第312話 魔剣解放
シューヴァルとの最後の勝負。
その瞬間が訪れた。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」
ガギン、という金属同士がぶつかり合う音が響き渡る。
魔剣と聖剣を重ね合わせ、魔力で俺を斬ろうとするシューヴァル。それに対し、俺は俺の持つ魔剣にありったけの魔力を込めてそれを受け止めた。
「俺の邪魔を――するな!」
「ぐっ!?」
ふたつの魔力で押し潰されそうになる――が、俺もここで負けるわけにはいかない。
「このっ!」
魔剣を振り、シューヴァルを弾き返す。
「バカなっ……」
すぐに体勢を立て直したシューヴァルであったが、信じられないといった表情を浮かべている。
それは恐らく、俺からの反撃が原因だろう。
確かに、さっきまでのシューヴァルの攻撃ならば、俺は今みたいに弾き返せないかもしれない。なのにどうしてそれが可能になったのか。
「これは……」
原因は俺の手にあった。
魔剣が輝いている。
これまでになかった現象が魔剣に起きていたのだ。
「ど、どういう――」
最初は戸惑った俺だが、この光には見覚えがあった。
そしてそれは……シューヴァルも同じだった。
「その光は……まさか……」
「ああ……その『まさか』だよ」
俺の持つ魔剣。
魔族六将のひとりである鉄塊のアイアレンとの戦闘で傷ついた魔剣は、鍛冶職人のメアリーさんによって復活した。
そう。
かつて、俺に剣術のイロハを叩き込んでくれた師であるロッドさんが扱っていたのと同じ剣だ。この剣の輝きは、まさに師匠が持っていたものと同じだ。
「師匠……」
決着をつけられなかった師匠の魂が魔剣に宿っている。
そんな気がした。
だとしたら、向こうが魔剣と聖剣の二刀流に対し、こちらは一本の魔剣でふたりの人間の魂が宿っている。
「す、凄い量の魔力です!」
「これが……魔剣の――いいえ、アルヴィンさんの本当の力……」
特に魔法を扱うシェルニとフラヴィアには、俺の魔剣に起きている魔力増大現象に気づいているようだ。
「ちいっ!」
シューヴァルは師匠の剣が放っていた輝きであることに気づくと、表情が変化。よほど師匠にいい思い出がないようで、魔剣と聖剣の放つ魔力を織り交ぜて解き放つ。
本来ならば、そのような魔力は防ぎようがないのだが、
「はあっ!」
メアリーさんが生み出したこの魔剣ならば、無効化できる。
「!? 俺の魔力が!?」
魔力を食らう剣――師匠の剣は、騎士団の人にそう呼ばれていたが……なるほど。確かんその表現はしっくりくる。覚醒した魔剣はシューヴァルの放った魔力を自らに取り込んだのだ。
それにより、俺自身の魔力が強化される。
「この力は……」
敵の力を自分のものへと変換できる力を持つ師匠の剣。
まさに魔剣封じのための魔剣ってわけか。
メアリーさんの考えつきそうなことだ。
「だ、大丈夫か、アルヴィン!」
「心配ご無用ですよ、ブライス王子。――今度こそ、終わりにします」
「ほざけ!」
本来の魔剣の力を解放させたことにより、シューヴァルの持つ魔剣と聖剣の力を封じ込める。
今度こそ……終わりにしてやる。
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