第4話
「え? 勇者ですか?」
「ああ、最近出かけてばっかりでな新しく召喚されたって言う勇者サマの事良く知らなくてよ。なんか知ってたらで良いんだが分かるか?」
俺は仲良くなったついでにルカに勇者について知ってる事を尋ねた。
「そうですね。私もそんなに詳しい訳では無いのですが確か7人の勇者様がいたような気がするような」
「その7人の勇者について何か知らないか? 例えば勇者の職業とか能力とか」
「ごめんね。私もそこまでは分からないの。知ってるのは勇者が7人いる事だけなの、ごめんね役に立てなくて」
「いや、十分だよ。ありがとうな」
とりあえず、勇者についてはまた明日にしよう。今日はいろいろと疲れた。
そして、俺たちは静かに眠りにつく......
“カラーン“ “カラーン“
「みんな起きろーー! ゴブリン共が攻めてきたぞーー!」
はずだった。外で見張りをしていた村人が突然大きな声と共に村中を回っていた。
聞く限りゴブリン達が攻めてきたとのことだ。本当にこれだからゴブリンは好きになれない。迷惑を知らないのか?
「ロトさんッ!?」
「とりあえず俺がゴブリン達の相手をするからお前たちは村人達を避難させろ」
「わ、分かりました」
俺は急いで装備を身につけて、教会の外に出た。
教会の外にはすでに沢山の村人達が集まって何やら話をしていた。
「あぁ。騎士様どうかこの村をゴブリン達からお救い下さい」
「「お救い下さい」」
多くの村人達が俺を囲むように近寄ってくる。本当、蒸し暑からやめてほしいぜ。
「分かったから、とりあえずお前たちは早く教会の中に入れ、絶対に出るなよ」
「ありがとうございます騎士様」
「「ありがとうございます」」
いちいち面倒くさい奴らだな、さっさと礼なんてせずに黙って入ってくれよ。
「ロトさん、みんな避難したけどこれからどうするの?まさか一人で戦う気!」
「当たり前だろ! お前は聖女らしくみんなを守ったり癒してやれ。
いや、今のお前は性女だったけ?」
「もーー! ロトのバカ! 何今変なこと思い出してるの、もういいから早く退治して」
「分かったよ。だからそんなに照れるなって。
じゃ頼んだぞ聖女と性女さん」
「お兄ちゃん頑張ってなの!」
「もーー!」
ー ひとまず村を一周してみたが、どうやらゴブリン達の目的は聖女は聖水では無く、普通に農作物を奪いに来ただけのようだった。本当、このサボりどもが仕事しろよ。
まぁとりあえず今は見えているゴブリンだけでも始末するか、悪いなゴブリンお前たちには罪はない、恨むならあの性女を恨めよ。
「【
「グァァァッ」
「誰だ!」
「ようゴブリンども今日ぶりだな」
「お前さっき森にいた奴か、お前らあいつを先に殺せ食料はその後だ」
「そうかよ、やれるもんならやってみろよ【
俺の固有魔法ストップにより俺の周辺にいたあらゆる物や生物の時間を一時的に止めた、もちろん俺は動ける。ただこの魔法で止めた物には触れることは出来ない為このままゴブリンを殺す事は出来ない。
しかし、ゴブリンを瞬殺出来るぐらいの距離まで移動する事は出来る。俺は短剣を取り出し一体のゴブリンのもとへ近づき
「動け!」
「グァァァッ」
「なんでいきなり
お、お前いつのまにそこに.....」
「【
「いたんだ、、、グァァァッ」
「な、何なんだよお前この村の奴じゃ無いな。誰だお前!」
「俺は国から派遣されたエリーート騎士だ。これ以上仲間を殺されたく無いなら今すぐ撤退しろ。これがお前たちゴブリンにかけられる最後の情けだ」
本当に撤退して欲しい、これ以上部下を殺すのは流石に悪魔の俺でも心が痛い。
するとなぜかゴブリン達は逃げる訳でもなく俺を囲うように集まった。すると、教会の辺りから悲鳴が聞こえてきた。
「騎士様ーー! どうかお助け下さい! ゴブリン達がき、教会を破壊しようと」
クッソ! そう言う事か、俺を足止めしてる間に教会を破壊する作戦か。コイツらも考えるようになったな上司としては嬉しいぞ。
だが死んでくれ。
俺の忠告を無視した以上、死ぬ覚悟は出来たという事だからな。俺は再び短剣を取り出し、魔法を使おうとした時だった。
「何だこれ?」
突然、地面に魔法陣のようなものが現れた。それも村をおおうほどの大きさの魔法陣だ。そして、教会の屋上付近から性女が何やら詠唱のようなものを唱えていた。
魔法陣、聖女、詠唱これはまずいな。ゴブリン達も何かを察したのか、死を覚悟した様な表情を浮かべていた。
「......魔物を滅ぼしたまえ【
ルカがそう言い終えると、地面の魔法陣が段々と光りだした。俺とゴブリン達はしばらく顔を見つめ合った。
そして、俺は最後にゴブリン達に笑顔でこう言い残した。
「ファイト!」
「グァァァァァァアア!!」
聖女の固有魔法によってゴブリン達が叫びを上げながら、身体中が蒸発されるように浄化されていった。
本当に可哀想なやつらだ。
ん?
