第187話 夕食は賑やかに
【新作をはじめました!】
異世界転生×スローライフ×いちゃいちゃ!
そして「ざまぁ」も……?
《無属性魔法って地味ですか? ~有能なのに「派手さがない」という理由で見捨てられた少年は辺境の領地で自由に暮らす~》
https://kakuyomu.jp/works/1177354055418261318
是非、読んでみてください!
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「いただき!」
「あっ! ケーニル! またお肉取ったわね!」
「早い者勝ちだよ~♪」
「何ぃ!」
「おふたりとも、食事中は静かになさい」
「「は~い……」」
いつも通りのやりとりを聞きながら、俺たちは夕食を楽しんだ。
特に、フィーユはうちみたく賑やかな食卓でご飯を食べるという経験がないらしく、終始ニコニコ笑みを絶やさなかった。
その話が出たタイミングで、俺はトーレス商会の話を振る。
「……そうですか。分かっちゃったんですね」
少し落ち込んだ口調で、フィーユは言う。ということは、ザイケルさんの情報通り、この子は大商人クラーク・トーレスの娘ってわけか。
「なぜ君は、あのダンジョンに?」
「それは……」
最初は言いにくそうにしていたフィーユだったが、これ以上の隠し事は難しいと判断したのか、ポツポツと語り始めた。
「私は……家を追い出されたんです」
「お、追い出された!?」
「それはまた穏やかではありませんね」
大商人の娘が追い出されるとは……理由としてあげられることといえば、親子関係の悪化ってところか。
「ご両親と何かあったのかい?」
俺が尋ねると、フィーユは小さく頷いた。
「父が……」
「お父さん?」
クラーク・トーレスとの間に何かあったのか。
「お父さんは……変わってしまいました」
「変わった?」
「以前はたくさんの人に商品が行き渡るよう、値段や品質にこだわっていたのに……今ではお金儲けを最優先に考えるようになって……」
「…………」
金儲けのために商売をする。
それ自体を否定するつもりはない。
――ただ、その目的を達成するために卑劣な手段を使うとなったら話は別だ。
そこを見極めないとな。
「……何か、非合法な商売に手をつけた、とか?」
「! い、今はまだしていません!」
今はまだ、か。
となると、そっちに手を染めるのは時間の問題っぽいな。
「私は何度も父にあの男との付き合いをやめるように言いましたが……聞き入れてもらえず、とうとう……」
そこから、フィーユは何も語れなかった。
「…………」
情報は彼女の証言のみ。
すんなりと受け入れるには少々心もとない。――が、
「「「「…………」」」」
女性陣の視線が俺に突き刺さる。
「助けてあげようよ」――無言ながら、全員がそう思っているのだろうなというのはその目力で伝わって来た。
唯一、冷静に物事を判断できるフラヴィアだが……ダメだ。自分ではキリッと引き締めた表情をしているつもりなのだろうが、目が潤んでいる。恐らく、フィーユの境遇が、シェルニとかぶって見えているに違いない。実の妹のように溺愛しているシェルニが絡んでくると、フラヴィアは途端に冷静さを失うからなぁ。
……まあ、俺としてもこのまま見過ごすというのは避けたいと思っていた。
キースさんクラスの大商人が非合法な商売に手を出す――その行為が与える影響力は計り知れない。
とりあえず、そのクラーク・トーレスという人物に一度会うだけ会ってみようかな。ネームバリューは違うけど、同じ商人だ。話す内容は山ほどある。
「よし! 明日は臨時休業! みんなでクラーク・トーレスところへ行くとするか」
「「「「「おぉー!」」」」」
フィーユは「え? え?」と動揺しているが、こちらは全員気合十分だ。
悪徳商人になりかけているというクラーク・トーレス……一体、どんな人物なのだろうか。
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