第百二十六話 ポテンシャルは高い件
――ズパァァァッ!!
「っしゃぁいい感じだわぁ……! 待ちくたびれて寝落ちするところだったわ」
東雲が勢いのあるボールを不破へ叩き込んでいる。言葉と裏腹に待ち遠しくてたまらなかった様子だ。
守はベンチで患部を冷やしながら戦況を見つめていた。
「プレー!!」
試合が再開した。
ノーアウト一塁、東雲はセットポジションで肩越しにランナーを見つめている。
ランナーは足があまり速くない四番。今の打順も五番打者からなので、恐らく盗塁はない。東雲は冷静に今の状況を確認していた。
「ストライク!!」
勢いのあるストレートでまずはストライクを取った。バックスクリーンには球速百四十五キロと表示された。
「あいつ、速えぞ」
「セカンドでも良いプレーを連発してたよな」
東雲のまっすぐを見てか、轟大学のベンチでは彼が話題となった。
「彼は東雲君。元々皇帝の生徒でしたが去年から明来に転校してきました。恐らく皇帝でも一年生から試合に出られたほどのポテンシャルを秘めています」
若井監督の言葉を聞き、選手たちは息を呑んだ。その反応が近年急激に勢いをつけている皇帝で一年からベンチ入りする大変さを物語っている。
「ストライク、バッターアウト!!」
「ッしゃあ!!」
五番打者を三球三振でねじ伏せた東雲がマウンド上で雄叫びをあげた。球速表示は、なんと百四十八キロを計測していた。
――ガッ!!
続く六番打者が初球から振りにいくも、完全にボールの球威に負けてしまった。
「オラァ! いったぞ山神ィ!!」
山神は流れるようなキャッチアンドスローで二塁ベース上の駄覇の胸元へボールを送球した。駄覇も体を上手く回転させ、素早く一塁へ送球した。
「ゲ……ゲッツー……」
轟大学の選手たちは唖然としていた。
「さぁ、早く守備につきなさい」
若井監督の声を聞き、彼らは慌ててポジションへ向かった。
『無理に三振を狙いにいっていない。あくまでコースや高さを意識して、打ち取ることを重視した丁寧なピッチングでした』
『彼がこのまま成長できれば、同期のライバルだった神崎君以上のピッチャーになれるかもしれませんね』
若井監督は思わず口元を緩めてしまっていた。
五回表 終了
轟大学 三対一 明来
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