第37話 謎の古代遺跡

 ひょんなことから発見した、ダンジョンの地下に眠っていた古代遺跡。

 俺とシェルニ、そしてレクシーの三人は、マップにも記されていないその遺跡へと近づいていく。


何が眠っているか分からない。

 お宝か、それとも、俺たちでさえ手に負えない強大なモンスターが潜んでいるのか。


 慎重に、ゆっくりと進んでいくが、結局遺跡の入口と思われる場所にたどり着くまでモンスターはおろかトラップすらなかった。


「な、なんだか拍子抜けね」

「……まあ、まだ遺跡に入っていないからな。ここからが本番だぞ」


 俺としても、正直「何もないのか」って印象だけど、この気の緩みが命取りになることもある。安心と思った時こそ、細心の注意を払え――この言葉は、俺がまだ救世主パーティーの一員だった頃に知り合った、凄腕の冒険者から聞いたものだ。


 それ即ち、今の状況。


 ここで油断して、全滅したなんて流れもあり得ないわけじゃない。

 全員で警戒しながら、遺跡の内部へと入っていく。

 だが、ここで思わぬ事態が起きた。


「あれ? この遺跡――奥の方はほとんど倒壊しているな」


 表から見る分には、形を綺麗に残してあるように映ったが、こうして足を運んでみると内部はボロボロだった。これ以上先に進むのは危険だ。いつ全体が崩れ落ちるか分かったものじゃない。


「参ったな。――お?」


 引き返そうともしたが、よく見ると、少し先のところに門があり、さらにその先には明かりが見えた。あの門の先は、どうやら外へつながっているらしい。


「レクシー、シェルニ、あそこを見てくれ。出口があるぞ」

「た、確かに明るい場所があります! きっと地上からの光が漏れて届いているんですよ!」

「ほ、本当ね」

「とりあえず、あそこを目指して進もう。……見たところ、遺跡は破損もひどいし、これ以上、あまり長居はしない方がよさそうだ」

「そうね……」


 遺跡倒壊の危険性を察知したレクシーは俺の判断に賛成してくれたが……その表情は思いっきり残りたそうなものだった。

 ……まあ、仕方ないか。

 俺は本業の冒険者ってわけじゃないが、この遺跡からは、何か惹きつけられる魅力が漂っている。うまく言えないが、調べたらとんでもないお宝が出てきそうって雰囲気はプンプンするのだ。


 だからといって、残って調査するのは危険だ。

 防御魔法のスペシャリストであるシェルニがいたとしても、まだ経験が浅い分、咄嗟のトラブルにすぐ対応するのは無理だろう。


 気持ちは分かるが、ここはもう一度念を押しておこう。

 そう思って話しかけようと振り返った時だった。


「!?」


 俺は思わず息を呑んだ。

 並んで歩くレクシーとシェルニ――そんなふたりの背後に、黒い影が。


「っ!? 何者だ!?」


 俺は即座に剣を抜いて黒い影に突き立てる。

 突然、俺が叫び、そして剣を抜いたことに驚きを隠せない様子のふたりだったが、その矛先が自分たちではなく、いつの間にかくっついていた黒い影に向けられていることを知ると咄嗟に飛び退いて俺の背後へと回る。


 その黒い影の正体は――


「ま、待ってくれ! 吾輩はお主らの敵じゃない!」


 そう言って、両手を天井に向けてあげたのは……人間ではなかった。


「モ、モンスター……? おまえ、リザードマンなのか?」

「い、いかにも」


 そう言ったのは紛れもなく人と同じく二本足で立ち、古ぼけたアーマーと剣を装備したリザードマンだった。

 俺たちはすぐさま武器を構えて臨戦態勢を取るのだが、


「まあまあ、そう熱くならんでもよかろう。それよりもお主たちどうやってここへ来たんじゃ? あっちの入口からは長らく誰も入ってこなんだから、とっくに忘れ去られているのだとばかり思っておったが」

「? あっちの入口?」


 リザードマンのいう入口とは、光が漏れ届いている場所のことらしい。

 なるほど。

 やはり、あそこは外へつながっているのか。

 ひとつ謎が解けたところで――もうひとつのデカい謎に迫るとしようか。


「なあ、リザードマン」

「なんじゃ?」

「ひとつ聞いていいかな?」

「吾輩に答えられるものならばなんでも教えよう」

「じゃあ、早速――なんで俺と会話ができているんだ?」


 素朴かつ超重要な質問を、ジジ臭い話し方をするリザードマンへと放った。

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