第22話

 少しでも、彼の力になりたくて様子を伺ってみる。私を助けてくれたように、私も彼の力になりたい。


「ああ、もう! 君には何一つ、敵わないな……」


「オリヴァー……?」


 急に大きな声を出したので、びっくりして顔を見つめると、困ったような顔をしている。


「本当はさ、ユーフェミアの気持ちを知りたいし、こっちの気持ちを押し付けたくなんてなくて……要するに臆病になったわけだけどさ」


「うん」


「こんなところで、言いたくもなかったんだけど……さ……」


 言いよどむ彼に、こちらも緊張が増す。どんなことをいわれるのだろう、と不安も増し、怖くて仕方がない。


「あいしてる、ユーフェミア。ずっと、ずっと……出会った時から君は僕の心を明るく照らしてくれた。僕にとっても、俺にとっても、大事な人なんだ……口調を、変えて。自分を強く見せる必要があって、でもそれでも折れそうになる心を支えてくれたのはユーフェミアの存在だった」


 だから、と言葉を続けるオリヴァーに自然と涙が溢れる。泣くつもりなんて、なかったのに。


「俺と、結婚してください」


「わた、し……」


 うまく言葉が出てこない。傷痕は残らなかったけど、大怪我をして、とても迷惑をかけて。


「誓って、君を政治の道具にはしないし、絶対に幸せにする」


たくさん、伝えたいことがある。助けてくれてありがとうって、側にいてくれてありがとうって、ううん、何よりも私だってオリヴァーが好きだよって。


「わたしも、私も……オリヴァーが好き」


 言いたいことはたくさんあった。でも、それ以上のことを言葉にすることはできなかった。何かを言いた

くても、言葉にならなくて。


「大丈夫、ユーフェミア。君の気持ちは確かに伝わってきた。ありがとう、俺の気持ちを受け入れてくれて」


「オリヴァー……」


 狭い馬車の中で抱きしめ合い、互いの存在を確かめ合う。その温もりがひどく心地よくて。


「さあ、帰ろうね。俺たちの屋敷へ」


「うん」


 のんびりと馬車に揺られながら、私たちはお屋敷へ帰る。そのわずかな道のりでさえも幸せを感じて、嬉しい。


「まあ!」


「ただいま、オギさん」


出迎えてくれたオギさんに、手を繋いでいるのを見られ、照れ臭くもなる。しかし、オギさんは私たちの関係をとても祝福してくれた。


「ユーフェミア様、オギはとても嬉しく思います」


「ありがとうございます、オギさん。ちょっと、まだ恥ずかしいですけどね……」


 夕食も終わって何をしようかな、と迷っていると、オギさんが一緒に話をしてくれた。彼女から聞くオリヴァーの話が楽しみだった私にとって、楽しい時間。


 オリヴァーが苦しい思いをしたことを知っている、そんな彼女の話は、私の知らない時間を埋めてくれるから。


「オリヴァー様の願いが叶って、本当によかった」


「オギさん……」


オリヴァーが、ずっと私のために頑張っていてくれたことを、私は彼女の言葉で知る。思うようにいかなかったこともあっただろうに、それでも諦めないでいてくれたのだ。


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