第144話 そして再び日常へ
シェルニを連れてダビンクへと戻った俺たち。
国王夫妻やコナーをはじめとする騎士団の面々、そして多くの国民に見送られながら、シェルニはさらなる成長のため、俺たちと同行する道を選んだのである。
また、今回の件でひとつ商談がまとまった。
俺がこのローグスク王国に来てから目をつけていたレアアイテムたちだ。
どうやら城近くにはダンジョンがあるらしく、そこで手に入れた物らしい。ただ、そのダンジョンへの道は険しいため、国王は国家をあげて整備し、冒険者たちを招き入れて経済の活性化を目指すのだとか。
微力ながら、俺もその計画に参加することとなり、今後もローグスク王国には定期的に使者を介して交流を続ける予定でいる。
何はともあれ、いつもの平穏な日常が帰ってきた。
まあ、冒険者としてダンジョンへ潜ることもあるだろうから、平穏という表現は適切でないかもしれないが……。
「えいっ!」
「はあっ!」
シェルニとフラヴィアの活躍を見ていると、ダンジョンへの恐怖心とかなさそうだし、何より、
「凄いです、フラヴィアさん!」
「あなたも成長しましたね、シェルニさん」
「えへへ~♪」
とても楽しそうにしているからいいや。
「お疲れ様、ふたりとも」
「アルヴィン様!」
「どうでしたの?」
「戦果は上々。それと、出会った冒険者たちには店のことをしっかり伝えてきたよ」
ローグスク王国から帰還して一週間。
今、俺たちはダビンクの北門から真っ直ぐ進んだ位置にある新しいダンジョンへ潜っている。
ここは魔族六将のひとり、深緑のレティルが出現したダンジョンだ。
レティル討伐後、ギルドの支配人であるザイケルさんが大勢の冒険者たちを引き連れて調査を行った結果、特に問題となる点は見当たらなかったということだったので、数日前から開放されていたのだ。
「たくさんアイテムが取れましたね!」
「本当ですわね。ストレージ・ブックがすべて埋まっていますわ」
フラヴィア曰く、戦利品収納アイテムであるストレージ・ブックはもう限界に達していたらしい。
まだ本のストックはあるが、店の商品にする物はこれくらいでいいかな。最近新たにローグスク王国が取引先になったけど、それ以外にもネモやオーレンライト家が紹介してくれた商会などからアイテムを格安で仕入れることができているから、躍起になってアイテム収集をする必要がなくなった。本当に、ありがたい限りだよ。
「なら、今日はこれで切り上げるか」
「分かりました!」
「帰ってお風呂に入りたいですわ。シェルニさん、一緒に入りましょうか」
「はい♪」
こうして見ていると、本当の姉妹のようだな。
ほっこりとした気分に浸りつつ、俺たちはダンジョンをあとにした。
◇◇◇
「おかえりにゃ! 今日もお疲れ様にゃ!」
ダンジョン帰りにギルドへ立ち寄ると、真っ先にリサからねぎらいの言葉をかけてもらった。
「これ、クエストにあった数の魔鉱石と薬草だ」
実はこっそり受けていた採集クエストの結果を報告する。と、リサは「さっすがはアルヴィンにゃ!」と満面の笑みを浮かべながら、俺がカウンターに置いた麻袋の中身を確認し始める。
「確かに! これでクエストは達成にゃ!」
よしよし。
これで報酬はゲットだな。
「相変わらず絶好調のようだな、アルヴィン」
俺が報酬の受け取り手続きをしていると、ザイケルさんがやってきた。
「おかげさまで、うまくやれていますよ。シェルニも無事にこちらへ腰を据えることができましたし」
「そのようだな。……ところで、ひとつおまえさんに伝えなくちゃいけないことがある」
「伝えたいこと?」
ザイケルさんは勿体ぶった言い方をするなんて珍しいな――と、思っていると、
「「えぇっ!?」」
ギルドの掲示板を眺めていたシェルニとフラヴィアが驚きの声をあげる。
「どうやら、おふたりさんにはバレちまったみたいだな」
そう語るザイケルさん。
どうやら、さっきのお願いとやらと掲示板に何かつながりがあるようなのだが……皆目見当もつかない。
「一体どうしたんだ?」
俺がシェルニとフラヴィアのもとへ近づくと、ふたりは何やら一枚の紙に視線が釘付けとなっていた。
それは、
「!? こ、この依頼主は――」
驚くべきはクエストの内容よりも、このクエストを依頼した人物。
「レイネス家からおまえにクエストの依頼が来ているぞ」
ザイケルさんからの言葉に、俺は困惑した。
レイネス家……あの精霊使いの少女ザラの家。
というか、フラヴィアやレクシーたちと同じ御三家の一角じゃないか。
しかも、条件の中に《商人アルヴィン殿への依頼》って書かれている……相手は俺をご指名ってわけか。
「ついさっき、レイネス家の使いの者が置いていったんだ。……どうする?」
「ど、どうするも何も……」
まあ、答えはひとつしかないよな。
「受けますよ。――このクエスト」
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