第96話 オウム

病気で従姉妹が亡くなりました。

死因は急性心不全で、よほど苦しんだのか、その死に顔は見れたものではなかったそうです。


従姉妹は30代独身で恋人もおらず、ペットのオウムと一緒に暮らしていました。

オウムは従姉妹の両親が引き取りましたが、すぐに

「もう飼いたくない」

と言い出したそうで、その後、従姉妹の兄一家の家に引き取られました。

しかし、その家族もすぐに飼うのを嫌がってしまい、その次に引き取ったのが我が家でした。


オウムは我が家のリビングに置かれ、動物好きの母が可愛がっていましたが、我が家に慣れると次第に気味の悪い声を出すようになりました。

「ヤメテー、ヤメテー、コナイデー」

「シニタクナーイ、タスケテー」

「ユルシテー、ヤメテー」

その声は、従姉妹のものに似ていました。


私たち家族はその声に精神的に参ってしまい、次の引き取り手を捜しましたが、なかなか見つからず、結局鳥類を保護している県外のNPO団体に引き取ってもらうことになりました。

オウムをNPO団体の事務所まで持って行き、係の人に受け渡すと、オウムは寂しげな目でこちらを見ていました。


そして、オウムが私たちに向け、最後に放った言葉は、

「オマエラ、イノチビロイ、シタナ」

でした。

その声は、従姉妹の声そのものでした。

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