第222話 よみがえった聖剣
「ど、どうして……」
俺たち三人は困惑していた。
なぜリシャール王子がガナードの聖剣を持っているんだ?
「これは正真正銘、ガナードの持っていた聖剣だよ」
疑っていると思ったのか、リシャール王子はわざわざそう説明を付け足した。しかし、聖剣があるということは、
「ガナードは見つかったんですね?」
「救世主――いや、『元』救世主のガナードは未だに行方をくらましている。見つかったのはこの聖剣だけだ」
「えっ?」
「ど、どういうことですか?」
ザイケルさんが尋ねると、リシャール王子は聖剣を鞘へとおさめて語り始める。
「こいつがね、刺さっていたのさ。この城の外にある教会の十字架に」
「刺さっていたって……」
なんとも不気味な現象に、フラヴィアは息を呑んだ。俺とザイケルさんも、にわかには信じられなくて顔を見合わせる。
「驚くのも無理はないよ。この私でさえ、最初はイタズラを疑ったものだ。……だが、王家お抱えの鑑定スキルを持った賢者が、こいつを本物の聖剣と断定した」
「賢者……」
そういえば、と思い出す。
ガナードが持つ剣を聖剣だと世間へ公表したのはベシデル枢機卿だが、実際にその鑑定を行ったのは王国が誇る大賢者によって行われた。
その賢者の名は――
「ルーカス・マコーミック……」
「うん? 彼を知っているのかい? ――ああ、そうか。君も救世主パーティーの一員だったね。だったら、ルーカスとは面識があるだろう」
「いえ、面識はありません。ただ、名前と功績は耳に入っています。師匠がよく話していました」
「君の師匠……聖騎士ロッドか。確かに、彼とロッドのコンビは世界屈指の強さと言われていたらしいね」
それは救世主パーティーが結成される前の話だ。
聖騎士ロッドと大賢者ルーカス。
正直、このふたりの方がガナードたちよりも魔王を討伐できる可能性が高いと思う。
なぜそれが叶わなかったのか。
答えは師匠とルーカスさんがある理由から決別をしたからだと言われている。
だが、真相は不明。
俺もそれは聞きだせなかった。
というより、師匠はルーカスさんの話をしたくないという以前に、ルーカス・マコーミックという名を聞くのすら嫌がっていた節がある。
しかし、それが仲違いから来るものなのか、それともまったく別の要素が絡んでいるのかは最後まで分からなかった。
――奥さんのメアリーさんなら、何か知っているのかもしれないが。
「どうかしたかい?」
「っ! あ、あまりにも意外だったので、ついいろいろと考えてしまいました」
「ははは、無理もないね」
「それで、その剣は今後どうするつもりなのですか?」
俺が尋ねると、リシャール王子は「やれやれ」といった感じに肩をすくめた。
えっ?
何かヒントでもあったか?
「分からないかなぁ」
そう言うと、リシャール王子は鞘におさまったままの聖剣を掲げる。
「私が新しい救世主となるのだよ」
リシャール王子はそう宣言した。
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