第178話 荒野の農場
ドルー&スヴェンさんとの再会を果たした後、彼らが抱えているトラブル――人に危害を加えるモンスターが出現したので、その討伐と荒野で育てたという野菜をチェックするために再びデザンタとの決戦の地を訪れた。
「……こうして改めて訪ねると、あの頃とはまったく違う風景に見えますわね」
「ホントねぇ」
小高い丘の上から、戦いの舞台となった砂漠を見回すフラヴィアとレクシー。
……確かに、あの時は魔族六将のひとりである砂塵のデザンタを相手にするということで、景色なんかそっちのけだったからな。
メンバーで唯一初めて訪れるザラは、シェルニとケーニルからいろいろとレクチャーを受けていた。
「あの辺で私はアルヴィンに倒されたんだ!」
「あれは凄かったですよねぇ」
「うぅ……私も一緒に行きたかったです……」
盛り上がる女子三人。
はたから見ていると本当の姉妹みたいだな。
「相変わらず、女性陣と仲が良さそうで羨ましいよ、アルヴィン」
「そ、そうですかね」
手近な岩場に腰かけて、のんびりとコーヒーを飲みながら、スヴェンさんがいきなりそんなことを言う。
「そういうスヴェン殿こそ、村の女の子のいい雰囲気ではなかったですかな? 確か、ポリーという名前の」
「! おまえ……見ていたのか」
人をからかうことができるなんて……ドルーも成長したものだ。
その後も世間話に花を咲かせる俺たち。
話題は自然と救世主ガナードのことになった。
「そういえば、あの救世主様は修業の旅に出たみたいだな」
「えっ?」
スヴェンさんからもたらされた情報に、俺は驚いた。
あのガナードが修業?
にわかには信じられないな。
「それは公式の発表ですか?」
「ああ。先日、モンスターの件を騎士団に直接訴えようと王都に行ったんだが……どこへ行っても、その話でもちきりだったよ」
「そうですか……」
公式の発表ということは……ベシデル枢機卿が手を回しているってことか。
……そりゃあ、数万分の一の確率でガナードが心を入れ替え、真摯に聖剣と向き合おうとして旅に出たっていう説もなくは――やっぱりないかな。
となると、ガナードの修業の旅というのは何かを隠すための嘘。
あるいは――ガナードが不在という点だけは正しく、その理由付けのために修行の旅なんて話を持ち出してきた、だ。
そう考えるのが妥当か。
まあ、そっちはそっちで好きにしてくれ。
アイアレンを撃破し、シューヴァルが姿を消して以降、魔王軍もすっかり大人しくなったみたいだし、このままこっちの世界への侵攻をやめてくれたいいのだが。
「さて、そろそろ出発をしますか」
「あっ、そうだね。おーい、そろそろ出発しようか」
ドルーに言われて、俺は辺りを散策している女性陣を呼び集める。
それから一時間ほど馬車で進み、たどり着いたのがスヴェンさんとドルーが管理する荒野の農場だった。
「おお! 広いですね!」
「ここでは主にジャガイモとカボチャを作っています。一般的な品種とはだいぶ違いますが、味は保証しますよ」
「あとで吾輩が料理ますので、是非食べてみてくだされ!」
「それは楽しみです!」
俺だけでなく、他のメンバーも砂漠に育った野菜に興味津々といった様子。
畑を眺めていると、
「む?」
気配を感じた。
この農場周辺に……何かがいる。
――どうやら、俺だけじゃなく、他のみんなも気づいているようだな。
「……スヴェンさん」
「うん? どうした?」
「ちょっと……食前の運動をしてきます」
到着して早々だが、早速仕事に取りかかるよとしよう。
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