第97話 久しぶりの我が家

新作はじめました!


「嫌われ勇者に転生したので愛され勇者を目指します! ~すべての「ざまぁ」フラグをへし折って堅実に暮らしたい!~」


https://kakuyomu.jp/works/1177354054918256498


コメディ色強めになっております!

読んでみてください!



…………………………………………………………………………………………………




「ふあぁ~……やっと戻って来られた」


 ダビンクにある自宅兼店舗へと帰った俺たち。

 すっかりも夜も更けていたため、レクシーはうちに泊まることとなった。フラヴィアはこのダビンクに馬車と御者を待機させているので、すぐに屋敷へ戻る――とばかり思っていたのだが、


「わたくしも泊りますわ」


 案の定、こんな展開になった。


「と、泊るって……」

「問題はないはずですわ。部屋はまだ余っているのでしょう?」

「そ、そりゃあ、そうだけど」


 俺が問題視しているのは部屋の数ではない。

 仮にも、御三家の令嬢を泊めるなんて……いや、もうすでに一日付き合わせしまったから今さら感があるよなぁ。当主にバレたら――殺されるかもしれない。


 俺の心配をよそに、シェルニは大喜びで早速部屋へと案内していた。まだ許可したわけじゃないけど、あんなに嬉しそうにしているシェルニを見たら、帰すわけにはいかないよなぁ。


「ふふふ、大変なことになったわね」


 レクシーが苦笑いをしながら言う。


「まったくだよ」


 俺はそう返した――が、よくよく考えてみたら、レクシーだって御三家令嬢のひとりじゃないか。

 厳密にいえば、「元」なのだが、そう思うとなんだかとんでもない状況だな。今、うちには御三家令嬢がふたりもいるわけだ。

 ……うん。 

 あまり考えないようにして、話題を変えよう。


「レクシーは今どこに住んでいるんだ?」

「うーん……基本宿屋だけど、たまに野宿もするかな?」


 レクシーくらいの実力者なら襲われても返り討ちにできるし、なんか納得だ。それに、元々腕の立つ冒険者だったわけだし、宿代くらいなら困らないだろう。


「それにしても、たくさん部屋があるのね」

「まあ、いろいろと改装した結果かな」

「ふーん……ねぇ、このうちのひとつを借りていいかしら?」

「どこでも好きな部屋を使ってくれ」

「あ、そ、そういうのじゃなくて……」


 珍しく言いよどむレクシー。

 なんか、言い間違えたかな、俺。


「ここの部屋のひとつを長期で借りたいってこと! お金ならあるから!」


 ああ、そういうことなのか。


「それなら別にいいよ」

「えっ!? ホント!?」

「ああ。それに家賃は別にいらないよ。少し仕事を手伝ってもらうかもしれないけど」

「もちろん! なんだったらこの店専属の冒険者ってことでアイテム回収をしてきてもいいくらいよ!」


 おお、ヤル気だなぁ、レクシーは。


「レクシーがうちで働いてくれたら、百人力だな」

 

 今回の戦いで、その戦闘力も知れたことだし、これからも是非頼りにさせてもらおうかな。

 そんなこんなで、とりあえずこの日は全員がうちに泊まることとなった。

 レクシーはシェルニとフラヴィアに、しばらくここで厄介になることを報告。シェルニは大喜びし、フラヴィアは微妙な顔つき。元とはいえ、同じ御三家の令嬢として思うところがあるのかな。


 ともかく、今日はこれでおしまいだ。

 いい加減、眠気もピークに達しそうなので、もう寝よう。

 俺は三人に「おやすみ」と告げて自室へと戻っていった。



  ◇◇◇



 翌朝。


「う~ん……」


 激闘の疲れは残るものの、だからといっていつまでも寝ているわけにはいかない。

 今日から店を本格的に復活させるし、その前にギルドマスターであるザイケルさんに事の顛末を報告しなくちゃいけない。

 やることは山盛りだ。

 そのためにも、早めに準備をしていかないと。


 俺は部屋から出て、洗面所で顔を洗い、店の方へと出ると、


「おはようございます」


 店の外で立っている老紳士と目が合い、あいさつをされた。


「あ、お、おはようございます」


 つられて挨拶をしたが……誰だ?


「わたくし、オーレンライト家で執事をしております、チャールズという者です」


 執事? ……オーレンライト家!?


「あ、フ、フラヴィアの?」

「そうです」


 どうやらフラヴィアを向かいに来たらしい。

 俺は慌ててフラヴィアを起こそうとしたが、


「あ、いえ、今日はあなたに用が合ってきました――アルヴィン様」

「えっ? 俺?」


 オーレンライト家が俺に用事……?

 なんだろう……嫌な予感しかしない。


「ついてきていただけますかな?」

「……はい」


 有無を言わせないという迫力のにじむ瞳に射抜かれた俺は、執事チャールズの言葉にただ頷くことしかできなかった。

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