〜Bell〜
@jonsenfun
第1話
ここ王都ゲルドには約500万体もの魔物達が住んでいる。皆それぞれ仕事をして生計を立ている。
この都市の他にも周辺には多くの町や村が立ち並んでいる。魔物と言っても種類は様々、まぁ簡単に言うなら人間以外の生物全てが魔物と言う訳だ。
そして俺はこの国で王の次に並ぶ権力を持つ幹部総司令の地位にある。幹部はゲルド王国の精鋭16体によって構成されている、俺はそこのリーダーのようなものだ。
ただ、魔物と言っても俺は悪魔の分類にある。この世界では人間以外の生物全てが魔物と呼ばれる。
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名前 ブロト 性別 男
レベル 683
種族 悪魔
幹部総司令
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この国も、もう設立1000年だ。その間特に何事もなく平和な日々が続いていた。今日までは......
〜【season1】1000年の恨み〜
「うぅ......」
俺はふと目が覚めた。別に誰かに起こされた訳でも無く、周りがうるさかった訳でも無い。朝になったから起きただけだ。
まぁ朝と言っても、もう9時過ぎだけど。俺は特に急ぐ訳でも無く私服に着替え装備を整えると、王都の中心にある城を目指し、築900年のボロボロの家を出た。
ー今日は珍しく天気予報が当たったのか、雲一つ無い快晴だった。どうせハズレると思い傘まで持ってきたというのに、ただの荷物になってしまった。
幸い町の奴らが半数以上、傘や雨具を持って歩いていたおかげで俺だけ目立つ事も無い。にしてもまさか、16日連続で外していたのに今日に限ってどうした? たまたま当たったのだろうか。
まぁそんな事はどうでもいい今日は王から呼び出されてたんだ、流石に遅れるとまずい急いで向かうか。
「おー。ブロトさんじゃないですか。今日も仕事ですか? 良かったらうちのパン買って行きませんか?」
俺が急いでいると、顔馴染みのあるパン屋の店主が話しかけてきた。この店主との付き合いも長いし少しぐらいなら大丈夫だろう。
「じゃ......。ログパン一つ頼む。
あっあとパセリは抜きだからな?」
「分かってますって。ログパンのパセリ抜きいっちょーー」
俺はパンを受け取ると料金を支払い再び走り出した。まだ急ぐ必要も無いが遅れると面倒なので少し走った。とりあえずパンでも食いながら行くか。俺らパンを一口食べると何か違和感を感じた......これは?
「クソッ、あの野郎パセリ抜きって言ったのに騙しやがったな。まぁいい、あとで誰かに渡すか」
俺が食いかけのパンを袋にいれポケットにしまおうとしていると、何やら俺を呼ぶ声がして来た。
「おー。ブロトさんいい所に、あの出来たらでいいのですが、このテーブルを家に運ぶのを手伝って貰えませんか?」
「......」
一応言っておくがこれでも俺はこの国のNo.2の権力者だ。それなのに街の奴らときたら、俺が近くのボロ屋で住んでいるからとか良くスーパーに並んでいるとかの理由で気軽に接してくる。
まぁこれはこれでいいんだけどな。
「分かったよ。今行くから待ってろ」
「ありがとうございます」
ヤバイ。そろそろ時間が怪しくなってきた。まさかテーブルがあんなに長いとは思わなかった。何だよ18体用テーブルって、いつ使うんだよ。
とにかく急がないとまずい。
「よぉブロト。そんなに急いでどうした?」
「ん? グーヴァか。悪いけど今急いでるから話は後だ」
「いや、まぁ別にお前の事だから察しとくは」
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名前 グーヴァ 性別 男
レベル463
種族 スライム
幹部一員
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グーヴァは見た目は人のようだが、中身はスライムだ。今はあいつと話している場合では無い。いくら幹部一仲が良いとはいえひとまず無視だ。
ー城の前に到着した。途中で腹が空いたので適当に屋台でりんごを買って腹を満たした。まだ満たされてないけどな。
とりあえず中に入るか。
城の周りには結界があり幹部の一員か王の許可ないと城には入れないようになっている。
「えぇっと確か。【
俺がそう唱えると、俺は門へ近づき結界をすり抜けるように中へと入って行った。そして中へ入るや否や俺は真っ先に王室へと向かった。