なんだ? なんか体が焼けるように熱いような?光の熱のせいだろうか?
アッ! そうか、騎士として戦ってたから一瞬忘れかけてたけど
俺一応
本物の悪魔だったな......
「「グァァァァァァアア!」」
その夜、村中に響いたゴブリン達の叫び声の中に一人、騎士が混じっていた事に気づいたものはいたただろうか?
そして、聖女の固有魔法をまともに喰らった俺の体は今にも死にそうなくらい、ボロボロだった。もう身動き一つとれない。
「みんな集まれ! き、騎士様が重傷だ。ああ、騎士様こんなにボロボロになるまで戦って下さったのですね」
「よし! 急いで教会に運ぼう。急いで治療をすればまだ間に合うはずだ。聖女達よろしく頼む」
「ち、ちょっとロトさん? こんなにボロボロになるまで戦ってくれたの? ごめんなさい、私の準備が遅れたせいでもっと早く魔法を打ててたらこんなことには......」
なってたよ。なんなら俺がもっと早くボロボロになってただけだぞ、この人殺しが、いや悪魔殺しか。
倒れて動けない俺を二人の男達が教会まで運んでくれた。ただ意識を失う前の道中、最後に聞こえてきたのは......。
「お姉ちゃん、このくらいの傷なら聖水をかければ治ると思うの」
「確かに。あのボロ具合からして1Lくらいかければ多分、治るんじゃ無いかしら?」
俺の暗殺を企む二人の聖女の声だった。なぁゴブリン俺が悪かった、だから頼む俺を誘拐してくれ。
性女に殺されるーー!
ー 「あれ? もう動けるの? まだ6時間しか経ってないのに凄い回復力ね」
目を覚ますと俺は教会の部屋にあるベッドに横たわっていた。隣にはルカが看病してくれていたのか、何やらバケツを持っていた。
「当たり前だろ、回復力だけには自信があるんだよ」
にしても妙だな、あれくらいの傷なら1時間で治ると思ったんだがな。
「そうなんだ。いくら回復魔法をかけても治るどころか傷が広がってたから心配したんだよ」
おい、コイツまさか悪魔の俺に聖女の固有魔法で治療してたのか? そんなん逆効果だろうが、傷が広がって当然だ。
「てか、さっきから手に持ってるそのバケツ何だよ」
「ああ、これ? いや全然傷が治らないから本当に聖水でもかけようかなぁって思って1Lくらい用意したんだけど
かける?」
「い、い、いや遠慮するは。このくらいの傷ならほっとけばすぐ治る」
「フーン。じゃこの聖水もう使わないからしまうね」
ルカはバケツを持ち部屋を出た。良かった何とか命びろいした。もうすぐで性女にとどめを刺されるとこだった。
「【
俺は誰もいない事を確認すると固有魔法を使い傷のあった部分だけ、時間を1日前に戻し無傷の状態に戻した。
もう傷も治ったし、騎士らしく村の見回りでもするか。俺は机に置いてあった自分の装備を身に付けると部屋を後にした。ただなぜか俺の剣だけはなかった。
「あれ? もう怪我治ったの、本当に凄い回復力だね。今、剣を持って来るからちょっと待ってね」
「何で剣だけ別にしたんだよ」
「ちょっと汚れてたからキレイに拭いてあげてたの、感謝してよね。
はい、ロトさんの剣ですどうぞ......」
ルカは拭いたという俺の剣を大事そうに持ってくると静かに何かを話し始めた。
「ロトさん、あのこの剣ってもしかして......
