うをの洞

田中目八

うをの洞

シリウスを響てもうなにも無い

凍つ湖の深き静止をまねびをり

にんげんの音沈みけり青写真

減衰のゆるやかにゐて冬の虹

濁世いま母乳に凪て冬温し

夢流し身内はあゐを建てにけり

雪蟲や漆黒やがて祈へと

春雨の百黙孕み戻りけり

この影を河原にかへす暮春かな

花筏陰に応じてとどまらず

春泥にいちばん新たなる無言

滝落つる即身体即言葉かな

一言の十月十日や溝普請

美し石のこゑに水澄む游びかな

かなかなの時雨れて膜の翳しをり

初汐の身内にかげのなびきかな

紅葉且つ美醜明滅して韻

生物の愉快にもどる冬の溟

幾度も手ぶらで還る冬怒濤

冬ざれに手放す諳んじる谺

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うをの洞 田中目八 @tamagozushi

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