第五十一話 お前達は俺の誇りだ
ベンチに下がる成り上がりバッテリーに大きな声援が飛んでいる。
「お前ら、よく頑張ったぞ!」
「成り上がりバッテリー! ナイスゲームメイクだぞ!」
労いの声援を聞きながら、一色と十文字はベンチでずっと涙を流していた。
南場実業の監督は彼らに向かって話しかけた。
「一色、十文字。よく頑張ったな。胸を張れ」
南場実業の監督は彼らの肩を叩いた。
「監督として恥ずかしいことだが、正直お前たちがここまで成長するなんて思っていなかった。隠れて二年以上ナックルの特訓をしていたなんて知らなかったしな」
一色と十文字は鼻をすすりながら監督の顔を見つめている。
「ずっとスタンドで応援してくれていたお前たちがここまで成長して、他の部員全員が勇気づけられたんだ。お前達は俺の誇りだ。だから胸を張ってくれ! あとはアイツらに託そうぜ!」
「……はい、監督」
一色と十文字は目を真っ赤にしながらも、監督の顔を見つめ、返事をした。
――マウンドでは八城が投球練習をしていた。セットポジションから力強いボールが投げられている。電光掲示板の球速表示は百四十キロを計測している。
「ナイスボールだ八城!」
背番号二の
打席に九番の松本が打席に入る。
「バッター九番! さっきレフト前打っているぞ! 三遊間、強い打球を意識しろよ!」
二階堂からテキパキと指示が飛ぶ。さすが名門チームの正捕手だけあって、一切の手抜きはない。
――ズバーン!
「ストライク!」
「ナイスボール! セカン! 引っ掛けるかもしれないから少しファースト寄りにシフトだ! 外野も目一杯前突っ込んでこいよ!」
松本の空振りを見て、早急に指示を加えた。振り遅れていることへのケアも徹底している。
――ズバーン!
「ストライク! バッターアウト!」
「よっしゃぁ! 完璧だ八城!」
八城、二階堂バッテリーはあっという間に松本を三振に切ってみせた。
決めにきたラストボールは百四十三キロを計測していた。
明来メンバーは、ベンチに戻ってきた風見に手荒く歓迎した。
「うおおおおお! 風見ィィィ!」
「風見っち! パネェ! 映えるわマジで」
揉みくちゃにされながら、笑顔の風見は笑顔で守備の準備をした。
「不破……この二点、死ぬ気で守るぞ」
砂で真っ黒になったユニフォームに身を包んだ守がグラブをパシッと叩いた。先ほど、本来ピッチャーがすべきではない好走塁を次々決めた為、誰よりもユニフォームが汚れている。
「もちろんだ。一番からの好打順、一人でも出したら八城に回るからな」
不破もミットをバシッと叩いた。
明来バッテリーは互いの顔を見て頷き、走って守備に向かった。
六回表 終了
明来 二対ゼロ 南場実業
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