俺の時計ではまだ間に合っている。
王室へと着くと俺は両手で大きな門を開けた。門を開けると待ちくたびれたのか王が王座にも座らず立ったままでいた。
「おい! ブロト3分の遅刻だ。次は遅れるなと言ったはずだぞ」
「ゲルド様、でも俺の3分遅れの時計ではジャストなんですよ! それに3分ぐらい、いいじゃないですか」
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名前 ゲルド 性別 男
レベル 549
種族 邪神
国王
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この国の王はやたらと時間にうるさい。たった3分遅刻しただけでもぐちぐち言ってくる。ただ今日の王はいつもとは少し違った。
「まぁいい。今日はそれどころでは無い。この国の一大事だ」
「一大事? またゴブリン共が攻めてきたんですか?」
「それの何処が一大事だ。そんな事では無い。昨日、人間の国に偵察に行っていた、リーシェから伝言が送られてきた。それによると人間の都市付近で7つの光を見たと言っている。それも100年前のによく似た光だ」
「それって、まさか勇者?」
「恐らく、まだ確信は無いが可能性はある。それにその光を見たのは3日前と言っている」
「3日......。100年前に反乱が起きたのは確か光を確認してから3日後だったはず。つまり」
「今日。反乱が起きるかも知れん」
「しかし、こっちには人質がいますし、そんな簡単には攻めてこないでしょう」
「油断は出来ん。それに昨日から隣の街とも連絡が取れなくなっている。もう来ているやもしれん。お前は急いで皆にこの事を伝えろ。あと街の者には内密にしておけ余計な騒ぎは避けたい」
「うぅ......ん。了解」
俺はそう言い残すと幹部の皆んなにこの事を伝えるべく、急いで門を開け王室を後にした。
「わぁッ! びっびっくりしたぁ。ブロドさん、そんなに急いでどうしたの?」
門を開けるとすぐ目の前にティファが少し顔を赤くしながら立っていた。
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名前 ベル・ティファ 性別 女
レベル 34
種族 人間
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ティファはこの国で唯一の人間だ。それに俺達が人間達に反乱されない為の人質でもある。ティファは王族最後の生き残りでもある事から人間達は手が出せないのだ。
今では結構仲良くなりちょっとした友達のようなものだがな。まぁ記憶を改ざんした、だけなんだけどな。
「お前こそ何でこんな所にいんだよ。早く自分の部屋に戻れ、後で遊んでやるから」
「何その子供を相手にしてるみたいな言い方。私これでも、もう17なんだけど」
「1063歳の俺からしたら、お前は赤子も同然だ。分かったら早く戻れ」
「せっかく、最近仕事ばっかりで会えなくて寂しがってると思って会いにきてあげたのに」
ティファはそう言うと金髪の長い髪を右手で後ろに流しながら上目遣いでこちらを見てきた。俺も男だ久しぶりに会ったとはいえ、こう改めて見るとなんか照れる。
「別に寂しかった訳じゃ......」
「あれ? 顔赤いよ、もしかして照れてるの? 1063歳でも心はまだまだ男の子なんだね。嬉しいなら素直にそう言えばいいのに」
「分かった分かった。今本当に忙しいから、後でな」
「ふぅ〜ん。でもブロドさんいっつも『忙しい忙しい』って言ってるけど、いざ見に行くとすっごい暇そうにゲームばっかりやって......」
「うるせーー。こっちにも色々あるんだよ。いいから早く部屋に戻れ」
「はい。はい」
ひとまず、ティファが部屋に戻ったのを確認し、俺は屋上へとむかった。ここからなら国が一望できる。
この城には王とティファしかいないせいか、城の中はホコリだらけだった。
「【
俺は魔術を使い幹部の全員にテレパシーで話しかけた。これは相手が多少離れていても会話が出来る。
(ブロドさん? またゲームの話っすか? 自分今忙しいんで後にしてもらえます)
(俺もパスで)
(私、今取り込み中だからあとでお話しましょ?)
「違う! 今回は真面目な話だ。今、王から話があった、それによると今日、人間共が反乱を起こすかもしれないとの事だ」
(それって勇者が召喚されたって事っすか?)
「そうだ、だから今すぐ全員、防衛体制に移れ。いいな?」
((了解))
(あの。市民たちはどうします? 避難させますか?)
