第105話 懐かしいダンジョン
ケーニルのことを報告するため、ザイケルさんのいる新しいダンジョンへ向かった俺たち。
かつて、立ち入ることが制限されていたダビンク北区――そこにある、閉鎖されていた北門から出た先に、発見されたばかりの新ダンジョンがある。
俺たちが最初に訪れた時、ここに人はいなかった。
ザイケルさんからの依頼でこのダンジョンを調べ、ルートが一定でないことを報告しておいた。それ以外は特に他のダンジョンと比べて難関という点は見当たらない。
まだまだ序盤しか調査していないが、拠点になりそうな場所もあるし、他のダンジョンに比べたら腰を据えて調べられそうだし、難易度としてむしろ他よりも低いようにさえ思える。
そのため、ザイケルさんは実績のある冒険者たちに数多く声をかけ、このダンジョンの本格調査を開始していた。
「わあっ! 人がたくさんいます!」
シェルニが驚くのも無理はない。
何度かダンジョンに潜っている俺やレクシーでさえ、この賑わいは予想外だった。少なくとも、十組以上のパーティーが参戦している。
「凄いな、これは」
「ザイケルさんはこっちを本格的に開放することを急いでいるみたいね」
冒険者目線で語るレクシー。
俺もそう思うが……しかし、ちょっと疑問が残る。
というのも、商業都市ダビンク周辺にはすでに複数のダンジョンが存在している。確かに、ダンジョンの数が増えれば、それだけ冒険者の数も増えるため、ダビンクはさらに賑わうことになる。
それだけ商売熱心なのだと言ってしまえばそれまでなのだが……何か、このダンジョンに隠された秘密があるのかもしれない。
顔見知りの冒険者たちに挨拶をしながら、俺たちはダンジョンへ。すると、
「旦那ぁ!」
誰かが声をかけてきた。
振り返ると、そこにいたのは北の森のゴブリン退治の際にパーティーを組んだネモだった。
「ネモ! 久しぶりだな!」
「はい! 旦那の方も変わりない――いえ、女性が増えましたね!」
以前、ネモと一緒に北の森へ行った時は、フラヴィアとシェルニのふたりだったが、今はそこにレクシーが加わっている。どうもそこが引っかかったらしいが、まだ後ろに魔族のケーニルが控えているんだよなぁ。言わないけど。
「それにしても盛況ですわね」
「だな。何かあったのか?」
「えっ? ――おっと、そういえば旦那は昨日留守でしたよね」
「あ、ああ」
魔族六将のひとりと戦っていたっていうのは黙っておこうかな。ケーニルの件も含め、騒ぎになりそうだし。どうせ黙っておけば、ガナードがやったことになって広まるだろうからな。
「ちょっと遠征していたんだよ。で、ここには何か?」
「実は昨日、ここで激レアアイテムの《ストーム・ダガー》が見つかったんです」
「ストーム・ダガーだって?」
めちゃくちゃ高額なアイテムじゃないか。
それでこんなに人を集めたのか。
「かなり特殊なトラップですからね、ここは。できる限り人を集めて、手当たり次第にいろいろ試している段階ですね」
なるほど。
高額な激レアアイテムが出たとあっては、開放を急ぐわけだ。ストーム・ダガーがドロップするなんて、いい宣伝文句にもなるし。
「旦那たちも、ザイケルさんに呼ばれてこちらに?」
「いや、別件だ。ただ、ダンジョンにザイケルさんがいるなら、そこへ行かないとな」
ついでに激レアアイテムもゲットしていこう。
フラヴィアは探知系の魔法も使えるし、最近はシェルニもフラヴィアに弟子入りして教わったらしいからな。
ネモの話を聞いて、そのフラヴィアたちも俄然ヤル気になったようだ。
最高のモチベーションでダンジョンに挑めるのはありがたいな。
「じゃあ、行くか」
「「「はい!」」」
何が待っているのか、楽しみだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます