3組の名簿の紙を見ていた2年生全員が俺の周りに移動してきた。俺はもみくちゃにされながら、この時が去る事を願い、無になって人混みに流された。先生がこれを危険と感じ俺以外の生徒を校舎に無理やり入れて、俺を1番最後に校舎に入れた。でも、俺は見ていた。あの女は俺がもみくちゃにされている最中に、スっと校舎に入って行ったところを。あーやっぱあいつの立場いいなー。俺はそう思いながら、心の中でこう叫ぶ。


「こんなみんなが憧れる超リア充ライフ、俺はこんなものいらねーんだよーーー!!!!!!!!」








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