第151話 やって来たのは……?


 新たな魔族六将――鉄塊のアイアレン。


 生き物を金属に変えてしまう能力を持った魔人族のようで、地質調査に来た者たちはそのせいで銅像へと変えられてしまった。


 しかし、ケーニルによると鉱山周辺に魔人族の気配はないという。

 逃走したのか……或いは、あの場を離れ、もっと奥地に拠点を築こうとしているのではないか。ここは大陸でも最大クラスの鉱山地帯だからな。金属絡みの能力を扱うヤツからしたら、これ以上ない好条件がそろった場所だ。


 俺たちは一旦テント群を離れ、一夜を過ごしたレオルへと戻ってきた。


 ただ、気になるのはレイネス家当主の行方が分からないこと。

 クリートさんやレオル町長のスミスさんはそのことがとても気になるようで、落ち着きのない様子が続いている。


「レイネス家の当主様が行おうとしていた地質調査……あれの原因は魔族六将が起こしたものだったのか」

「しかも、ご当主はそれが魔族六将の仕業であると勘づいていて、アルヴィンさんに依頼をしてのですわね」

「そ、そういった案件は、王都の救世主殿に頼むべきでは……?」


 事情を知らないスミスさんは、俺とフラヴィアを不思議そうに眺めて呟く。どうも、当主からは俺たちについて「凄く強い者」くらいの説明しかなかったらしい。

それを見たクリートさんがいろいろと解説を入れてくれたおかげで、レオル町長の瞳はドンドン輝いていった。


「そ、それなら! 領主様を救ってください!」


 涙を流して懇願するスミスさん。

 もちろん、俺たちは最初からそのつもりだ。


「安心してください。みんなを救うために、俺たちはできることを全力でやります」


 ケーニル曰く、銅像にされた人間は死んでいるわけではないという。そうなると、元に戻す方法は術者を倒すこと――つまり、魔族六将のひとり、鉄塊のアイアレンに勝たなくてはならない。


 それに……ガナードたちは当てにならないだろう。

 あのリュドミーラって子は相当な使い手のように見えたが、タイタスとフェリオは相変わらずだし、肝心のガナードは聖剣の力を生かしきれていない。

 というか、明らかに弱体化しているような……まあ、仮にそうだとしても、あいつらのバックにいるベシデル枢機卿は表沙汰にしないだろう。あらゆる手段を講じて情報漏洩をねじ伏せるはずだ。


 だけど、そうなると悲惨なのはガナードを英雄視している者たちだ。

 聖剣使いであるガナードの穴埋めが務まるとは思えないが……さっきスミス町長に言ったように、できることを全力でやるまでだ。



 それから、俺たちは作戦を練ることにした。

 ケーニルからの情報では、テント群の近くに魔人族の気配はないという。そこで、銅像化してしまった人たちを村へ移動させることにした。

 テントで発見された銅像は全部で十体。

 まだまだ多くの人がこの調査に参加していたそうなので、その他は鉱山奥地に残されている可能性が高い。

 その中に、レイネス家当主も入っているはず。


「作戦としては……やはり正面突破しかないのでは?」


 フラヴィアの提示した作戦――と、呼べるかどうかも分からない真っ直ぐなものだが、正直、俺もこれ以外に思いつかなかった。シェルニ、レクシー、ケーニルの三人も同じようだし、真正面から突っ込んでみるか。


 やるべきことが形になったな――そう思った時、


「アルヴィン様!」


 クリートさんが俺たちの部屋へとやってきた。

 それも、かなり慌てた様子で。


「ど、どうかしたんですか……?」

「……いらっしゃいました?」

「いらっしゃった? 誰がです?」

「ザラお嬢様です!」

「「「「!?」」」」


 ケーニルを除くメンバーは全員驚きでイスから立ち上がる。

 ……まずいことになったぞ。



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