「まぁ訓練とだけ言っておいてくれ。大事になる前に片付けるぞ」
(了解)
とりあえずこれで、少しは安心出来そうだ。アイツらはこの国の幹部達だ、そう簡単に突破される事は無いだろ。ひとまず俺は街の周辺でも見回りするか。
“ドーーン“
俺が街中を見回りする為、城を離れようとした時、街の遠くから何かが爆発するような音が聞こえて来た。音のあった方を見るとそこには空を覆うように煙が立ち昇っていた。
確かあの場所は......。
街の正門だ。まさか、もう攻めて来たのか? 俺は急いで仲間に連絡をとった。
「【
(クッソ。人間共だ! 100人はいる。それに妙にレベルの高い奴らが6人もいやがる)
「勇者か?」
(わかんねぇ。とりあえず全員で相手する、何分持つか分からねぇ。増援を頼む)
「分かった。俺もすぐに行く」
まさかこんなに早く来るとは、だが相手は6人だ。全員で戦えば、勝てない相手じゃない。
“ピーー“ “ピーー“ “ヒナンシテクダサイ“
どうやら街の訓練用のアナウンスが流れたようだ。さっきの爆発で妙にクオリティが上がったが、これで街の奴らも避難してくれるだろう。
“ドーーン“
まただ、そろそろ正門組も限界か。俺もさっさと援護に行くか。俺は正門へと走り出した。
(ブロド。聞こえるかブロド)
「グーヴァ? どうした。お前も早く正門に迎えあそこもいつまで持つかわからない」
(違う! 良く聞けよブロド、アイツらの狙いは王だ。お前は急いで王室に戻れ)
「はぁ?どういう事だ」
(100年前に反乱が起きた時も狙いは王の命だった。今回もきっと同じだ。だからお前は早く戻れ)
「でも、お前達だけじゃ......」
(頼む。俺達を信じてくれ)
「でも......」
(早くしろーー。時間がない早く王室に入れ!)
「うぅ......。わかった。街はまかしたぞ」
(ああ、任せろ)
俺はきた道を戻り、王室へと向かった。この城の結界を破れるとは思えないが、王の側近として万一に備えなくてはならない。
俺は王室に向かう途中で一度ティファの部屋に向かった。こいつの部屋にも結界はかけてある、そんなに心配しなくてもいいとは思うが。
「ティファ入るぞ」
「えっ? ちょっと待って......」
俺が部屋に入ると、ティファは何かを慌てて隠した。
「ねぇ! 女子の部屋にいきなり入るって、どういう神経してるの? 少しは女心を......」
「今は国の一大事だ。人間どもが反乱を起こした。お前は何があってもこの部屋から出るなよ。いいな?」
「えっ! 人間......。う、うん分かった。ブロドさんは戦いに行かないの?」
「俺は王を守らなくちゃいけないから、戦いには行けないな」
「ふぅ〜ん。良かった」
「何か言ったか?」
「何でもない!」
「よし。じゃ反乱が治ったら伝えに来るからそれまで絶対に動くなよ」
「はい、はい、分かったから。早く王様の所に行ってあげて」
「じゃ、あとで」
俺はティファの部屋のドアを閉めると、急いで王室へと向かった。
王室に着くとすぐに王と目が合った。王は何かを察したのか、静かに語り始めた。
「何人攻めてきた」
「少なくとも100人以上の兵がいます。それに勇者と思わしき者が6人」
「なぜ、お前は戦いに行かない」
「奴らの目的が100年前と変わらないのであれば、狙いは王、あなたです。そして、我ら幹部の役目は王を守る事、側近なら尚更の事です」
「はぁ......。まさか、こんなにも早く攻めてくるとは、少し油断していたのかもしれん」
「今は自分と偵察中のリーシェを除く、全幹部達が街を守っています。その内、人間達も撤退していくでしょう」
「だといいな」
王はそう言うと、少しの間沈黙した。その間王室内では静かな時間が流れた。
あまりにも静かな時間が。
「妙だな」
「何がですか?」
「静かすぎる。いくら屋内とは言え、外で勇者と幹部達が戦っているとは思えないほど静かだ」
「確かに。もう決着が付いたのでしょうか? 一度、皆に連絡をとります。【
「ブロド! 街の様子を見てこい」
「ッ‼︎ はい」
俺は言われるがままに、王室を出た。王室を出てすぐ近くの窓から街の様子を見渡すと、まるで真夜中かのように静まり返った街があった。
ただ、いつもと違ったのは誰の魔力も感じられ無かったことだ。俺はその場に崩れ落ちた。魔力が無くなるそれが、どうゆう事だか知っているからだ。
魔物から魔力が無くなると言う事はすなわち死を意味する。だがおかしい人間達の放つ法力を感じられない。撤退したのか? 王を狙わずに撤退、一体何が目的だったんだ。魔物の命? 財産? 報復?
一体......。
「ッ‼︎
ティファ!」
忘れていた。人間共がこの国を襲うならまず、真っ先に人質を狙うはずだ。俺は万一に備えティファを王室に避難させる為、ティファの部屋へと急いだ。
「ティファ! 時間が無い。急いで王室に行く......」
俺がドアを開けるとそこには、もう誰もいなかった。また約束を破ったのかとも思ったが、そうでは無い事にすぐ気がついた。なぜならこの城からはさっきから法力が一切感じられない......。
ー「ん? ブロドか、街の様子はどうなっている?
、、、ブロド答えろ」
「王ゲルドよ。どうやら我々は人間共に負けたようです......」
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