二人の地獄が天国で
キャラメル伯爵
プロローグ
白い雲すら一切浮かんでいない快晴な青い空、輝く太陽からは暖かい日差しが地上に降り注ぐ。そんな天の恵みを彷彿とさせる太陽の下に、白く大きな一軒の家があった。
二階建の家の前には芝生と石造りの道があり、また玄関の傍にはブランコが提げられている。それは芝生を小さくざわめかせる風に揺らされてキイキイと微かな音を鳴らしていた。
家の中には真っ白く清潔なソファに大きなテレビ、広い磨き上げられたキッチンにはついさっきまで料理をしていた形跡がある。キッチンには窓があるので裏庭が見えた、そこにも短く切り揃えられた澄んだ緑の芝生が広がっており、それは木製の仕切りで囲まれている。そこには丸いテーブルが置かれ、上には色とりどりの料理が並べられている。フライドチキンやポテトサラダ、サンドイッチにパイまで。それら豪勢な料理はテーブルの中心辺りに並んでいるが、その周りには二人分の取り皿とナイフにフォーク。テーブルの傍には二つの椅子があるがその一つには少年が座っている。
短い赤毛の少年は少し高い椅子に座って足をぷらぷらと持て余し、テーブルではなく別の方向に目を向けながら楽しそうな雰囲気を表情から滲ませて彼女を待っていた。
彼の視線の先、そこにはバーベキュー用のグリルで肉や野菜を焼いている女性の後ろ姿があった。背が高く首のあたりまで切られた金髪はまばらに毛先を晒している。彼女は白いエプロンを付けて前を覆っているが、剥き出しになっている背中にはスリングで吊り下げられたライフルがある。
手に焼き上がった肉と野菜を載せた皿を持った女性は振り返り、少年に微笑みを向けてテーブルに皿を載せるともう一つの椅子に腰を降ろした。ガシャリという重々しい音と共にライフルはテーブル近くに立てかけられる。
女性が口を動かして少年に「どうぞ」と語り掛ける、すると少年は真っ先にサンドイッチを掴んで頬張り、あっという間に二つ食べ終えてしまう。そして女性に取り皿に盛ってもらったサラダを食べ、フライドチキンを手に取る。
そんな姿を見つめる女性は心の底から嬉しく、また満足といった笑みを浮かべる。それでもナプキンで少年の口に付いたポテトサラダを拭き取りつつ、口を動かして「焦らなくても大丈夫」と伝える。
多彩な料理で飾られたテーブルを囲む微笑み合う二人、その周りは日差しのおかげか白く眩い輝きを帯びていた。
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