THREE 昔と今とどっちがしあわせかい?
僕らは静かな日々を過ごす。
単調なある意味退屈な、そして貧乏な。
でも初夏の桜の新緑の木陰みたいに涼やかさ。
「
「
「うん」
ふたりで手を繋いだ。片方の手は吊革に掴まって。
そうして世間の荒波ってやつに抗うのさ。
なんてさ。
「じゃあ、行ってくるね」
「ああ。行っておいで」
途中の駅で降りて縁美は自分の職場に向かう。彼女は今スーパーマーケットで働いてる。
僕も彼女も何回か転職した。
「おはようございます、蓮見せんぱぁい」
「おはよう」
「せんぱぁい。仕事終わったらごはん食べにいきませんかぁ?」
「これこれ
「なんですかぁ?美咲さん」
「蓮見っちは同棲相手がいるんだから」
「あっ。その噂、随分前に聞きましたぁ。ほんとなんですかぁ?」
「ああ」
「いつからですかぁ?」
「15の春から」
「えぇぇ!?」
今日は買い出しは僕の番。
縁美はスーパーで勤めてるけど、食料品はもっと安い店で買うことに決めてるから。
彼女は最初、美容師になりたくて中卒で彼女のお母さんの知り合いがやってる美容院で修行してた。
けど、その店が潰れて、その後は喫茶店、税理士事務所、運送屋さんの事務、そして今のスーパーマーケット。
僕もいくつか職を代えて今はビルメンテナンスの会社で働いてる。今週は日勤で清掃スタッフの仕事なので、時間が縁美と重なる。
「ただいま」
「あー。おかえりー。重かったでしょ?」
「うん」
かぼちゃ。
小かぶ。
大根。
「ねえ。作ろ?」
「うん」
「あ、待って」
「なに?縁美」
「頭、ぽんぽんしてくれない?」
「ええ?」
なんだろか。
ぽんぽん。
「うん。元気出たよ」
ふたりで、台所に立つ。
狭い部屋の、備え付けのガスコンロとカセットコンロを使って、かぼちゃの甘煮と小かぶのソーセージ煮を作っていく。
縁美は僕の頭ぽんぽんで仕事の疲れをリフレッシュできたみたいだよ。
「縁美」
「なに」
「しあわせ?」
「うん」
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