世界の終わりで可愛いアンドロイドとなんだかんだのんびり暮らしてます

熊野こどう

第1話 光合成

ここ最近はずっと雨だった。


最新鋭の設備を備えたこのドーム型シェルターは外の天候を問わず快適に暮らせるようになっているが、そうはいっても長雨には辟易する。


「久しぶりに晴れたねー、おひさまの光が眩しいよー」


シェルターの天井から降り注ぐ日差しを浴びながら少女が言った。


「いまのうちに充電しないとねー、ごはんごはん〜♪」


そう言って彼女は頭の髪飾りを歯車タイプから、ソーラーパネルタイプに変える。

楕円形のソーラーパネルは小さくても高性能で、木漏れ日程度の日差しでも充分にエネルギーを補充することが出来るという。


「うーん。光合成、こーごーせー♪」


日差しに向かって伸びをしながら、気持ち良さそうにしている少女。

晴れの日の彼女の日課らしい。


「ねえねえ、こっち来て一緒にひなたぼっこしようよ?」


光合成からひなたぼっこに変わったらしい。植物から人間へランクアップしたようだ。


ぽんぽん、と自分の隣へと促す少女。


「ほら、今日の太陽はなかなか優秀でしょ?こんなに、あったかいんだから〜♪」


今日の少女はご機嫌らしい。

晴れの日でこんなに楽しそうにしてるのだから、太陽もさぞやりがいがあるだろう。






「ねえ、さっきから何ぽちぽち書いてるの?」

「あー、これはその記録だよ。生活記録。これから何が起こるにせよ記録は必要だと思うんだ。」

「なるなる、日記か。日々のあれこれを書いとくと後で振り返るときに便利だよね。ついったー的な。」


……ついったーってなんだ?


その説明はしてくれず、彼女はふんふーん、と楽しそうに鼻歌を歌っている。


こんなのんきな少女だが、これでもアンドロイド。

僕のシェルターでの生活をサポートしてくれる人ならざる存在。


らしい。


真っ白いワンピースに、腰まで伸びた長い髪。大きな瞳と長いまつ毛……可愛い人間の女の子にしか見えない。

髪と瞳の色が鮮やかな青色なのがアンドロイドの特徴らしいが……


正直、コールドスリープから目覚めて以来、少女以外の女の子を見たことがないからよくわからない。


眠る前の記憶は、いまひとつはっきりしない。

少女曰く、相当の時間眠っていたらしいけど……。


そもそも自分以外の人間はどれだけ残っているのか。


「気持ちいいねー」

大きなあくびをする少女。

ふわあ、と気持ち良さそうに伸びをする姿に思わずほっこりとした気分になる。

こちらもつられてあくびが出そうだ。



世界は終わってしまったらしいが、なんだかんだ僕たちは、のんびりと生きている。

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