第152話 新パーティー結成
「お父様!!」
スミスさん宅を訪れたザラは開口一番父を呼ぶ。
――が、当然、応答はない。
「うぅ……」
涙ぐむザラを見かねて、俺はそっと声をかけた。
「ザラ、大丈夫か?」
「はい。――って、アルヴィンさん!? それにみなさんも!? どうしてここに!?」
突然現れた俺たちに混乱するザラ。
おまけに魔人族のケーニルまでいたものだから大パニック。
ひとまず、呼吸を落ち着かせてから改めて話を進める。
「じゃあ、お父様の安否は……」
「今のところ不明だ」
「そんな……」
「とにかく、俺たちは明日改めて鉱山を調べてみようと思う」
「私も行きます!」
間髪入れずに同行を希望するザラ。
父親のことが心配だという気持ちは分かる。
だが、さすがにザラを連れていくのには抵抗があった。何せ、シェルニよりも年下だからなぁ。
もちろん、彼女が精霊使いとして相当な実力の持ち主というのは理解している。
でもなぁ……。
俺が思い悩んでいると、ザラの背後から四人の精霊が姿を現す。全員が手乗りサイズなのだが、それぞれがとてつもない魔力を秘めた精霊だ。
「アルヴィン殿! ザラを連れて行ってはくれないか!」
白髪に白髭のグランは大地の精霊。
「お願いします!」
水の精霊アクアムは、以前一緒にダンジョンへ潜ったこともある。
「俺からも頼むぜ!」
炎の精霊フレイは深々と頭を下げていた。
「あたいたちが協力して守り抜くから!」
風の精霊ウィンドも力強くそう語る。
ザラを守る四人の精霊たち。
確かに、彼らが協力をしてくれるというなら、これほど心強いものはない。――が、だからといってザラを連れていくのは別問題だ。
精霊たちには悪いが、ここはキッパリと断ろう。
そう思って、話そうとした時、ふとシェルニたちの顔が視界に入った。
「「「「…………」」」」
シェルニもフラヴィアもレクシーもケーニルも……俺がザラをここへ置いていくと判断したって分かっているようだ。それでも、涙目になって一緒についていきたいと訴えるザラを前に、心が揺らいでいる――そんな表情だった。
「……はあ」
参ったな。
これじゃあ断りづらい……。
「アルヴィン様」
悩む俺に声をかけたのは、クリートさんだった。
「お嬢様を同行させてもらえないでしょうか」
「えっ?」
意外な提案だった。
てっきり、クリートさんは反対派だと思ったが。
俺が呆然としていると、クリートさんは苦笑いを浮かべながら話し始める。
「私がこう言うのは意外でしたかな?」
「え、えぇ」
「お嬢様が連れている精霊たちが強いというのはありますが……あなたなら安心して任せられるのですよ」
えらく信用されているようだな。
しかしまあ、その言葉で吹っ切れた。
今度の敵はきっと一筋縄ではいかない。
だから、俺のひとりの力ではなく、みんなで協力して戦う必要がある。
それに、今回の敵である鉄塊のアイアレンを倒せば、残りの魔族六将は三人。半分を倒したことになる。となれば、魔王軍の戦力も大幅に減少するだろう。
「分かりました。ただし、ザラ」
「な、なんでしょう……」
「危険な行動はしないように」
「っ! は、はい!」
うん。
いい返事だ。
とりあえず、元気だけは負けていないな。
「よし! じゃあ早速明日に備えるとしよう!」
俺がそう呼びかけると、全員が「おお!」と威勢よく返事をする。
――これで、パーティーは完成した。
俺、シェルニ、フラヴィア、レクシー、ケーニル、ザラ……この六人で、魔族六将を倒す。
決して不可能な話ではない。
それぞれの力量は、タイタスやフェリオよりも上だ。
そう考えると、俺たちは救世主パーティーよりも強いかもな。
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