第15話初めての妹はとても可愛い
僕ことマーリンは四歳になった。
そんなことはどうでもいいことなのだ、もっと重要なことがある。
そう家族が増えた事!
僕が三歳の時の冬の初めくらいに生まれた
妹のルーリィ生後約半年
髪の色は純粋な灰色。目の色はエル父さんやルート兄さんと同じタンザナイトに似た紫。顔は目がエル父さん似の知的な感じであるものの、シェーラ母さんに似ている。
僕とルート兄さんの容姿がどちらかに偏った似方をしていたのに対して、ルーリィはエル父さんとシェーラ母さん両方の血を半分ずつほど受け継いでる。
もうそれはそれは可愛い。
シェーラ母さんもエル父さんもこの子はどっちに似ているというやりとりをずっとしている。
多分僕とルート兄さんがどっちかに偏りすぎていてやりたくてもできなかったのだろう。
ルート兄さんも初めての妹という事で、優しくではあるが顔を突きまくっている
本当に突つくのが好きな兄さんだ。
とはいう僕も前世含めて初めての年下の弟妹なので構いまくっている。
前世は年の離れまくった姉と兄がいた。
僕は姉兄が両親から独り立ちしたことをきっかけに、両親が最後の頑張りをして偶々生まれた子供なのである。
物心ついた時には、兄姉は周りからは親、両親は周りから見たら祖父祖母みたいな感じであった。
それ故に年の近い兄妹しかも年下ということでとても気になって仕方がない。
てな感じで今も寝ているルーリィの頭を撫でながら色々と喋りかけている(北領同盟王国と現エルフ語のみ
ルーリィに聞かせるのはこの二つだけと家族間で決まってる)。
それと一年くらい前から身体強化を出来る限りずっとしているようにしている。
剣の練習がどんどんと厳しい練習になっていっていて、ずっと体が痛い。
その痛みが紛れる程度の身体強化なので、スキルは使っているものの、限界までの強化は剣の練習の時しかしていない。
ルート兄さんはものすごく真剣に練習に取り組んでおり、しかも元々がすごく優秀なので日々剣の腕が上がっている。
最近では僕と打ち合うことも増えてきた。
勝敗は八割でルート兄さんの勝ちだ。
最初らへんは技量の差で勝てていたけど、ルート兄さんが自分より体格がかなり劣る相手への戦い方に慣れてきてからは惨敗。
三ヶ月ほど前に僕も自分より体格がかなり良い相手への戦い方を確立させることができたから半々くらいで勝てるようになってきた。
というわけでルート兄さんとの打ち合いではそこまで負傷することはない。
そうルート兄さんはそこまで問題じゃない。
問題はエル父さんだ。
僕みたいな自分より技量が上でかつ体格が自分より劣る相手。
しかも実物の剣と対人戦が素人同然という存在がかなり面白いようで、打ち合いで容赦がなくなった。
もうエル父さんは教えるというよりも自身も練習しているというような感じになっている。
まぁそのおかげで僕は無事に日々を送るために必死で実物の剣(木剣)と対人戦を覚えて、今ではかなり慣れた。
慣れたら慣れたでどんどんエル父さんが喜び、打ち合いの苛烈さ頑張りを増していった。
それが理由でどんなに僕の腕が上がっていっても勝敗は全敗で内容は完敗のままだ。
エル父さんは絶対僕が……………etc。
そんなわけでここ一年はほとんどの時間、スキルフル活用の身体強化をかけ続けている。
身体強化のいいところは、強化を解くと元の身体能力に戻り倦怠感がすごく出ること、おかげで寝たい時に疲労でぐっすり眠れるところだ。
今朝も辛い剣の練習をし、身体強化をしていなければ身体が痛すぎて動けない。
ルート兄さんは今も剣の練習を続けている。
今日僕が打ち合いで勝ち越したからだろうか?
