第183話 息抜きにダンジョンへ
レクシーからの提案をきっかけに、俺は久しぶりにダンジョンへと潜ることにした。
その場所は、魔族六将のひとりだった深緑のレティルが攻めてきた、あの未知のダンジョンに決定。
未知のダンジョン――と、俺たちはかつてそう呼んでいたが、今はザイケルさんを中心とする調査チームの解析が出回っている。そのため、以前のようにおっかなびっくり調査する必要がなくなった。
と、いうわけで、最初期に調査へ乗り出した俺たちにとってはなんともありがたいマップを片手に、早速潜っていく。
その途中で、
「お? 今日は久しぶりに店主自ら出陣か?」
「華やかなパーティーだなぁ」
「頑張れよ~」
店の常連冒険者たちに声をかけられた。
表情は晴れ晴れとしていて、緊迫した様子は見受けられない。
これもマップができたからかな。
妙なトラップがあっちこっちにあったけど、それもいろいろ検証してデータを載せている。本来なら、この貴重なデータを自分ひとりで独占しようと思いがちだが、共有してしっかり稼いで来いと背中を押せる辺りが、ザイケルさんの人望の暑さにつながっているんだろうな。
「うぅーん……」
ダンジョンに入るなり、俺は伸びをして体をほぐす。
最近は鍛錬以外、ずっと店番だったからなぁ。
ちょうどいい息抜きになるよ。
「さあ、こっちよ!」
普段からダンジョンに通い慣れているレクシーとケーニルはサクサク進んでいく。
その道中、モンスターが出現。
しかし、パーティーの女性陣は誰も取り乱すことなく、見事な連携で次々と撃破していった。
もちろん、俺も戦う。
威力を抑え、以前のように何も気にせず振れるようになるまで。
そして、ドロップしたアイテムは店の商品にする。
まさに一石二鳥だ。
「新しい魔剣、だいぶ馴染んできましたわね」
「ああ。――なあ、フラヴィア」
「? なんですの?」
「さっきはその……すまなかった」
俺が謝ったのは店での態度。
思えば、最近の俺は少しイライラしていた。
魔剣の扱いや、ガナードたちのその後――心に余裕がなかったのだと思う。だけど、みんながここに連れて来てくれたおかげで、本当に気持ちが楽になった。
「それとお礼を言いたい。ありがとう」
「お礼なら、わたくしだけでなくみなさんに言いませんと」
そう語ったフラヴィアの視線の先には、ダンジョン内を流れる川ではしゃぐシェルニたちの姿があった。
「ああ、そうだな」
改めて、お礼をしなくちゃな。
俺はそう思って、フラヴィアと一緒にみんなのところへ向かう――と、その時、
「あれ? あそこに誰かいますよ?」
ザラが何かを発見したらしく、遠くを指差しながらそう言う。
「ど、どこですか?」
「もしかして、モンスター?」
「だったらあたしたちでぶっ飛ばさないとね!」
シェルニ、ケーニル、レクシーの三人は意気揚々とザラの指差した方向へ視線を向けた――が、そこには想像とはまったく違った光景が広がっていた。
「お、女の子?」
「なんだか慌てているようですが……」
少し離れた位置から、俺とフラヴィアは第一印象を語る。
まあ、ダンジョンに女の子がソロで潜るってことはなくはないけど……年齢が若すぎるな。シェルニと同じくらいか? おまけに、装備も万全とは言い難い。
そんな少女の背後から、
「グオオオオッ!」
モンスターだ。
あれはゴーレムのようだな。
「! あの人! 追われているみたいです!」
「よし! 俺が行こう!」
「わたくしも行きますわ!」
シェルニの叫び声と共に、俺とフラヴィアは追われている少女を目指して駆けだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます