第百八十七話 蛭逗戦 先発ピッチャー発表な件

 二回戦を戦った翌日、明来野球部は部室にて試合映像を参考に次の対戦チームの分析を行っていた。


「――これが蛭逗高校 二試合目の結果でした」


 瑞穂が話を切り出すも、皆シーンと静まりかえっていた。

 と言うのも二回戦は蛭逗高校の圧倒的な力をただただ観させられた、といった試合だったからである。

 それと同時に清々しいプレイとは言い難い点も多々見受けられたのである。



「確かに……強い。ただ」


「対戦相手への誠意が全くねぇな」


 不破の言葉に兵藤が加わるように話した。


「スライディングは危なっかしいし、タッチも乱雑。ケンカしているつもりかよ」


 東雲が真っ当なことを言い放ち、一同驚きの表情で彼を見つめた。


「んだよ、文句あんのかよ」


「いやぁ、予告ストレートとか挑発まがいなことをやっちゃう東雲がそれ言うかと」


 守の言葉を聞き、他のメンバーは皆腹を抱えて笑い転げた。


「一緒にすんな! 俺のは清々しく実力差を見せつけただけだろ? コイツらはただ相手を痛ぶって、それを楽しんでるイキり野郎どもだ」


 東雲は必死になって抵抗していた。


「さて、この試合映像を見て貰った上で、次の試合のオーダーを発表します」


 上杉監督が緊張走る発表を切り出した。


「先に、先発ピッチャーを発表しますね。東雲君、君に任せます」


「ハッ! 当然俺だよな」


 東雲のドヤ顔とは真逆に、守は唖然とした表情をしていた。


「千河君」


「あ……はい」


 守は明らかに落ち込んでいた。


「貴方は一、二回戦共に一人で投げ切ってくれました。この試合はお休みです」


「え……休み!?」


「はい。なのでベンチに入れますが、緊急事態でもない限り、この試合に出すことは考えていませんので回復に努めて下さい」


「……はい」


 守は絶望感満載の表情で、酷く落ち込んでいた。


「では、改めてオーダーを発表しますね」


 オーダーは下記のように決定した。


一番センター 兵藤

二番ショート 山神

三番セカンド 駄覇

四番ピッチャー 東雲

五番サード 氷室

六番キャッチャー 不破

七番ライト 風見

八番ファースト 青山

九番レフト 松本

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