第238話 準備


 新作投稿しました!


「言霊使いの英雄譚 ~コミュ力向上のためにマスターした言語スキルが想像以上に有能すぎる~」


https://kakuyomu.jp/works/16816452220998947767


「ざまぁ」、「追放」からの逆転劇がお好きな方はぜひ!


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 フェリオが逃亡したと思われる大体の方角がハッキリしたところで、俺たちはそのあとを追うための準備をするため一度店へと戻った。


「おかえりなさい、アルヴィン」


 店先で掃除をしていたケーニルが俺を見つけて駆け寄ってくる。もうすっかり人間らしい仕草が板についたな。


「悪者は退治できた?」

「いや……これからが本番だよ」

「えっ?」


 キョトンとした顔のケーニル。

 他に留守番をしているシェルニとザラを呼び、店を臨時休業して作戦会議を行うことにした。



 作戦会議――と、言ってみたが、やることはタイタスの時と同じ。

 あの時はフィーユの件が絡んでいたけど、今回はそれが詐欺事件に変わっただけだ。


「つまり、悪者退治ですね!」


 精霊たちとともに瞳を輝かせているのはザラだ。

 うちでは最年少だが、精霊使いとしての実力は相当なもので、レイネス家の歴史を紐解いてみても、彼女のほどの使い手はいないらしい。

 戦闘面では魔人族のケーニル、ハーフエルフのレクシー、上級魔法使いのフラヴィアとうちは実力者揃いだし、サポート役にはシェルニがいる。


 このメンツならば、大体の相手は蹴散らせるだろう。


 タイタスの時は、カジノという巨大施設をアジトとしていたが、フェリオの場合は足がつかないように各地を転々としている。そのため、手下を多く従えてふんぞり返っているということではないようだ。


 フェリオはタイタスより頭が切れる。

 その点だけは要注意だな。


「出発は明日の早朝――今日の残りは準備時間だ。各自、派手に暴れられるようにアイテムを揃えておいてくれよ」


 俺がそう指示を飛ばすと、全員がそろって「はい!」と返事をくれた。

 さすがにもう慣れたのかな。



 準備が進んでいくと、すっかり夜が更けていた。


「ふぅ」


 俺はひと息つくため、店の中庭へ。

 厩舎にいる馬の様子をチェックしつつ、夜空を見上げた。


「おおっ! 奇麗だな!」


 満天の星空を目にして、感嘆の声が漏れる。

 すると、


「どうかしたんですか、アルヴィン様」


 シェルニがやってくる。


「いや、ちょっと休憩がてら星を見ていたんだ」

「星ですか?」

「ああ。こうやって、改めて見ると凄く奇麗な星空だったんだなぁって」

「確かに、アルヴィン様はいつもすぐに寝ちゃいますもんね」


 そう言ってほほ笑むシェルニ。

 ……思えば、最初は全然笑顔を見せなかったんだよなぁ。

 それから、


「なあ、シェルニ」

「はい?」

「そのアルヴィン様って呼び方だけど……」

「! い、嫌でしたか?」

「そうじゃないよ。ただ……お姫様って立場もあるし、一般商人である俺を君が『様』をつけて呼ぶのは……」

「アルヴィン様は私の命の恩人です! たとえ記憶を取り戻し、その結果、私が姫という立場であっても、それは変わりません!」

「シェルニ……」


 熱弁を振るうシェルニ。

 そこまで強く想ってくれていたのは、素直に嬉しいな。


「ありがとうな、シェルニ。――さあ、明日寝坊しないために、そろそろ寝ようか」

「はい♪」


 俺はシェルニと一緒に店へと戻った。

 こんなにも俺に対して信頼を置いてくれているシェルニのためにも……この町で悪事を働いたフェリオを許してはおけないな。

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