僕は昼食まで暇なのでルーリィを見ながらシェーラ母さんに教えられている魔法術の呪文の書き取りをしている。
呪文自体は割と早くに覚えられたんだけど。文章で書くのに手間取ってしまう。
シェーラ母さんに今の三倍は早く書き上げることができるようにと言われた。
理想は口で呪文を言い終わると同時なんだとか。
魔法術の実技はルーリィが生まれたくらいに始まった。
やっていることは色々な発動方法を同時に複数そして素早く発動させる練習。
発動させることが難しい魔法術はやらず、簡単な魔法術で複数同時に速く発動する練習をしている
シェーラ母さん曰く、
「発動させることが難しい魔法術は確かに強力ですが、詠唱するタイミングが難しくもあります。
発動に時間がかかる分相手に狙われることになりますし、焦ったら失敗してしまいます。
どんなに優秀な魔法術使いでも簡単な魔法術と比べるととても時間がかかるものですからね。
詠唱破棄は、ミスをしたときのリターンが大きすぎて選択肢に入れるべきではないとわたしは考えています。
自分一人で戦っているならともかく、仲間がいる時に失敗してしまえば終わりですからね。
それにそんな魔法術は後で適当に覚えればいいだけです。
そんなものを練習するなら、簡単な魔法を複数同時に細かく使用してさまざまな状況に対応できるようになった方が断然良いんですよ。
そこに少し難しい魔法術などを混ぜて戦った方が確実に強いですからね。」
とのことだった。確かにその通りだな〜と思い今はひたすらに反復練習をしている。
ルート兄さんやマエルもかなり上達したようで、集中はかなりの確率で成功できるようになっている。
それとなぜかシェーラ母さんの魔力コントロールもますます綺麗なものになっている。
「あっ あぅあ〜」
ただひたすら呪文を書くようにして指を動かしていると、ルーリィが目を覚ました。
ルーリィは辺りを見回してシェーラ母さんのことを探している。
ルーリィは基本起きたらシェーラ母さんを探す。
見つからなければ他を探して、誰もいなければ泣くか一人で遊んだりすることが多い。
そして今の場合僕がいるので
「あっあっ 」
かまえということだと思う。
今まで言葉がわからない状況での会話をする経験は数多くあった僕ことマーリンは、大体ニュアンスで意味を汲み取れるようになっている。
一旦呪文の書き取りをやめルーリィを構うことにする
「ルーリィおはよう」
とりあえず頭を撫でておく。
最近のマエルに言われて気がついたけど、どうやら僕も撫でるのが癖になっているみたいだ。
よく村の子供(僕もだけど)が泣いていると頭を撫でながらその子を慰めているそうです。全く自覚がなかった。
「今シェーラ母さんは教育施設で使う教材を自分の部屋で作ってるから僕と遊ぼうね」
そう言って僕はルーリィの目の前に光の魔術を発動させる。
今使っている方法は、頭の中でつぶやいて発動する方法(一番神経を使う).口を動かして発動する方法(一番楽、声は出さない。しかしメリットが半減 ) 指を動かす方法(普通)×2 合計四つで魔術を使用している。
「キャッ! キャッ!」
どうやらお気に召してくれたらしい
無邪気な笑顔でもっともっとと言ってくる。
「(よしもっと頑張るよマーリン兄さんは)」
そこで右手で光を複数発動させ
左手でその光を維持
思考で場所を少しずつ動かし
口で微調整
光を蝶の形にして生きてるみたいに動かす。
これにはルーリィ大興奮で光の蝶を捕まえようと腕も伸ばして頑張っている。
僕は光の蝶をルーリィから離しては近づけてルーリィが飽きないようにある程度工夫して動かした。
「アウアァー!」
ルーリィは勢いよく光の蝶を両手のひらで挟み込むようにして捕まえた。
「(しまった!ルーリィに光の蝶を捕まえられた)」
僕のこの魔術は魔力に形を付与して動かすような中級魔術じゃなくて、ただ光を蝶に見えるように配置して動いて見えるように細かく配置を動かしているだけだから耐久度なんてものはない。
だから今ルーリィに手を開けられたら何もいない。
これが中級魔術ならルーリィが捕まえても開いた瞬間から魔術を再開させて形を取り戻させていくことができるんだけど。
