俺は女性が苦手だ

しょうこう

絡んでくれるな後輩よ

 俺は女性が苦手だ。

 苦手と言っても嫌いというわけではない。

 男性のみの空間よりは、女性がいた方が華があると思うし、飲み会に女性を呼びたいと、人並みに思うこともある。

 しかし、女性と同じ場にいても、何を話していいかわからない。

 一応言っておくが、女性は好きだ。

 いや、言い方が悪い。

 好きになるのは女性だ。

 男性を好きになったことはないし、おそらく未来永劫ないだろう。

 所謂、ノンケというやつだ。

 自慢じゃないが、彼女がいたこともある。

 が、その時も結局どうしたらいいかわからなかった。

 そんなこんなで、大学3年生、20歳。彼女なし。





「先輩、何読んでるんですか?」

 ん。


 いや「ん」って。

 我ながらその対応はどうかと思うが、いきなり女性に話しかけられ、テンパったのも事実。俺は咄嗟に、読んでいた漫画の表紙を見せる


「へー」


 へーって。


朋弥ともやさんは何見てるんです?」


 俺への興味が秒で消えた。

 まぁ「ん」だもんな。


「ふふん、よくぞ聞いてくれました!これは日和ひより殿にもおすすめですぞ!」


 こいつは、不破ふわ朋弥ともや。ぽっちゃり体型で、偏見かもしれないが、見るからにオタクという感じだ。

 最初はこんな口調のやつが本当に現実にいるのか、とも思ったが、現に目の前にいるのだから信じるしかない。


「お、これ俺も好きだぜ!可奈子かなこちゃん出てるよな!」

「可奈子ちゃんって、辰義たつよしさんが好きな声優さんでしたっけ?」

「そう!八重原やえはら可奈子ちゃん!めっちゃ可愛いから!!」


 声優について熱く語っているのは、東城とうじょう辰義たつよし。これも偏見かもしれないが、高身長のイケメンで、オタクには見えない。

 今は三人できゃっきゃしている。

 青春してますなぁ。

 かくいう俺、国ヶ谷くにがや悠馬ゆうまは、一人でしっぽりと漫画を読んでいる。

 ここは、アニメ・漫画同好会というサークルだ。先程から楽しそうにしている紅一点は那智なち日和ひよりさん。このサークル唯一の女の子の一年生。金髪ショートで、こちらも(あくまで見た目的な意味で)アニメや漫画を見るようには見えない。

 他の男三人は同じ三年生。これがこのサークルのフルメンバーだ。

 以前は男三人で話したり、各々が好きなことをやったりして過ごしていたのだが、那智さんが入ってきてからというもの、俺以外の三人できゃっきゃすることが増えた。

 いや、寂しくないぞ?断じて寂しくなどない。


「このアニメのグッズはとても可愛いので、日和殿も是非!」

「ホントですか?じゃあ先輩一緒に行きませんか!」

 いやそこは朋弥たちと行けよ。

「…………」


 なんだその顔は。ってか急に俺に振るな。びっくりするだろ。

 那智さんは俺のことだけなぜか「先輩」と呼ぶ。

 他の二人は名前で呼ぶのに、俺は名字すら呼びたくないのだろうか。

 いやむしろ名前を知っているかも疑問だ。


「じゃあみんなで行きましょう」


 待て待て、なんでそうなる?

 そっちで盛り上がったんだから、そっちで行けばいいだろうに。なぜ最近の子は、そうみんなで行きたがるんだ。

 そういうノリにはおじさん慣れてないのよ。

 俺は女性が苦手なんだ。

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