第156話 再出撃
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「マイホーム・ドラゴン ~手乗り霊竜とその孫娘を連れて行く自由気ままな冒険譚~」
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よろしくお願いします!
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ジェバルト騎士団長の協力により、俺たちは改めて鉱山攻略に乗り出すこととなった。
ただ、ひとつ驚いたことがある。
「えっ? 氷雨のシューヴァルが?」
「ああ。こことは正反対の領地だけどね」
魔族六将のひとり……氷雨のシューヴァル。
バケモノじみた強さを誇った師匠でさえ倒せなかった相手。
「君としては、師匠のリベンジマッチを挑みたいところだろうけど――」
「いや、俺は目の前の敵と戦います。こっちの鉄塊のアイアレンだって、因縁のある相手です」
とはいえ、俺と直接因縁があるってわけでもない。
自然と、俺の視線はザラを追っていた。
あの子の父親にしてこの地の領主――レイネス家当主を救うのが、今の俺に課せられた務めだと思う。
「それを聞いて安心したよ。迷いもなさそうだしね。ああ、ちなみにシューヴァルの方は救世主ガナード殿のパーティーが向かっているはずだ」
「ガナードが?」
正直、無茶ぶりもいいとこだが、砂塵のデザンタ討伐はガナードの手柄になっているため、国としては当たり前の判断になるか。
「国家の期待度としては救世主パーティーの方が高いのだろうけど、僕は君たちの力も高く評価しているよ」
「ありがとうございます」
「うんうん。共に頑張ろうじゃないか!」
ニコリと微笑むジェバルト騎士団長。
……なんだろうな。
この人の笑顔ってなんか怪しい。
今のところは特に不審な動きを見せてはいないが、油断禁物だ。パーティーのメンバーではフラヴィアも言い知れぬ不信感みたいなのがあるらしく、今もシェルニたちと楽しそうに話をしているが、警戒を怠っていない。全身をまとう魔力がピリピリしているからすぐ分かる。
さて、どうなることやら……。
◇◇◇
ジェバルト騎士団長の提案により、放置されたテントを再利用して騎士団は戦いの準備を進めていった。
まず、三百の兵をいくつかの隊に分け、うちひとつを先遣隊として送り込む。雑魚モンスターを倒しながら道を作り、そこをあとから俺たちが通って、ボスであるアイアレンのもとを目指すという段取りとなっていた。
「いくぞ! 俺に続けぇ!」
先遣隊を率いるベテラン騎士のアントニオさんの雄叫びがこだまし、それに引っ張られる形で他の騎士たちの戦意も高まっていく。
その勢いは決して格好だけではなかった。
さすがはエルドゥークの騎士たちと唸るほど、彼らは戦い慣れており、序盤の雑魚モンスターをどんどん狩っていく。
俺たちは直接現場にいたわけではないが、伝令として送られた兵士から「順調に進んでおります!」という自信に溢れた報告を聞いたので、戦況を知ることができた。
「じゃあ、そろそろ第二陣行ってみますか」
ジェバルト騎士団長はそう言って、補給アイテムを持たせた第二陣を送りだす。
「頼んだよ、エリシオ」
「お任せください」
第二陣を指揮するエリシオさんは先ほどのアントニオさんとは正反対で物静かながら内に秘めた闘志を感じさせる人だった。
「次の第三陣は僕が直接指揮を執る。君たちもそろそろ準備を万全にしておいてね」
「分かりました」
いよいよ、か。
準備を整えるよう言われたが、こちらはすでにみんな臨戦態勢に入っている。
その中でも、まだ少し顔が強張っているザラに、俺は声をかける。
「大丈夫だ、ザラ。君のお父さんは必ず生きている。絶対に救出しような」
「はい!」
ザラの瞳に強さが戻った。
彼女の周りを浮遊する精霊たちも、これでようやく落ち着いたみたいだ。
「さあ、そろそろ僕らも行こうか」
ついにジェバルト騎士団長からGOサインが出た。
「行きましょう、アルヴィン様!」
「今度は昨日みたいに行かないからね」
武器を手にしたシェルニとレクシーが俺の腕を引く。
「早く行こうよ♪」
その後ろから、ケーニルが背中を押してきた。
「まったく、これから敵陣に乗り込むというのに……相変わらず緊張感のない人たちですわね」
呆れたように、だけどどこか嬉しそうに、フラヴィアが言う。
これでいいんだ。
これが俺たちなんだから。
それじゃあ、行くか。
鉄塊のアイアレンとやらの顔を拝みに。
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