ゾンダーコマンド


私には何ができるのだろう

鉄条網の壁に阻まれ


あなたはあちら私はこちら

その運命を握るのは奴ら


けれども私は思っています

少しでも生きる術を探して



収容所に入れられたあと

奴らは無力な私に命ずる


「俺達の“仕事”を手伝えば

少しは生き延びさせてやる」と


つまりそれはもしも逆らえば

『すぐにでもお前を殺す』ということ



  私には私の本能があり

  それは自分自身というものの

  内なる声を聞くことでしょう



けれどそれにしたって

立ち向かう勇気はありゃしない


そうです私は生きていたい

そんなちっぽけな自分です






それはどんな仕事なのかと

尋ねてみたりしたけれど


結局仲間を裏切れと

私は奴らに押し付けられた


自分の罪から逃れるために

奴らは私を利用したのだ



そして私は命と引き換えに

“悪事”を手伝うことを選んだ


恥辱と汚辱にまみれながら

生き延びることを選ぶしかなかった


逆境で自分がさらけ出され

生き恥と屈辱を飲み込むしかなかった



  私には私の命があり

  それはかけがえのないものと

  思うところから歩むのでしょう



けれどそれにしたって

私の心はいつまでもつのだろう


そうです私の精神は

擦り減り削られ無くなっていくでしょう




だけども今私は思っています

明日からもこうして裏切るだろうと

  

そして今私は思っています

私もそのうち殺されるだろうと



 

だからここに悪事のメモを残そう

きっといつか誰かが見つけるだろう


“無かったこと”にするつもりだろうが

私たちは確かに『存在』したんだ















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る