第百三十九話 元チームメイトと再会した件
「中谷っちじゃーん。おひさ」
駄覇は長身の選手に話しかけた。どうやら中学のチームメイトの様だ。
「駄覇……。やっぱ西京には行かなかったんだ……」
「うん。寮生活はやっぱ面倒いし。強豪特有の上下関係もきらーい」
駄覇はそう言うと眉間にシワをよせ、唇を尖られていた。それを中谷は笑って見ていた。
「駄覇らしいな。だから家から近い明来ってことね」
「そそ。試合終わったら久々に家でゲームでもするー?」
「いやいや、俺ら試合後も帰って練習あるから。また今度な」
中谷は申し訳なさそうに手を合わせた。
「ふーん、やっぱ強豪って怠そう。マジで行かなくて良かったー」
中谷は駄覇の性格が当時のままで安堵した様だ。
スイッチが入っていない彼は相変わらずの自由人だった。ただ試合が開始された瞬間から彼は相手チームの脅威になる。それをずっと同じチームで見てきた中谷は、安堵と同時に彼の覚醒を恐れている様だった。
――そして練習前に今日のオーダーを発表された。
明来高校 スタメン
一番センター 兵藤
二番ショート 山神
三番ピッチャー 東雲
四番サード 氷室
五番セカンド 駄覇
六番キャッチャー 不破
七番ファースト 青山
八番ライト 風見
九番レフト 松本
ベンチ 千河
「監督……僕はベンチですか……」
守は明らかに落ち込んでいた。
「千河君は順当に行けば六回から投げてもらう予定です」
「そんな……僕は昨日……」
「試合前にウダウダうるっせーな。実力通りの順当な起用だろーが」
先発が確定した東雲は、上機嫌になりながら守を煽った。
「大丈夫だよヒカル、ちゃんと出番はあるよ! 東雲君が予定より早く崩れるかもしれないし」
「あ、それもそっか。東雲はすぐキレるし」
瑞穂のフォローに救われたのか、守の表情に笑顔が戻った。二人の会話で東雲以外の全員が吹き出してしまい、良い意味で緊張感が取れたようだ。
「……たしかに。去年皇帝で投げてた時も東雲がキレて自滅したしな」
兵藤が思い出し笑いをしていた。
「試合中何度も太刀川さんに怒られてたよな」
「僕、その時ショートとキャッチャーの人と少し話したけど、二人とも東雲の扱いが大変そうだったなー」
不破と守も一緒になって東雲を弄り返した。東雲は恥ずかしくなったのか一人でサッサとブルペンの方に歩いて行った。
そうして明来ナインは肩の力が抜けた状態で試合に臨むこととなったのである。
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