グリスタス 

紅陽(くれは)

プロローグ


エネルギー問題が深刻化した人類は新たな生活圏を求め、衛星軌道上にコロニー建設を進めていた。


ある日、一つの巨大な隕石が墜落する。

それは地球に存在しない同位体構造にて形成されていた。

分析の結果、隕石に付着していた結晶から未知の波長領域による発光現象が観測され、それに伴い生じる波動から膨大なエネルギー反応が検出された。

それを期に新規エネルギー開発が計画されることとなる。


ある実証実験の最中、結晶体への過剰な負荷が原因で暴発事故が発生。

その代償として、地球の1/5が黒光に包まれる事態となった。

被災地に日光が差すようになるまで6日程かかり、また、事故発生時に検出された光帯は月の先まで届いたといわれている。

その現象に付随し、各地で謎の昏睡事件が多発したとの報告も受けており、その被害者達は脳細胞を著しく損傷していたため二度と目を覚まさなかったという。


それから4ヶ月の時が経ち、人類は選択を迫まれた。

あの黒光を受信し、地球外生命体が接触してきたのである。

大気圏を易易と突破した未知の来訪者達。

通常兵器が通じない彼らに人間はなす術もなく、世界は破滅と混乱で包まれる。

この未知の遭遇に対してただ分かっていることは、

まず、彼らの身体は視認が困難な程に漆黒である。

そして、個体から放たれる高周波は人体に有害であるにも関わらず、計器による観測が出来ない厄介なもので、まともに浴びれば精神が崩壊する。


国連軍の奮闘により彼らの撃退に成功するが、それはあくまで一時的なものだった。

度重なる消耗戦の中、兵力や物資は疲弊。

人類は住む場所を追われていく。


5年間の抵抗の末、各国政府により選民移住計画が発表された。

選ばれた人間と、人類史の成果物の一部を乗せられるだけ乗せて…。

衛星軌道上に建設途中のコロニーへ集められ、彼らは逃亡を開始した。

しかし、敵の勢いは何処へ行っても何度戦っても止まらない。

400隻程あった輸送船は次々と蹂躙され、

残ったのは僅か20隻、たったそれだけの命と申し訳程度の文明の利器だった。


それから約200年後…。

合流した逃亡者達は太陽系外宇宙の暗礁宙域にて巨大な居住型要塞船を建設し、新たな生活圏を確立した。

地球外重力に適応可能な強靭な肉体、人工重力による分子・物質変換及び農作技術、そして敵のコアによる新規機械制御システムの確立。


そう、人類は忘れ、新たな道へ進もうとしていた…。

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