第220話 謁見
女騎士ハリエッタの案内で、俺たち三人はジェバルト騎士団長の待つ部屋へと向かう。
その道中、
「ハリエッタ殿」
ひとりの若い騎士がハリエッタへ話しかけてきた。
「どうした?」
「ブライス王子を見かけませんでしたか?」
「何っ? またいなくなったのか?」
「え、えぇ……」
「中庭は調べたか? 特に花壇の周辺を」
「い、いえ」
「ならばそこにいるだろう。最近のお気に入りスポットだからな。それでも見つからないなら、副団長に報告しろ」
「はっ!」
ハリエッタの指示を聞き入れた若い騎士は、敬礼をして走り去っていった。
「すまない。こっちだ」
その後、ハリエッタは何事もなかったように進んでいく。
俺たち三人は困惑していた。
仮にも第一王子が行方不明だというのに、騎士たちのあの落ち着きぶりはどうだろう。ハリエッタの口ぶりから、王子がいなくなるのは日常茶飯事らしいが……それにしたって無関心すぎる気が。
「ここだ」
そうこう考えているうちに目的地へ到着。
ハリエッタに通された部屋のドアを開けると、そこにはジェバルト騎士団長――と、もうひとり、金髪の若い男性がいた。
大きな執務机に両肘を置き、こちらを見据える若い男性。
ジェバルト騎士団長はその横で直立不動。
その立ち位置から、両者の関係が透けて見えてくる。
……というか、あの金髪の男性……どこかで見たことがあるような?
「「…………」」
ふと視線をずらすと、ザイケルさんとフラヴィアの表情が固まっているのに気づいた。
そして、
「リ、リシャール王子……」
ポツリとこぼしたのはザイケルさんだった。
リシャール王子……ついさっきまで、その人の話題で盛り上がっていたけど、まさかご本人の登場とは。
「例のダンジョンで魔人族を見たんだってね?」
余裕たっぷりの態度で尋ねるリシャール王子。
その態度はまさに次期国王の風格を感じさせる。
心なしか、いつもヘラヘラしているジェバルト騎士団長も緊張しているように映った。
「は、はい。ダンジョン内で四人の魔人族と遭遇しました」
こっちまで伝わってくる緊張感の中、俺はダンジョン内で起きた出来事を事細かに報告していく。最初は特にリアクションも見せず、淡々と聞いている感じだったが、魔王軍の間で内紛が起きているかもしれないという話になると、一瞬カッと目が見開かれた。
「魔王軍で内紛……これは好材料だ」
「好材料?」
「あぁ、いや、それはこちらの――」
珍しく慌てた様子でジェバルト騎士団長が割って入るが、リシャール王子はそっと手をあげて下がらせる。
「ここから先の話は……ぜひ君たちにも聞いてもらいたい」
静かに、だけども力のこもった声で、リシャール王子は俺たちへと語る。
「そろそろ本格的に実行しようと思うのだよ――魔王討伐を」
思い描く計画を口にするのだった。
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