第98話 オーレンライト家へ


新作はじめました!


「嫌われ勇者に転生したので愛され勇者を目指します! ~すべての「ざまぁ」フラグをへし折って堅実に暮らしたい!~」


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読んでみてください!



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 オーレンライト家の執事が呼びに来たのはフラヴィア嬢ではなく、まさかの俺だった。

 ……いや、心の中では覚悟をしていた。

 その名を世界に轟かせる御三家の一角――オーレンライト家の御令嬢を、本人の意向があったとはいえ、長時間連れ回したわけだからなぁ……。


 執事チャールズが御者を務める馬車に乗り、数時間。

 到着したのはまさに白亜の豪邸。

 うちの店とは比べ物にならない……というか、比べるのもおこがましいレベルだ。


「こちらです」


 チャールズの案内で屋敷の中へ。

 玄関へと続く長い道は美しい庭園に囲まれており、大勢のメイドさんが手入れのために忙しなく働いている。


 そのメイドさんたちだが……気のせいだろうか。なんだかチラチラとこちらを見ているような気がする。


 メイドさんたちの視線を気にしつつ、玄関から屋敷内へ。

 見上げたら首を痛めそうなくらいに高い天井。

 素人目にも高価と分かる調度品の数々。

 数えきれないほどの使用人たち。


 まるでお手本のような貴族の家って感じだ。


 俺が通されたのは応接室。

 ここもまたド派手だな。

 その部屋で、ひとりの人物が俺の到着を待っていた。

 自分の肖像画の前で腕を組んで立っているのが、この家の主のようだ。


「はじめまして、だね。私がオーレンライト家の当主――ベリオス・オーレンライトだ」

「はじめまして、アルヴィンと申します」


 落ち着いて挨拶を交わす。

 なんというか……凄いオーラだ。

 これが、御三家とまで呼ばれる大貴族当主の放つ存在感、か。


「まあ、座ってくれ。君には娘のことでいろいろと聞きたいことがあるんだ」

「は、はい」


 やっぱり、フラヴィア絡みか。

 促されるまま、俺はソファへと腰を下ろす。

 すると、間髪入れずベリオス当主が話し始める。


「君のことをいろいろと調べさせてもらったよ」

「えっ? 俺のことを……」


 ……そうか。

 ということは、知っているのか。


「救世主パーティーの一員だったそうだな」

「ええ」

「それも、商人としての腕はピカイチだったそうじゃないか」


 ベリオス当主は、俺のことをかなり詳しく調べていた。

 救世主パーティーに名を連ねていた頃、キースさんをはじめとする各都市で世話になった商人や貴族、はてはネモたち冒険者たちからも証言を取り、俺の人間性をくまなく調査していたのだ。

 その結果、


「素晴らしいな」


ベリオス当主は俺をそう評した。


「誰に聞いても、君の悪口を口にする者はいなかったそうだ」

「は、はあ……」

「戦闘能力についても、かなりのものだそうだな。夕食時、よくフラヴィアが君の活躍を嬉しそうに語ってくれる」


 御三家の食卓で俺の話題が出ているのか……。


「……率直に聞こう」


 先ほどまで、家族団欒の様子を穏やかな表情で語っていたベリオス当主だが、急に険しい顔つきへと変わった。


「君の目から見て……救世主ガナードはどんな男だ?」


 ……本当に率直に聞いてきたな。


「そうですね……友だち付き合いはしたくないですね」

「ふははは! そうかそうか!」


 俺の言葉に、ベリオス当主は膝をバシバシ叩きながら大笑い。どうやら、ガナードの人間性はしっかり伝わったようだ。


「もっとも近い場所から救世主を見てきた君の意見だ。誰よりも信頼できるだろう」

「その点については自信を持って言えます。……しかし、なぜガナードのことを?」

「まあ……あれだ。いろいろと噂を聞いていたものでね」


 多くは語らないが、その噂というのは健全なものじゃないんだろうな。声のトーンが微妙に低くなったし。もしかしたら、フラヴィア絡みなのかもしれない。噂じゃ、娘に相当甘いらしいからな。


「それより、もうひとつ君に聞きたいことがあるんだ」

「なんでしょうか」


 先ほどまでの険しさは消え去り、穏やかなものへと戻っていた。

 それを見た俺も安堵した――のだが、それはほんの一瞬で消え去る。


「うちの娘をどう思う?」

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