君と僕との初めての出会いにして運命の再会。それは朧月夜に裏側の世界で

松長市松

プロローグ

あたしはあたしが嫌いだ。


 いや、正確には、あたしは私が嫌いだ。

 

素直で、純情で、夢見がちで、それでいて寂しがり屋で気丈な私。


 あの日から、あたしはそんな私を捨てたんだ。本当に嫌いで大っ嫌いだった私を見限って、卒業して、捨てた。


 あたしはあの日、あたしになったんだ。


 そうだよ。あたしはあの日、あの人に受け入れて欲しかった。違う。私は、あの人に受け入れて欲しかったんだ。


 なのに、あの人は私を受け入れてはくれなかった。私を私として、受け入れてはくれなかったんだ。


 きっと優しいあの人のことだから、もしかしたらこの気持ちはあたしだけの気持ちなのかもしれない。あたしが勝手に、私を拒絶されたと思い込んでいるだけなのかもしれない。あの人は私のことを、そんな風には思っていないのかもしれない。


 けれど、もしそうだとしても、私には、あたしには、どうしても私を許すことが出来なかった。あの日あの人に拒絶されたと思い込み、勝手に自分自身を嫌いになった私を、あたしは許せなかったんだ。


 だから、今日もあたしは私を憎む。あの人に受け入れられなかった私を憎む。私を嫌いになった私を憎むのだ。


 あたしはあたし。あたしは私。私は私。


 どれもあたしでどれも私。


 けれど、これだけは言いたい。


 あの日あの人に受け入れられていたら、もしくは、これから先あの人に受け入れられることがあるのならーー


 ーー私は私を、あたしは私を、好きなままだいられたのかもしれない。

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