第33夜 痴漢

僕はいわゆる見える人なのですが、この間とんでもないものを見てしまいました。

そこそこ混んだ電車に乗っていたのですが、頭から血を流した制服姿の女子高生の霊が乗っていたんです。

うわー、見ちゃったなぁ……と思っていたら、その女子高生の霊の後ろに立っていた男にも見えていたようで、男は女子高生の霊をじぃーっと見ていたんです。

そして、その霊のスカートをつまんだんです。

えっ!?痴漢!?霊に!?とビックリしていると、

「冷たっ!!」

男が叫んで、手を退けました。

周りの視線が一斉に男に向けられましたが、男はそれどころではないようでした。

女子高生の首が180度回転し、彼女の二つの目が男を睨みつけていました。

男が凍りついていると、女子高生は溶けるように消えていきました。

僕は恐怖を感じつつも、すごいものを見たと少し興奮していました。

男は次の駅で降りていきましたが、生気を吸い取られたような様子でした。

男の行く末が気になって、電車を降りた男の様子をこっそり見ていると、向かいのホームにふらふらと歩いていき、そのまま線路に飛び降りてしまいました。

そこに電車がやってきて、大きな音がして、悲鳴が上がりました。


後から知ったのですが、その駅は男性の飛び込み自殺者がとても多いそうです。

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