百物語 ー ヒャクモノガタリ ー ♦︎3分以内に読める怪談のショートショート集♦︎

いくいえむ

第1夜 タクシー

とある出張先での出来事です。

接待の飲み会を終え、宿泊していたホテルへ帰るためにタクシーに乗りました。

時間は深夜0時、お酒に酔っていたこともあり、行き先を告げるとウトウトとしていました。

10分ほど走った頃でしょうか、タクシーが赤信号でもないのに急に止まりました。

「お客さん、すいません、この先通行止めみたいなんで迂回しますね」

私は寝ぼけながら、お願いしますと言いました。

うっすらと開けたまぶたの隙間から前を見ると、助手席のヘッドレストから何かがのぞいているのが見えました。

それが何なのか気付いた瞬間、完全に眠気が吹き飛びました。

それは長い髪の毛でした。

助手席に知らない女が座っているのです。

私は恐る恐る

「運転手さん、このタクシー、自分以外乗ってないですよね?」

と聞くと、運転手さんは

「嘘だろ……」

と呟きました。

「今日、それ訊かれるの3回目なんですよ……お客さん、一体何が見えてるんですか?」

私は恐怖でパニックになり、一万円札を投げつけるように渡して降ろしてもらい、全速力で走って逃げました。

あのタクシーの運転手さんがどうなったかはわかりません。

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