こんなところでまだ入門魔術しか習っていないことが仇になるとは。
「あーう?」
今ルーリィは蝶を捕まえたのに感触がなかったことを不思議に思ってる。
もうすぐにでも手を開いて確認すると思う。
僕は必死に頭を回して考え、そして一つ方法を思いついた。
あとはタイミングを外さずに魔術を使えるかどうか、
早過ぎたら魔術を発動する座標にルーリィの手が重なり発動が失敗する。
遅過ぎたら意味がない。
ちょうどいいタイミングで魔術を発動させて蝶を捕まえていたと思わせなければいけない。
「う〜〜あ」
ルーリィが少しずつ手を開いていく
僕は両手、口、思考をフル回転させて開いた隙間に光の粒を生み出していく。
両手はルーリィの手の開く動きに合わせて光の粒を生み出し
口でその光の粒が消えないように維持
思考でそれをルーリィから見て綺麗に見えるように動かしていく。
かなり繊細な魔術行使で疲れるけど頑張る。
「あーうああ〜〜!! キャッ!キャッ!キャッ!」
よしルーリィが光の粒に興味を集中させた。
ここから徐々に光の粒を一箇所に集めて、最後に蝶にする。
「ふぅ〜〜疲れた。」
ルーリィはまた光の蝶を捕まえようと必死に動いている。
あとはもう捕まることがないように注意するだけだ。
僕がルーリィの遊んでいる姿を見守っているとシェーラ母さんが部屋に入ってきた。
時計(水時計、水が永遠に循環し続けることで時間を刻む時計。魔道具の一種で魔力で動く。値段は水道管系の魔道具の考えを応用したものなので割と安価)
を見るともうそろそろ昼食という時間になっていた。
気がつかないうちにかなりの時間ルーリィと遊んでいたらしい。
未だにルーリィは光の蝶に夢中だ。
「ルーリィ〜シェヘラザードおかーさんですよー」
光の蝶に夢中でシェーラ母さんの方を見ないルーリィ。
シェーラ母さんは僕の方を見て視線で「あの蝶はあなたの魔術ですか?」と聞いてくる。
僕の魔術なので頷いておく。
するとシェーラ母さんは魔法術発動の準備を瞬時に済まし、そして発動した。
「あう? ああー!」
鳥だ。
それもこの部屋を埋め尽くすほどの無数の鳥。
それでいて全ての鳥がリアルで種類も様々。
小鳥から大きな鳥、光 炎 水 氷 土 複数の鳥が生きてるみたいに動き回っている
「(あっ! 僕の蝶が鳥に食べられた。)」
ルーリィはもう蝶のことなど忘れたようで様々な鳥に夢中だ。
シェーラ母さんは、勝った!というようなドヤ顔をしている。
初めて見たシェーラ母さんの大人気ない一面だった。
「シェーラ母さん」
「どうしたのマーリン」
シェーラ母さんは何でもないように言ってくる。
悔しい。
「中級魔法術を勉強したいんだ」
「そうねそろそろ勉強してもいいくらいね。
さっきの光の蝶も入門魔法術しか学んでいないとは思えないものだったわ。」
そういうとシェーラ母さんは徐々に鳥の数を減らしていき、最後の鳥を自分の肩にとまらせて、ルーリィに話しかけた。
「ルーリィ迎えに来ましたよ」
「あぁあー」
ルーリィはシェーラ母さんのことに気がついたようで
シェーラ母さんのところに行こうと頑張りだした。
シェーラ母さんはルーリィに近づき
「ふふふ マーリンに遊んでもらっていたのね。
でもご飯の時間になったから一旦ご飯を食べましょうね。」
「あーうっ」
ルーリィはまだ遊び足りなさそうだけど、お腹も空いてるのだろう、シェーラ母さんの言うことに素直に従っている。
「ほらマーリンも一緒に行きましょう。
ふふ そんなには拗ねないで、さっきはつい対抗心が出てしまったの。
マーリンもすぐにあれくらいはできるようになるわ。」
「う〜〜拗ねてなんかいないよ。
ちょっと悔しいだけだよ。」
シェーラ母さんはルーリィを抱えたまま僕の手を優しく握ってくる。
僕はその手を握り返してシェーラ母さんについていく。
リビングではエル父さんとルート兄さんがすでに座っていて僕たちを迎えてくれた。
美味しそうないい匂いがする。
そしてきっと美味しいのだろうと思いながら
「おまたせ」
今日も平和な日常を過ごした。
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