いや、やっぱり何でもない! ごめんね変な事聞いちゃって」
「急にどうした? 昨日のゴブリン達に頭でもやられたのか?」
「違う! 何でも無いから気にしないで」
そうか、こいつは聖女だから俺の武器がどういう物なのか触っただけで分かるのか。ただ表情を見るにまだ確信は無いようだ。
まぁ何か聞かれたら上手く話をそらして、怪しまれない様にしないとな。
「そう言えば、昨日の村の被害はどのくらいだった?」
「ロトさんが時間稼ぎ......いや戦ってくれたので何とか被害も少なくて済みました」
何で言い直したんだ? 本当にただのおとりだったじゃねぇか俺。てか、思ったんだがコイツさえいれば別に俺いらなくねぇか?
「そっか、それはよかったな。で、ゴブリン達はどのくらいの頻度で攻めてくるんだ?」
「時間はバラバラだけど、だいたい毎日村を襲いに来てる感じかな?」
何だよ、案外しっかり働いてるじゃねぇか。
「なるほど、毎日襲いに来られたら大変だよな」
「この村もいつまで持つか分からないし、私達もいつ負けるか分からないの。だから今、村ではゴブリン達の住んでる森に入ってゴブリン達を全滅させようと計画を立ててるの」
「つまりあれか、ゴブリン達を皆殺しにしたいって事か」
「はい! あのゴブリンどもを一匹残らず皆殺しにします。ロトさんも協力してくれますよね?」
ルカは目をキラキラと輝かせながら、そんな物騒な事を言い出した。まぁどうせ準備に時間もかかるだろうし、途中で用が出来たとか言って逃げるか。
だって面倒くさいし。
「分かったよ。元々そのつもりで来てたからな協力してやるよ」
「ありがとう。じゃ、もうそろそろ出発するからロトも早く準備してね」
「え? 出発ってどこ行くんだ?」
「何言ってるの、さっき協力するって言ったでしょう。今日攻めに行くから準備が出来たら、外にみんないるからすぐにきてね。じゃ私先に行ってるから」
「......」
やっぱり今の無しで! と言える訳もなく、俺の作戦は一瞬で崩れた。
ー 「おぉ騎士様、もうお怪我の方は治ったのですか?」
「そんなのもう治ったよ。それよりお前ら今からゴブリンの隠れ家でも襲いに行くんだろ。だったら俺も手伝ってやるよ」
「そうですか、騎士様が手伝って下さるとは、何と心強い事か」
「騎士様! 何から何までありがとうございます」
「流石は騎士様です」
村長だけでなく、周りにいた大人たちまでもが俺の参戦を喜んでくれた。
「まぁそれはいいとして、一つ聞きたいんだお前らゴブリン達の隠れ家がどこにあるか知ってるのか?」
「そ、それは......。今から探しながら攻めに行こうかと思っていました......」
これは酷い。いくら相手がゴブリンだからとは言え森ではゴブリン達の罠も多い。作戦も無しに行けば間違いなく返り討ちにされるぞ。
「お前らいくらなんでも、ゴブリン達を舐めすぎだろ、ゴブリンも雑魚だけど馬鹿では無いぞ」
「大丈夫! もし何かあった時は私の魔法で森中の魔物共を浄化してやるから」
その魔物共に俺も含まれているんだからそれだけは辞めて欲しい。
しかし、こいつらは運が良いなぜなら俺はゴブリン達の習性も隠れる場所も全て知っているからだ。まぁゴブリンが嫌い過ぎて、無駄にゴブリンに詳しくなっただけなんだけどな。
「よし! お前ら俺に良い作戦がある耳の穴かっぽじって良く聞けよ」
そして俺は、今日まで命令に従って頑張って村を襲っていたゴブリン達を俺への反逆罪として法的に始末する事を決めた。
理由は簡単だ
気に触ったからだ!
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