いたずらがすぎるぞ神よ

 俺は女性が苦手だ。

 同じ空間にいようもんなら、緊張と気まずさで、寝られる気がしない。





 頭が痛い。

 いや、またか、とか言わないでくれ。

 確かに酒の飲みすぎはあるけど、これは寝不足によるものだ。

 案の定、あれから碓氷さんは俺の上に乗ったままで、そのまま朝を迎えたわけだ。

 こんな状態で寝るのは、俺には不可能に近い。

 カーテンから漏れてくる朝日が、目に染みて脳天に突き刺さる。

 しんどいわぁ。

 しっかし、なんでこんなに起きないんだよ。

 さっきは、すぐ起きてビンタ食らわせたくせに、今回はなぜこんなにも熟睡なんだ。

 くっそがぁ…。

 ……………おもt


「なんか言った?」

 ………おはようございますぅ。


 タイミング良すぎじゃないでしょうか?


「なんていうか、世界の全女子の危機を感じた」

 規模がでかい。

「とりあえず、殴っていい?」


 なんでお前が全女子の代弁者なんだよ。


 いや、あれは違う。その、あれだ。碓氷さんがどうとかって話ではなく、普通に考えて、人ひとり上に乗ってたら、それはそうだよねって話だよ。

「ふーん」


 碓氷さんはジトっとした目で俺を見つめる。

 なんで俺がこんな言い訳じみたことをせにゃならんのだ。第一、今もまだ俺の上に乗ってる碓氷さんも碓氷さんだと思うんだが?


「まぁいいや、寝よ」

 待て待て待て。どうしてそうなる。

「え~、いいじゃん別に」

 良かねぇよ。俺は授業があるんだ。

「サボっちゃおうよ~」


 なんて魅力的なお誘いなんでしょうねぇ。………はぁ。


「え?」


 俺は胸に顔をうずめている碓氷さんの頭に右手を、右肩に左手を回した。……………よっと。


「きゃあ!」


 俺は碓氷さんをひっくり返し、さっきまでの位置関係とは逆になった。

 いや、一応言っておくが、乗ってはないからね?

 碓氷さんは、びっくりしたのか、目を真ん丸にして、俺を見上げている。


「悠馬って、意外と力あるんだね」

 まぁ、一応男だからな。

「それはそうだけどぉ。悠馬ってホントにモテないの?」

 そこで嘘ついてどうする。

「ふーん、結構ポイント高いと思うけどねぇ」

 なんのポイントだよ。

「………濡れるわ」

 黙れ。

 女の子が(少なくとも男の前で)そんなこと言うんじゃありません。


 俺は立ち上がり、水を飲みにいく。

 碓氷さんの方を見ると、彼女はまだ床に横たわっていた。


 あなたは学校大丈夫なんでせうか?

「うーん、めんどい~」


 あー、これたぶんダメなやつだだ。

 まぁいい。俺がそこまで世話を焼く義理はない。

 くっそねみぃ。

 俺は、ふらふらになりながら、碓氷さんのや部屋をあとにした。(といっても、隣なわけだが)





 久しぶりだわ~、この味。

 俺は大学でエナジードリンクを飲んでいた。

 あんまり飲むことはないのだが、今日みたいに、どうしても寝不足で頑張らなきゃならないときは、仕方がなく飲んでいる。気休めかもしれないが。

 さーて、授業に行くか。

 あー、寝る気しかしねぇ。

 俺は体を引きずり、教室に辿り着く。

 教室の出入り繰り付近に、学生証をかざす場所があり、それで出欠をとるシステムだ。おっと。

 かざそうとしたら、ほかの人とブッキングしてしまった。


「すいません」

 いえ、こちらこそ。


 俺は、相手に譲ろうとした、時、


「あ」

 あ。

「悠馬じゃん!」


 ジーザス。

 目の前には、記憶に新しい女性が立っていた。

 いたずらがが過ぎるな神よ?

 俺は女性が苦手なんだよ。

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