第10夜 抱いていたモノ

私の娘は怖がりで、テレビで怖い番組を見た日には、必ず私の布団にやってきて一緒に眠ります。

その日の夜も心霊番組を見てしまい、お風呂もトイレもずっと私がそばについていないとダメでした。

寝る前の歯磨きを済ませ、2人でひとつの布団に入り、娘を抱きしめながら眠りにつきました。


少し経って、寝室に夫が入ってくる音で目を覚ましました。

娘は寝相が悪く、私の布団からはみ出て、隣に並んだ夫の布団で眠っていました。

夫が、娘を起こさないように自分の布団に入るのを見届けて、私はまた眠りにつこうと思いました。

しかし、すぐに違和感に気が付きました。

なぜなら、私の腕の中に娘の感触があったからです。


目の前で夫と一緒に眠っているのは紛れもなく娘でした。

では、布団の中で私が抱きしめているものは何なのか?

確かめようにも、恐怖で身体が全く動きません。

夫に助けを求めようとしましたが、何故か声も出せないのです。


しばらくそのまま固まっていると、腕の中でもぞっと何かが動きました。


「ママ……」


その声は娘の声ではありませんでした。

娘の声よりも低く、掠れた老人のような声でした。

布団の中から小さな手が伸びてきて、私の首に触れました。

ひんやりとしたその手が私の首を撫でるのを感じながら、私は意識を失いました。


翌朝、目が覚めると、娘は変わらず夫の布団で寝ていました。

あの夜、私が抱いていたモノは一体何だったのでしょうか。

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